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聖女 福崎玲羅

「どうしたんだレイラ?浮かない顔して」


セックスが終わり、ユウヤは私の身体を抱き寄せる。

セイヤとシホが姿を消して2ヶ月が過ぎようとしていた。


「何でもない」


身体を起こしベッドを降りる。


(吐きそう...)


セイヤがいた時は気持ち良く思えたユウヤのキスや愛撫、甘い言葉、今は全てが駄目だ。

気持ちが悪い。


「早く忘れろよ、残りを倒さねえと俺が本当の英雄になれねえからな」


「ユウヤ...」


思わず出た本音だろう。

残った魔族が王国に向け進行を開始したと報告があった。


シホに召喚状を出したがセイヤを追ったまま戻って来ない。

セイヤとシホの足跡は王国から報告を受けた。

王国はユウヤと私の2人を中心とした討伐隊を向かわせるつもりなのだろうか?


「頼むぜ、俺の盾はお前だけなんだ」


ユウヤ自身も王国兵から全く信頼されて無い事を自覚している。

王国兵だけでは無い、民や貴族達からもだ。


「...汗を流してきます」


裸の背中に向けられるユウヤの甘えた視線までもが気持ち悪い。


『私はどうしてセイヤを裏切ったの?』


『ユウヤのどこが良かったの?』


(...本当は分かっている)


怖かったんだ。


日々弱くなるセイヤが、守りきれずセイヤが死ぬかもしれない恐怖が。


『ユウヤにすがればみんな守ってくれる』


そんな考えでセイヤを裏切ってしまった。


...嘘だ。


本当は弱くなったセイヤに見切りをつけただけだ。

汚い裏切り、心移りした最低な女、そうでなければ平気な顔で抱かれたり出来る筈が無い。


ユウヤは王国の貴族になりハーレムを作る事にしか眼中に無い。


王国は『全てが終わるまでは』とユウヤを王宮の外に決して出さない。

勇者にもしもの事があっては大変だからが表向きの理由。


本当の理由を最近知った。

セイヤがいた頃、王宮の外でユウヤは街の女を何度か襲おうとしてセイヤに阻まれたそうだ。


今回の魔族討伐が終わるとユウヤは間違いなく王宮の外に飛び出すだろう。

最近は私に興味を失って来たのが分かる。


勇者であるユウヤを止める事が出来る人間はもういない、このままでは私まで世界中から嫌われてしまう。


「もう一度セイヤを呼び戻そう」


これしか無い。

弱くなったセイヤだが私が協力すればユウヤと戦える。

裏切ってしまった事も謝って理由を話せば優しいセイヤの事、許してくれるだろう。

(シホは絶対に私を許さないだろうが)


ひょっとしたらセイヤとシホが結ばれているかも?


「嫌だ、セイヤは私だけの物だ!」


汚ならしい体液を流し終え、王宮の浴場から転移魔法で王都を脱出した。


ユウヤ1人でも残った魔族を殲滅出来るだろうから問題は無い。


セイヤを見つけるのは簡単ではなかった。

世界の方々で救世主と崇められているセイヤとシホ。


(一体何の為に?)


理由が分からないまま1ヶ月が過ぎた。


「救世主セイヤ様は少し前にあの山の向こうにある村に行かれましたよ」


1人の村人が教えてくれた。


「本当ですか?」


「はい、セイヤの従者様も一昨日行かれました」


「...そうですか」


『セイヤの従者』シホの事だ。


「ありがとうございました、皆様に神のご加護がありますように」


聖女らしくこの世界で信仰されている祈りの姿勢から加護の光を照らした

たちまち村人達に囲まれてしまう。


「ありがとうございます聖女様、セイヤ様とシホ様は正に救世主、私達も女神に祈りましょう」


村の長老が平伏した。


「祈る?」


女神は世界の人達が祈らないと現れないと聞いたが魔王を倒した時も現れなかった。


世界の人達から本当に私達は感謝されていたのだろうか?

セイヤは魔王討伐の最中も傷ついた人達を癒していたがユウヤは全く行わなかった。


「まさかセイヤは?」


セイヤは世界中の傷ついた人達を癒して回っていた。

それは私達の幸せを人々から祈って貰う為だったんだ。


セイヤの気持ちを知り涙が止まらない。


『こんな自分勝手の女の為に、早く謝らなくては』


(後は聖女の私に任せてね)

村人に案内され、ようやく見えてきたセイヤの住む山小屋。


しかし様子がおかしい。


「嘘?」


私が見たのは涙を流す村人達によって山小屋から運び出されたれる変わり果てたセイヤと安らかな笑みを浮かべたシホの遺体だった。

   

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