奴隷生活のはじまり
「ぐふっ!?」
「おい、早く起きろよ豚が」
一瞬この状況を理解できなかった。
あっそうか俺西野の家に住むことになったのか......
俺の親の転勤が決まりどうにか残る方法を考えてるときに母さんから、彼女(勘違い)と住めば解決って言われて、ダメもとで西野に相談したらあっさり西野が引き受けてくれたのだ。
そんな考え事をしていると再び西野に怒鳴られた
「おい、聞いてんのか?」
「おっおう、ごめん、ちょっとボーっとしてた」
「まあいいや、ここに今日の予定のメモ置いといたからちゃんとみといてね」
彼女はそれだけ言うとすぐに部屋を出て行った。
とりあえずメモに目を通して見るとそこには
1.シーツの洗濯
2.買い物の荷物持ち
3.トイレ掃除
4.風呂を沸かす&風呂掃除
5疲れた私にマッサージ
という結構な数の仕事が書いてあった。そうか、今日は土曜日だからいつもより仕事が多いのか......そんな現実を受け止めながら俺は洗濯機を回しに洗面所へ向かい洗面所の扉を開けた。
「きゃあああああああ!」
そこには着替え途中の西野がいたのであった。
「あっごめん......」
俺はすぐにドアを閉めた。
以外にも白パンとは清楚系なのか......いやいや、そんなこと考えてる場合じゃない。
「梶崎の分際で私の下着を見るなんて、ノックぐらいしなさいよ」
中から怒鳴り声が聞こえてきた。今日2回目である......俺この調子で大丈夫なのかな......
そんなことを考えながらドアの前で立っているとドアが開いた。
「本当にごめん、わざとじゃなくてその」
「そうね、じゃあとりあえず一発いれてもいい?」
「えっそれってどういう......げほっ……!」
ドスッ…と鈍い音がして俺は倒れた。
「私の怒りに触れたらこうなるから、覚えときな」
それを告げて西野はリビングに向かっていった。
俺は痛みでしばらくその場から動くことができなかった。
とりあえずシーツの洗濯をしなきゃまた西野に殴られる......
やっと動けるようになった俺は風呂場へと向かい洗面器に水をため、シーツを洗い始めた。
狭い風呂場にシーツをこするこそばゆげな音と洗面器の中で水の跳ねる音だけが響いていた。
次にすべきことは買い物の荷物持ちである。あくまでも荷物持ちなため、自分の好きなものを買うことはまずない。
「とりあえずネオン(ショッピングモール)に行くから準備して」
「おう」
一言だけ返事をして俺は準備を始めた。
財布とエコバックを持ち玄関へ行くと西野は自転車に乗って待っていた。
「あれ、自転車で行くの?」
「うん、私は自転車だけどあんたの分は無いから走ってきてね」
嘘だろ......
「それじゃ、お先 早く来てよね」
そう言い残すと西野はネオンに向かっていった。
仕方がないので俺も急いでネオンに向かった。
やっとの思いでネオンにつくと西野はもう買い物を終えたところであった。
「あっ、やっと来たのね。もう買い物終わったからこれ持って帰ってくれる」
「えっ全部なの多少は自転車に乗っけたりは......」
「あんた奴隷のくせに生意気ねさっさと持って帰りなさいよ」
仕方がないので俺は来た道を重い荷物を持ちながら歩いて行った。
流石にしんどいので、半分くらい進んだところにある公園で休憩をとることにした。
しばらく休憩していると、子供が走ってきて俺の目の前で転んでしまった。俺は心配になりその子に声をかけた。
「大丈夫?」
「うぇーん......」
子供はその場で泣き出してしまった。
あたりを見渡してみたが親らしき人はいない。ただ俺には子供を喜ばせるような芸は無いので取り合えず買い物袋に入っていたプリンをそっと差し出した。
「これをあげるから泣きやんでね」
「えっお兄ちゃんありがとう」
そう言い残すとその子はまた走ってどこかに行ってしまった。
われながらいいことをすると気持ちがいいなと思ったのだがすぐにとんでもないことを思い出した。
そうあのプリンは西野の楽しみにしているプリンだったのである。だけど、またネオンに行って買ってくるのはめんどくさいので仕方なく、怒られる覚悟でゆっくりと家に向かって歩いて行った。