女神様によるステータス講座 後編 魔法編! いや、長ったらしいステータス講座なんかどうでもいいんだよ! 俺は早く、チートで無双したいんだ!
異世界! 魔法! 不思議な指環! ファンタジーな冒険の匂いがプンプンしてきますなぁ!
冒険には危険がつきものだけど、チートがあるから無問題!
「『魔力』、これは『体力』の魔法版と考えて下さい。『体力』が高ければより重いものを持てるのと同じで、『魔力』が高ければより大きな魔法を使えるのです」
「俺の『魔力』は平均ってなってますけど、じゃあ俺にも平均程度には魔法が使えるってことですか?」
「いいえ、この世界は『魔力』が全くない人がほとんどですから、つまり『魔力ゼロ』がこの世界の平均程度、ということになりますね」
「今のままじゃ使えないってことですね。『魔力』にポイントを割り振れば、俺にも魔法が使えるようになるって解釈で間違ってないですか?」
「その通りです。そして、ぜひ割り振ることをおすすめします! 何と言っても、これからあなたが行く世界は多くの魔法が存在していますし『魔力』が低ければ、状況によっては『詰み』ということもありえますから。ああ、でもご安心下さい。ボーナスポイントは、平均的に割り振っても必要十分、いえ、十二分にありますから。いいですよ~魔法は! こっちでできないこといっぱいできますよ~。火を出したり、氷を出したり、雷を出したり……、それにあんなこともこんなことも……。おっとと、ネタバレはあんまりよくないですよね。他にどんな魔法があるかは、詳しくは行ってからのお楽しみということで……」
火、氷、雷の魔法、それにあんなこともこんなこともできるだと……何だか楽しそうじゃないか!
さっきまであった不安感が一瞬で吹き飛んだ。
自由自在に魔法を使う。それは男子なら一度は夢に見るだろう。
幼いころ親しんだ小説やゲームには魔法がたくさん出てきた。
そりゃもう数え切れないほどのたくさんの魔法が!
それらが今、現実に俺のものになろうとしている……!
魔法の存在する異世界に行き、『混沌の指環』なるものを探し出す。
何だかファンタジーものにありそうな展開ではないですか!
何だか突然やる気が出てきたゾ!
異世界に行くということで、さっきまでちょっと不安があったけど、魔法という言葉の魅力が、そんな不安を一気に吹き飛ばしてしまった。
それに女神様が言うには、俺が授かる力は『チート』みたいなもんらしいから、まず安心していいはずだ。
『チート』使って死ぬやつは、そうはいないだろう。
「魔法……いいですね!」
俺はサムズアップした。
「おや? 急に元気が出てきましたね?」
女神様がニヤリと笑った。
「ええ、冒険が俺を呼んでいる。そんな気がヒシヒシとしていますよ。これで奮い立たなければ、それはもう男じゃない……!」
「ふふっ、良い面構えですよ、多加賀幸一様……!」
「女神様、もうステータスの説明はいりません。『魔法攻撃力』も『魔法耐性』も『器用さ(魔法)』も、さっき説明してくれた物理とつくものの魔法版でしょう?」
「ああ! さすがは私が見込んだお方、察しが良いではありませんか!」
「『幸運』は、まぁそのまんまでしょう。どん底って書いてあるし。女神様! 俺にボーナスポイントの割り振り方を教えてください! そして、さっさと異世界に送って下さい!」
「やる気マンマンですね! では、目の前のステータス画面に触れて下さい」
俺は女神様が言い終わらないうちにステータス画面に触れた。ステータス画面の色が赤色に変化した。
俺はもう、異世界に行きたくてウズウズしていた。
早いとこ、こんな不幸な現実から離れ、異世界で『チート無双』したかった。
「ボーナスポイントを割り振れるようになりました。割り振りたい項目の文字に指を触れると、触れている間、右にあるボーナスポイントの総量が減り、減った分だけ、項目にボーナスポイントゲージが割り振られます。割り振られた分だけ、各項目の文章が変化します。それから――」
女神様の説明を聞き終わらないうちから試す。
『幸運』でやってみる。今までが散々不幸だっただけに、『運が良い』という状態を存分に味わってみたいのだ。
なるほど、女神様の言うとおり、幸運にボーナスポイントゲージがニョキッと伸びた。
『幸運』の文章が、『ドン底』から『ちょい悪』に変化した。
どんどん割り振ってみる。
『ぷぅ~』、『ついてない』、『ちょっぴりついてない』、『ふつー』、とどんどん変化する。
割り振られたボーナスポイントゲージがドンドン伸びていくのが、何故かたまらなく面白い。
伸びていくゲージの先に丸いボタンがあった。
それが一体何なんのかわからないが、何となく押したい衝動にかられるような感じがあった。
だから、俺はちょいと押してみた。
一回押したつもりが、間違って二回触れてしまった。チョイチョイってな具合で。
人のお話は最後までちゃんと聞きましょう。