図書館 第3フィルム 何か
第1書庫に続く廊下が瓦礫で塞がっていた。
バスラが見つけた地図にはさっき落ちてきた場所から廊下に行けたらしく、それで道が塞がってしまっている。
グレイヤ「これじゃあ、行けねえじゃねえか。文献によると第1書庫には当時の図書館でも特に貴重な書物が保管してあるみたいだけどよぉ。」
バスラ「それって、そのご自慢の筋肉でどかす時の話ですよね?こんなのは、魔鉱銃を使えば木っ端微塵ですよ。」
グレイヤ「お前、馬鹿か?こんなとこでぶっぱなしたらもっと瓦礫が降ってくるだろうが。そしたら、俺らが潰されて終わりだぞ?時間はかかるが、第3書庫から行くぞ。」
バスラ「了解です。」
どっちみち足止めを食らうならば遠回りしても問題は無い。
しかも、第3書庫にはまだ行っていない。
かといって、第3書庫で重要文献を見つけれる可能性なんて限りなく低い。
ライア「姉さん!あそこに人影がありません?」
ダニエラ「どうせ死体だろ。」
ライア「いや、絶対違うっすよ!どう見ても原型を留めていますもん!」
ライアが近寄って見ると死体に見えた。
しかし、肌の色は白っぽく、唇も赤い。
さっきから見てきた死体とは違い緑色に変色していないのである。
ライアは遠征部隊に入隊した時に受ける講習で応急処置や生存確認の仕方は習っていた。
心臓がある位置に耳を当て、口元が動いているかの確認をした。
ライア「姉さん!この人息があります!肺が物凄く弱ってるんで速攻で入口に戻って救急部隊を呼んできて下さい!」
ダニエラ「分かった、待っとけ!」
丁度向こうでの仕事が終わりライアの方へ向かっていたレイが、ライアの声を聞いて走って来た。
レイ「ライアくん!そこ変わって!」
ライア「あっ…。分かりました。任せます。」
一瞬戸惑ったが、元救急部隊のレイに任せた方が確実で、すぐに交代した。
その代わりライアは来た道を少し戻り、散らばっている本や倒れている本棚をどかした。
冷静に見えたライアも人が死ぬか死なないかの分かれ目をさまよっているという緊張感に押し潰されそうになっていた。
そのため、とても手際が良いとは言えない調子で救急部隊が通れるように通り道を確保した。
救急部隊が到着する頃には、ある程度の応急処置をレイが終わらせていて、後は救急部隊に任せるだけになっていた。
ダニエラ「フゥ。とりあえずは大丈夫だな。てっきり死体だと思ってたから、さすがに驚いたよ。」
ライア「やっぱり、思ってた通りだったじゃねえか。姉さんがどうせ死体だろとかいうから危うく生存確認しないところだったっすよ。本当に肝を冷やしたんすからね?こんなことがないように姉さんもちゃんと生存確認してくださいよ?」
ダニエラ「わかった。でも、俺はあまり気が回らねえからそこらへんはライアがやってくれよ?その代わり、さっきみてぇに救急部隊呼んでくっから。」
ライアが安心しきった顔だった。
当のダニエラ本人は少しばかり疲れた表情をしているのだと勘違いしていたが、いつも通りの穏やかな表情でつっ立っていた。
第3書庫には予想以上に多くの書物が所蔵してあり、真っ黒の箱が置いてある机の中にあった一覧表には重要文献とまでは行かずとも滅んだ文明にとっては珍しかった文献の名が記されているようだった。
というのか、第2書庫と入口付近で見た一覧表とは違い、赤色の字が表の中に書かれていた。
つまり、雰囲気だけでそう判断したのだ。
バスラ「凄い中身を知りたいですけど、今にも崩れそうな位にボロボロなんでそれは叶いそうもないですね。」
グレイヤ「まあ、ここの事は第2小隊に任せるべきだろうな。」
第2小隊は重要文献の確保がメインのため、手先の器用すぎるメンバーがほとんどで、さらに劣化保護スプレーも持っている。
グレイヤ「噂をすれば、第2小隊がきたじゃねえか。」
第2小隊隊長リリイ・アーデス
「遅くなってすいません。大穴を降りてくるのに手間取ってしまいました。ですが、降りてからは通り道が確保されていたので、すぐここまで来れました。ありがとうございます。」
凄い律儀な女性であるリリイ・アーデスは用意していたかのようなお手本通りの挨拶をして見せた。
だが、この人にとってこんな事は当たり前の事で、用意何てものは絶対にしていないのだ。
その後、第2小隊が第2書庫と第3書庫の重要文献を回収し始め、バスラ達は第1書庫へ向かった。
だが、重要文献があるはずの第1書庫には"カガク文明"の人達にとっては大事そうだが、自分たちに関係ない書物ばかりが所蔵してあり、特になんといった収穫もなかった。