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2話 武器へのこだわり

 特に何ということも無く、到着した……らしい。


「ここが私の店なんだけど……」


 一言で言うなら廃墟。二言で言うなら今すぐにでも逃げ出したくなるような廃墟。それぐらいに雰囲気が出ている。

 外壁には蔦が無造作に生えており、点検整備はまるでされていないみたいだ。

 ただ、まだ朝の街の中というだけあり、人は通るし、日は当たる。もしこれが夜だったリしたならば、絶対に避けて通るだろう。それに間違っても此処が武器鍛治屋等とは予想だにしないだろう。


「ちょっと待っててね……」


 鍵を開けているようだ。まぁそこら辺は意外とちゃんとしているというか、戸締りはしっかりとする人のようだな。まぁ商品が置いてあるにはあるから、当たり前と言えば当たり前な気もするが。


「開いたよ。ささ、どうぞどうぞ〜」


「えっと……お邪魔します……」


 重々しい音を立てて鍵を開けたドアが開かれる。

 俺はただ、陽の光だけが頼りなこの薄暗い部屋に案内されるまま、入っていった。


「暗いなぁ。ごめんね、ちょっと待ってて」


 暗闇の中にリュミナが消えていってしまう。一人だ。この感覚は何かに似ている。そう、何かに。あぁ、あれは小学生の頃だったかな、お化け屋敷に行ったあの時だ。非常におどろおどろしくて、若干のトラウマを背負ってしまったあの時に似ている。怖い。


「灯ついた?」


 奥から声が聞こえると同時に、突然周りが明るくなり始める。最初はパカパカと点灯していたものの、次第に安定するようになってきていた。


 この光は一体どのようにして作られているんだろうか。配線なんかは見当たらないし、やはり魔法の類だろうか。


「ついたみたいだ」


「良かったぁ。じゃあ好きな商品を選んでいいよ!!」


 灯りがつくまでは気が付かなかったが、前にはカウンター席、周りには多くの武器が揃えられていた。長さの丈が違う武器や、太い武器、ハンマーのような武器や、銃まである。だが、その全てにはこだわりが感じられるようだった。

 さっきまで若干怖がっていたのを忘れ、それもまぁかなり見とれて、店内を徘徊するようになっている。


「是非手に持って、フィットするかとか、試して貰ってもいいですからね?」


 確か俺の武器によるステータス上昇の能力は、手に持った時にあの四角いホログラムと同時に反映されるんだったな。

 ふとある剣が視界に映る。それは格好がただカッコイイだけでは無く、刃の造りに一切の曇が無いように思える程の良い金属光沢の剣があった。

 とりあえず、持ってみるだけなら良いらしいので、四の五の言わず持つことにする。

 案の定ホログラムは現れ、文字には、長剣・攻撃力上昇、瞬発力上昇、洞察力上昇。と書かれていた。そしてレアリティを表す星の数は変わらず十個だ。

 手に持った感じは相当フィットするし、扱いやすそうだ。他にも触れるだけなら無料だから、この際色々と触ることにしようか。


「ど、どうですか……へっくしょん……うぅ……」


 カウンター席の方にいるのか、こちらには来ようとしていなかった。なんだか風邪気味のようだから早く決めてあげた方がリュミナの為か。たまにくしゃみをする音が聞こえてくるからな。


「あぁ……ちょっと待ってくれ。これも凄い良いな……斬れ味が良さそうだ……」


 だが、こんなにも多くの武器が会ってしまったら我慢出来ないだろう!! もう少しだから我慢してくれ。



 結局、最初に持った長剣にすることにした。それに様々な武器を持って驚いたことが、レアリティを表す星の数が、どれも十であったことだ。十がどれ程凄いのか分からないが、まぁそんな感じだった。


「じゃあ……よろしく頼むよ」


 俺はカウンター席の方へ向かう。が、そこにリュミナは居なかった。


「こっちこっち……ぶえっくしょん!! ひぃ……うぅ……」


 疑問に思いながらも声がする方へ向かうと、衝撃的なものがそこにあった。


「えへへ……」


 水着姿の、それはそれは俺が常識のある紳士じゃなければ襲っていてもおかしくない程に可愛いリュミナがそこに、曲がり角で震えていた。

 ダメだ。あれは直視してはならぬものだ。直視したら萌え死んでしまう程に破壊力があるものだ。あれは兵器だ。そう言い聞かせろ。リュミナのような兵器だ。


「もう。早く見つけて欲しかったんだ……だ……だ……だぞっくしょん!!」


 ずっと長い間、武器棚に水着のまま座っていたのか。キュン死するセリフが完全に台無しになっている。


「えへへ……」


 小刻みにプルプルと震えながら、リュミナはそこで笑顔のまま、武器棚の上で座っていた。

 少し考えれば何をしているんだろうか、この人は。と成りかねないものだが……。


「あっ……」


 リュミナが俺の右手に持っている長剣を見て、何処か寂しそうな顔になる。


「そうだよね……私じゃパートナーなんかにはなれないよね……」


 パートナー……? 話が読めない。


「あ、あの、リュミナさん?」


「誰も……うぐっ……助けてくれなくって……えぐっ……」


「!?」


 泣き出した? 何かいけないことしたのか!? この剣がじっちゃんの肩身だったとかそういうのか!?


「助けに入ってきてくれた人が……ひぐっ……優しくって……」


 これって、俺のことを言っているのか? 十中八九そうだろうな。絶対にそうだろうな。

 あぁ、そうか。女性の気持ちなんて到底理解出来ない様な俺だって伊達にギャルゲーをこなして来た訳じゃない。今ここで落とす!!


「す、すまない」


「謝らないでよ!! バカ!! あほ!! アンポンタン!!」


 ……。


 やっぱり、わかんないや。

 どうして俺は、武器棚の上で水着状態で泣きじゃくりながら座っている女性を前にして、怒られているのだろうか。


「寒い……」


 そんな格好でいるからだろ。なんてのは絶対に言ってはならない。それだけは分かる。

 はっ!! これはもしや覆い被さるように抱き着いて、俺が温めてやるよ。とか言って温めてあげるパターンなのか? あれはそもそもイケメンだけに許された行為であり。いや、その前に俺とリュミナはそこまで深く親しい関係では無いのは確かだ。そんなことをしたら……結果が目に見えている。

 だけど何もしないよりかは、定番的でも何か。あぁ、そういえばあれがあった。自分を犠牲にするやつ。


「これでも着ていてくれ……」


 俺はおもむろに上着を脱いで渡す。下は薄いTシャツだけだ。


「いらない!!」


「いる!!」


「じゃあいる!!」


「……おい」


 謎の流れで、それでもしっかりと着用してくれるようになったらしい。

 今思えば確かに寒いな。日が少ししか当たらない朝だって事もあるかもしれないが、外もそれなりに冷えていたし。そもそもそんな日に水着になる奴が何処にいるのやら。


「……ありがとう」


 赤面したリュミナの少し怒った顔が拝めた。それだけで萌え死ぬかも。しかも俺の上着を着ていて尚且つ下は肌の接点が多い水着。普通にダメかもしれない。

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