カセットテープは…結果的に絡んだ意図も簡単に吐き出す。
昼下がりの部室、１年生の志保さんは、憧れの部長と二人っきりです(*^。^*)
明日のお昼の放送で私は初めて先輩のアシスタントをする。
「志保！ゲイン調整するから、そのマイクに声出して！」
「私、がですか？」
「だって、それ、キミのマイク」
入学式の時、一目、一聴で好きになった憧れの人…
その人とたった二人の部室、先輩はドアを出て調整室のミキサー前からキューを出す。
私は声を張ったのだけど…ドキドキで声が震える。
ダメ出しされた…
私の苗字は部活でもありふれた『佐藤』、部長でもあるカレは、私を名前で呼んでくれる。
それが理由と分かっていても…こんな状況、震えてしまう…
何度かのダメ出しの後、ブースを出た私に先輩は声を掛けてくれた。
「来年のＮコンはキミたちがメインなんだから頑張らないとね」
キミたちかあ… もう少し元気の出る言葉が欲しいなあ…
そんな私を置きっぱなしにして先輩は古めかしい“カセットデッキ”なるものの前に座り、ストップウォッチを片手に、キューシートへ『A:12" B:1'47 C:1'57” B2:3'04" Total:3'37"CO』などと書き込んでいる。
ふいにスピーカー出しの音楽がよれて、ガガガガと詰まる音がした。
「あっ!!」
先輩が慌てて引っ張り出したカセットは、こげ茶のテープを吐き出して機械の中へ巻き込ませていた。
カレは吐き出されたテープの端っこを摘まみ、それらを優しく優しく手繰り出していく。
「これ、センパイのお気に入りだったんだよな」
センパイって！！？
オンナ？！
無意味に空回りの嫉妬が私の胸に渦巻く。
キューシートの上には、救い出されたテープが所々蛇腹になりながら、とぐろを巻いている。
「志保も見ておきな」
先輩は吐き出されたテープを、カセットのリールに鉛筆を差し込んでカラリカラリと巻き取り始める。
「今日は静電気がすごいな」
こんな古いものに構うなんて…
想い出と対話しているだけじゃん。
せっかくの二人きりなのに…
泣きたくなる
あなたがキューを出してくれたら
きっと
何でもしてしまう…
でもそんな心の中とは裏腹に、私はカレの手元を興味深げに覗き込む。
パチン！
ふわっと振れたカレのセーターが、静電気で私の頭を軽く叩く。
「大丈夫？」
髪に触れてくれたカレの手に
私は感電して
テープのとぐろの横に
髪をぶちまけてしまう
その私の頬を包んで抱き起してくれたカレの手に
自分の手を添えて
私は目を閉じた…
それから随分と時計の針が動いて…
カセットデッキに噛まれて、糸になったテープは
私がカットして
繋ぎ直した。
えっと、全年齢対応です。
ということは読者様の想像の度合いによって( *´艸｀)であります。
痛てっぇなあ！！ 小突くな！ しろかえで！
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