2話
あの日からもう既に2ヶ月は経った。
俺の今いる場所は地図に載っていないどこかにある島の牢屋にいるらしい。
体も動けず只只死を待つだけだった。
さすがに2ヶ月もこの状態だからこの前まで発狂してたけど今はまた一周まわって冷静だ。
彼女は刺されて即死だったらしい。
現場に来た警察官は俺を拘束し警察署で事情説明するも証拠もなく死んでいたはずの転生者と名乗る湯川の姿もその場には無く、彼女を殺したのは俺であると断定されてしまった。
人類が半分になってから殺人等の罪がより厳しく強化された。
殺人罪だと人数関係なく終身刑が言い渡される事になっていた。この事により殺人事件が減少した。
まさか、自分が受けることになるとは思っていなかった。当然だが、マナの葬式には出ることが出来ないため収監された初めの頃は毎日泣いていたが1ヶ月も過ぎれば流す涙も無くなり声も挙げずに只只寿命を消費して死を待つだけになった。死にたいと何度も考えたが、それは俺を救ってくれたマナに対して失礼だと思うようになってからとことん生きて人生を消費しようと思った。
ここでの生活は椅子に拘束されたまに運ばれてくる食事を手探りで食べる事で栄養を多少なり取った。
それ以外は基本椅子に座っている。トイレなどはあるが一日に数回しか行けない。
それ以上は…そう言うことだ。
そんな生活もある日に全てが変わった。
その日はいつもと同じ日であるはずだった。
睡眠時間である深夜、突然サイレンが全方位から鳴り響いていた。
周りが喧しくなり何人もの人が移動するのが分かった。たまに聞こえる銃声に驚きつつも俺には関係無いと思い寝ようと思った。その時真正面から声が聞こえた。
「はぁ…何でこいつと救出任務なのよ。明らかに不向きなメンバーしか居ないじゃない。」
「だからと言って一人で行かせるわけないだろ。予想外のことが起きた時の為に俺たちが居るんだ。」
「ここ来てから足引っ張ってんの全部あんた達だ!」
「ふっ……落ち着きな…可愛い顔が台無しだよ。」
「お前はその口閉じてろ。」
声からして3人、女性が1人と男性が2人の声が真正面から聞こえた。部屋の形が分からないため断定できないが、多分鉄格子の外にいるのだろう。
「こいつで間違いないの?」
「場所に間違いはない。後は本人に確かめるだけだ。」
どうやら彼らは俺を探しているらしい。しかし、眠い所為で目が開けられず誰かも知らない人に逃げるなどの問いに答えると逃亡罪で相手に殺される状況を与えてしまう。
これはテストだ。
そうであれば答える内容には気をつけなければ。
「お前は桐生ユイトだな?」
「………」コクッ
相手の問いに俺は頷きで答える。
声出した瞬間に撃たれるのではないかと思い必要最低限で答える。
「よし、連れ出すぞ。」
ガシャンッ
こいつマジかよ。
質問一個だけじゃねぇか、よく信じたな。まぁ、音からして鉄格子を破壊したんだろう。
それから彼らは俺の拘束を壊して久しぶりの自由に立ち上がる。先程まで眠ろうとしていたので若干体に怠さを感じるが普段通り動けた。
「あんたら誰なんだ。一体何の目的があってーー」
「そんな事はどーでもいいの。あんたは黙って着いてくればいいの。」
目の前の3人は、声の通り男2人女1人だった。
男の1人は黒い肌の筋肉がしっかりとしたスキンヘッドの男でもう1人は金髪の片目を隠したイケメン。
女性の方は、緑髪の眼鏡をかけすらっとした顔も含めモデル体型の女性だ。
3人とも白いロングコートを着ていて背中にはⅣと英数字で書かれていた。
「とは言え無茶はするな、そして我々から離れるなよ。」
「わかった。…にしてもあなた達はどうやってこの地図にない島に来たんだ?ヘリやジ機の音は聞こえなかったけど。」
牢屋から移動する中、彼らの移動手段や脱出の手段について聞いた。
「なに?その前時代的乗り物。そんなの必要ないわよ。」
長い廊下を抜けて扉を開くとそこはこの刑務所のヘリポートであった。しかし、ヘリポートの真ん中にはヘリの代わりに避雷針のような赤いランプが付いたものが刺さっていた。
「さっさとこんな暗い所からおさらばしましょ。」
女性が避雷針にあるボタンを押し操作すると、避雷針からカウンドダウンが始まった。
「ほら、はやくしなさい。置いてかれるわよ。」
3人はその避雷針に片手を付けていた。
俺も彼女に言われるがまま避雷針に触れる。
カウントがゼロになった瞬間に雷が落ち視界が光により真っ白になった。
周りの音が波の音から一瞬にして人が歩く音から話し声が聞こえたりなどしていた。
「…ここは?」
ゆっくりと目を開けると薄暗い場所ではなく円の広い大広間で真ん中にサービスカウンターのような場所があり辺りを見回せば多種多様な人達が様々な言語で話していた。
周りに目を奪われている間に3人はすでにサービスカウンターのような場所で話していた。
すると、緑髪の女性がこちらを振り向き
「ほらっ…これあんたのよ。無くすんじゃ無いわよ。」
「うん、わかった。」
投げ渡されたのは円形のバッチで1と書かれていた。
「ところでさ、ここどこなの?」
「………ハァ!?雰囲気で気付きなさいよ!!」
俺の言葉に彼女は怒鳴り同時にため息を吐いた。
それを見かねた隣の黒人の男性が、
「ここは、ウォーリアの総本山海上都市キャメロットだ。」
どうやら俺はすごいところに来てしまったらしい。