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勇者 中島雄也

「どうなってんだ!?」


聖剣を持つ手が震える。

以前なら一振りしただけで多くの魔物共が倒れたのに今は掠り(かすり)傷しかつかせられない。


レイラが姿を消した1ヶ月前に異変に気付くべきだった。

そろそろレイラに飽きていたから厄介払いになると軽く考えすぎていた。


何とか魔族の攻撃を食い止めたが殲滅させる事は出来なかった。

勝利の実感等無い、俺は全く役に立たなかった。

魔王討伐の時のセイヤの様だ。


「た、頼む...俺の傷を、」


王国兵は神官達から治癒魔法を施されているが誰も傷だらけの俺を治そうとしない。


「『勇者の高貴な身体に触るな』以前そう仰られたのはユウヤ様です」


1人の神官の女が冷たい瞳でそう言うと周りにいた神官や王国兵までもが頷いた。

確かに言ったが、あの時は怪我なんかしなかったしレイラもいたんだ。


「頼む忘れてくれ、どうかしてたんだ...」


すがる様に神官達に近付く、何とか止血だけでもお願いしないと死んじまう。


「嫌です」


「え?」


「必死で私達を手伝っていたセイヤ様とシホ様の姿を忘れる事など出来ません」


別の神官は俺を見る事なくそう言った。


「お前と聖女はいつもテントに戻って盛りやがって!セイヤ様達に悪いと思わなかったのか!」


「思うもんかよ、この猿にそんな人並の優しさがあるもんか!」


「そりゃ猿に悪いぜ」


王国兵が口々に俺を罵る。


これがこの世界の奴等が俺に抱いてた本音だったのか?

そんなに悪い事を俺はしたか?

確かにセイヤから強さと余命は奪ったが、こいつらから何も奪ってはいないぞ。

せいぜい鬱憤晴らしに兵を叩きのめしたぐらいだ。


コイツら俺より弱かった、訓練してやるのが勇者の努めだろ?

実際今日は俺の歯が立たなかった魔族を倒してたし。


いや待て、ひょっとして俺の方が弱くなったのか?

それってセイヤが...


「どうやら気付いた様ですね」


先程の神官がやって来た。

その目から涙が溢れている。


「セイヤ様は亡くなられたと報告がありました、あなたに強さと命を奪われて...」


「どうしてその事を?」


「私がセイヤ様を鑑定しました。

勇者の強欲スキルで全てを奪われたセイヤ様を」


神官は肩を震わせて俺を見る。

どこかで見た顔だ王宮?なら王室の関係者か。


王国は全て知っていたな?

俺を使えるだけ使いやがったな。

セイヤ!俺の邪魔ばかり、役に立たない忌々しい奴だ!


「その目、何も反省してませんね、私達からセイヤ様を奪っておいて...」


神官は手にしていた剣で俺の右腕引き裂く。


「ギャー!」


凄まじい激痛と共に右腕は地面に落ちた。


「な、何をする?」


「魔族の刀や槍には毒が塗ってあります。

止血だけでは助かりません」


神官は傷の断面に止血魔法を施す。

痛みは取れたが腕は生えて来ない。


「何故だ?兵達は止血だけじゃないか」


「兵達は予め(あらかじめ)毒消しの血清を飲んでますから」


「ふざけるな俺は飲んでないぞ!」


俺の言葉に神官達や王国兵は呆れた顔をした。


「毎回戦う前にお渡ししてます。

お飲みにならなかったんですか?」


飲んだ事なんか無い、怪我をした事自体殆ど無かった。

してもレイラが治して...


「解毒の魔法じゃ駄目なのか?」


そうだ解毒だ、レイラの治癒魔法には解毒効果があったぞ!


「魔族が使う毒を解毒させる程の治癒魔法を使えるのはセイヤ様か聖女くらいです」


神官は数人の兵を引き連れて来た。

1人は大振りの剣を持っている。

何をする気だ?


「残りの手足にも毒が回ってます」


「ま、まさか」


兵達が身体を押さえつける。

身動きが出来ない。


「止めろ!!」


「なら死にますか?私達では聖女様の様に解毒魔法も出来ませんし、手足を戻す事も出来ませんので」


麻酔も無しで手足を切り取られる苦痛は耐え難いがレイラが間に合う保証も無い。


「早くしないと切り落とす範囲が広くなりますよ」


「お前ら楽しんでるのか?」


「楽しく無いです、本当はセイヤ様の命を奪ったお前なんか助けたくもありません」


神官の言葉に俺を押さえつける兵達も頷く。


「マリア様、早くしないと手元か狂ってコイツの首を落としちまいそうですぜ」


「やっぱり殺す気じゃねえか!」


剣を構えた兵が俺を見ながら笑い...違う目は睨んでやがる。


「殺しませんよ」


「信用出来るかよ!」


神官の女に叫んだ。


「殺しはしませんけどね」


神官の言葉と同時に猿轡を口に押し込まれ、兵は次々と俺の手足を切り落としていく。


....俺は....気を失った。


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