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聖剣士 澤井誠也

「すまないが俺はここで抜けさせて貰う」


魔王を倒し王国主催の祝賀会が終わった後、俺は勇者パーティーの4人を集めて宣言した。


「う、嘘...セイヤ急にどうしたの?」


驚いた顔をする聖女レイラこと福崎玲羅。

彼女と俺は恋人同士()()()訳だし、雄也との事がバレてないと思っているからそう言うだろう。


「そのままの意味だ。俺は役に立たない」


テーブルの真ん中に座る勇者ユウヤこと中島雄也は左側に座るレイラの肩を抱き寄せる。


「確かにお前は役立たずだな」


「ちょっとユウヤ!」


悪びれず嫌な笑みを浮かべユウヤは言った。

こいつは変わってしまった。

勇者の傲りからか、本性だったのか、もうどうでもいい。


「良いじゃねえかレイラ、魔王を倒した時だってセイヤは全く歯が立たずやられっぱなしで足手まといだったろ?」


確かに俺の攻撃は魔王に傷1つ負わす事は出来なかった。

だが囮役で魔王の攻撃を一身に受けたのだ。

もう少しで死ぬところだったんだぞ、言い方ってもんがあるだろ?


「シホも言ってやれよ、お前だって今回はセイヤに治癒魔術ばっかりで大変だったろ?」


ユウヤは右側に座る賢者シホにも手を伸ばす。

賢者シホこと羽谷志保はユウヤの手を叩き落とし首を振った。


「私がセイヤに治癒魔術をしたのはレイラがしないからだ。

私の治癒魔術はレイラに劣る、セイヤが戦えなかったのは私のせいだ...」


「お前は優し過ぎるぞ、だからセイヤが甘えるんだ」


シホに叩かれた手をヒラヒラと振りながらユウヤは苦笑いを浮かべた。


「ありがとうシホ、でもユウヤの言う通りだ。

魔王は倒したが残った魔族が最後の決戦を企てているらしい。

今の俺じゃ真っ先に殺されるだろうし」


「そんな...」


シホはまだ何か言いたそうだが俺はこのパーティーを去らなくては駄目なんだ。

ユウヤのスキル[強欲]によって強さと命を奪われ続け俺の命は残り僅か。


命が尽きる前にしなくては...


「戦えねえんだろ?

安心しろレイラは貰ってやる...いや、もう貰ったか」


「ユウヤ止めて!」


ユウヤの言葉にレイラは慌てて立ち上がる。

バレて無いと思っていたのか?


戦いの後あんなに盛っていたら誰でも分かるぞ。

現に王国の連中は皆知ってるし、知らん顔をするのも大変だった。


「...セイヤ気づいてたの?」


シホが泣きそうな顔で聞いた。

レイラとシホは親友だからな。

ユウヤとの関係を止めるように言ってたのは王国の兵士達から聞いたし。


「勇者にはレイラも逆らえないだろ?」


王国内にはそう説明をしていた、そう思う事にしていたんだ。


「惨めだなセイヤ。

1つ教えてやるよ、別に俺から強引に誘った訳じゃないぜ」


「止めて!!」


「レイラまさか自分から...?」


「そうだシホ、確かに誘ったが最後に抱かれたのはレイラの意思だ、セイヤより俺との関係を望んだんだのさ!

お前は真贋のスキルが有るだろ、俺の言葉に嘘が無いのは分かるよな?」


勝ち誇る顔を向けるユウヤ。

レイラは真っ赤な顔で俯いている。

シホは信じられない物を見た顔だな。


分かっていたさ。

日に日に弱くなる俺より強いユウヤに惹かれていくレイラに気づいていた。


でも止められなかった。

言えなかったんだ、魔王を倒せるのは聖剣を使える勇者のユウヤで剣士の俺じゃない。


日に日に弱くなる俺を心配した王国が何度も鑑定してくれてやっと分かった。

ユウヤが俺の強さと命を奪い続けていた事に。


巧みにスキルは隠蔽されていて王国が分かった時、既に手遅れだった。

今更解除しても俺の失われた強さと命は戻って来ない。


王国はユウヤを捕らえようとしたが俺は止めた。

魔王を倒す為にユウヤを使えと。

俺の意図を理解してくれた王国はユウヤを捕まえず悪用出来る全てのスキルを封印した。


王国はユウヤに気付かれないよう娼婦を貴族令嬢と偽ってあてがい、全てが終わった暁には元の世界に帰るのも良いし、残るなら公爵家を下賜する事を臭わしている。


まあ帰らないだろうな、でも王国の約束も果たされないぞ。


馬鹿なユウヤはそれに気付かない。


強欲スキルの被害は俺だけに留まっていたと知った時はホッとした。

俺が死ねば俺から奪った力は消える。


元の力に戻るんだ、全く鍛練をしなかった最弱勇者のユウヤにな。


王国兵士でも奴なら充分倒せる、危険な最後の魔族退治もレイラ達のサポートがあれば何とかなるだろう。


「セイヤ分かったら早く消えろ!

俺達はまだ最後の仕上げが残っているんだ。

レイラも臆病者の顔なんか見たくもないだろ?」


思い返しているとユウヤがうんざりした様子で手を振る。

この世界に召喚される前は親友だったのに。


...そう思っていたのは俺だけだったのか。


「セイヤ、ごめんなさい」


ユウヤに身体を抱かれレイラは諦めたように呟いた。

気まずい思いをするならさっさと言えばよかったのに。


『それじゃ、またな」


これ以上ここに居ても意味が無い。

王国には事情を話してある。


部屋を出る前にもう一度4人の顔を見た。

シホの目が涙で滲んでいた。


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― 新着の感想 ―
[一言] まあ人型ゴミはちゃんと捨てんとな 邪魔やし
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