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死神からの贈り恋はさよならに幸せを  作者: CoconaKid
第一章 僕が恋を恐れる理由
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 小学生時代は誰とでもごちゃごちゃと適当に付き合っていた。今日仲良くても明日喧嘩したり、今日喧嘩しても明日仲良くなったりと不思議な人付き合いで、いちいち拘らないおおざっぱさがあった。だけど一弥とはあの和香ちゃんの死からずっとあのままで、僕たちはお互い嫌いあっていた。クラスが違ったから問題は起こらなかったけど、廊下ですれ違ったり、近くで顔を見れば不快感があふれた。

 だから小学五年生で同じクラスになった時、露骨に無視しあった。一弥はその頃目立つリーダー的な存在で自然と人が集まっていた。僕はクラスで大人しい部類の人たちと一緒にいた。

 本来なら一弥から嫌がらせを受けても不思議じゃなかったのに、一弥にしてみればやはり簡単に死を口にしてその通りになったことにショックを受けていたことが尾を引いていた。しばらくは同じクラスでも僕たちの間で何もトラブルはなかった。

 そんな時、僕は隣の席に座った郁海(いくみ)ちゃんと仲良くなってしまった。郁海ちゃんはなんだか埴輪に似たような細長い顔つきで、顔色が中途半端に日焼けたような、普通の人よりかは淡いオレンジっぽいような色をしていた。それが益々埴輪っぽくて僕には愛嬌のある顔に見えた。

 郁海ちゃんが笑うと埴輪が笑っているようでなんだかかわいい。でも女の子だからそんなことを言えば誉め言葉に聞こえないから僕は心の中だけにとどめておいた。実際埴輪を連想させても、郁海ちゃんは僕からしたらかわいく見えた。

 トマトのように赤く、ぷっくりとした頬の和香ちゃんもそうだったけど、僕が興味を持つ女の子はみんな特徴があってかわいい。そういえば八の字の眉をしている未可子さんだってかわいかった。

 ほかの人はそういうところを面白おかしく揶揄するんだろうけど、僕はその人の特徴を好意をもって見られるんだと思う。

「西守君って優しいね」

 そんな言葉をかけられると、僕は照れていた。もっと優しいと思われたくて郁海ちゃんの前ではいい恰好しようとしてしまう。

 こんな感情久しぶりだった。

 当然僕たちが仲良くなると、冷やかす人たちもでてくる。どうしてそっとしておいてくれないのだろう。僕たちはただお互いが好きだっただけなのに。

 一弥が面白くなさそうにすれ違い様に僕を見る。和香ちゃんのことで少し懲りていたので、一弥からは冷やかされはしなかった。

 そんな時、また郁海ちゃんが学校を休みがちになった。でも学校に来たときは元気に僕に声をかけてくるので、そんなに深刻にとらえなかった。

「学校をなんで休んだの?」

 と無邪気に聞けば、郁海ちゃんは病院に通っているという。

「ときどき体がだるくなってしんどくなるの」

「ええ、大丈夫なの?」

「うん、病院で治療してもらうとまたすぐに元気になるの」

 あとで知ったけど、郁海ちゃんは腎臓が悪かった。だから顔色がオレンジっぽい色をしていた。

「無理しないでね」

「うん、大丈夫だよ」

 にっこりと微笑む郁海ちゃん。

 僕も知らずと笑顔になっていた。

 また郁海ちゃんが休んだ時、僕は先生に大切なお知らせのプリントを届ける役目を与えられた。

 僕は喜んで郁海ちゃんの家にそれを届ける。僕が着いたとき、ちょうど郁海ちゃんの家から男の人が出てきて僕とすれ違った。よくその辺で見る宅急便を届ける人だった。

 郁海ちゃんはパジャマ姿で玄関口に立っていてそれを見送っていたところだった。

「あっ、西守君」

「郁海ちゃん、起きてても大丈夫なの?」

 僕が心配して駆け寄る。

「うん、気分がよくなったから大丈夫。今、お母さんがちょっと出かけちゃって家にいなくて、それで荷物を受け取っていたの」

「でもちょうどよかった。僕も先生から預かり物してたんだ」

 背負っていたランドセルからプリントを出してそれを手渡す。

「わざわざありがとう。今日は気分がよくなったから明日からまた学校に行けると思う」

「わかった。あまり無理しないでね」

 僕は外の風にあたる郁海ちゃんが心配ですぐその場から去ろうとしたけど、郁海ちゃんはまだ僕と話したくていろいろと聞いてきた。暫くそれに付き合っていたけど、パジャマ姿の郁海ちゃんが気になって落ち着いて話せない。

「ねぇ、また学校でお話ししようよ。僕待ってるから」

「うん。わかった」

 僕の気遣いを察して郁海ちゃんはようやく家の中に引っ込んでくれた。

 僕も帰ろうとして歩き出せば、先ほどの宅急便のお兄さんと出くわした。ユニフォームの服だけが目立って顔まで見ていなかったけど、すれ違いざまにつぶやかれた。

「あの子に好かれてるみたいだな」

「えっ?」

 僕が振り返ったとき、ニヤッと歯を見せた笑いを見たような気がした。

冷やかされてなんだか恥ずかしく、僕は踵を返して走り出した。慌てて走り去る後ろで、何か声を掛けられたが、僕は無視した。

 その次の日、郁海ちゃんは学校に来なかった。僕と立ち話をして病気が悪化したのかもと心配してしまう。それから数日経っても郁海ちゃんは学校に来る気配がなかった。

 大丈夫だろうかと心配していた矢先のある日の朝、担任の先生が顔を青ざめて教室に入ってきた。


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