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ようじょ、御城羊子さんの家に招かれる


発泡性のワインは、一度普通のワインを作ってから、底へ蔗糖しょとうと酵母を添加して、瓶に詰めて栓をする。

そうして発生した炭酸ガスを溶け込ませる――これを【伝統方式】、メトードトラディショナルやメトードクラッシコと云ったりする。


 そんな少し面倒な過程を巨大な減圧タンクで一気に行う大量生産方式が――【シャルマ式】、メトードシャルマという。


 更に伝統方式のスパークリングワインには、フランスのシャンパーニュ、ドイツのゼクト、イタリアのフランチャコルタに、スペインのカヴァとうものがあるのであって、他にも作り方でメトードリュラルや、トランスファーなどと……


(ぬぅ……わたし、ちゃんと選べるですかねぇ……)


 少し不安な寧子は、そんなことを考えつつ、今日もワインバー:テロワールでバイトに勤しんでいた。


「寧子ちゃん、お鍋見てて!」

「はいなのです!」

「ごめーん、御会計よろしく! あと済んだらセラーから追加のワイン持って利きて!」

「あいあいなのです!」

「寧子ちゃーん!」

「いえっす まむ!」


 相変わらず店は忙しく、可愛らしい店主の菅原ラフィさんの的確な指示が飛び、寧子は良く訓練された兵隊さんのようにてきぱきと仕事をこなしてゆく。


 今日は沙都子が休みで、ホールには寧子一人きり。

しかし仕事にも随分慣れたもので、ばたばたと忙しく走り回りながらも、”スパークリングワイン”のことを考える余裕があった。


 そうして営業時間が終わり、いつものように閉店後、店のオーナーでリカーショップOSIROの若い社長さんである御城羊子さんがやってきてワインを飲みだす。


 そんな時、目に留まったのは羊子さんが飲んでいる今日のワインだった。

 円筒状のグラスに満たされた黄金色。

液中ではまるで真珠のネックレス様に美しく泡が躍っている。

そしてボトルにはっきりと記載されている”CAVA”の文字。

これは【カヴァ】と呼んで間違いないのだろうか?


「じ~」

「ね、寧子ちゃん? 怖い顔してどうしたの?」

「す、すみませんなのです! えっと、それってカヴァですか……?」

「うん、そうだよ。興味あるの?」


 ワインについてとってもよく知ってる羊子さんに相談してみよう。

そう思った寧子は、今年のクリスマスはみんなでスパークリングワインを持ち寄ってパーティーをしようということになったが、色々とありすぎて選べるか自身が無い、といったことを正直に話したのだった。



「寧子ちゃん、明日は朝から学校?」

「いえ、午後からですけど?」

「もしよかったら今からうちに来る? 実は今日、頂いたサンプルを使って社内検討会をやって、残ってるのが沢山あるんだ。明日にはもう飲めなくなっちゃうから」


 時間は既に日を跨ごうとしている。

しかし今の状況にあって、このラッキーな羊子さんからの提案。

しかも明日の講義は昼過ぎから。

これは天啓に違いない!


「本当ですか!? 是非!!」

「おっけー、わかった。すぐに手配するね」


 羊子は立ち上がり、どこかへ電話をし始めた。


「ねぇねぇ寧子ちゃん」


するとラフィさんカウンターから身を乗り出して、


「気を付けてね」

「? 何をですか?」

「ああみえてムーさんって凄くスケベだから。特にちっちゃい女の子には目が無いからねぇ……」

「ええっ!?」


 まさかとは思うが、そういえば前にラフィさんともにょもにょ何かがあったようなことをいっていたような、いなかったような。


 羊子さんは好きだけど、一応警戒しておこう。

そう思う寧子なのだった。


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