地下室という名の地下牢。
男たちは俺を邸に担ぎ入れ、邸の中の地下室に俺を押し込めた。
男たちのやり方は荒っぽかった。
運び方も、地下室への入れ方も、袋と縄の解き方も全部荒かった。
おかげさまで全身が痛かった。
袋と縄は解いてもらったが、それ以外はボンボンとやりあった時のままだ。
錆びた短剣は失ったままだし、服は全身雨でビショビショ、泥でドロドロ。
地下室は暗く、寒い。寒いのは服が濡れているせいもある。
地上へと続く天井のドアの隙間から漏れる微かな明かりだけが、唯一の光源だった。
光は地上へと続く段階子を薄っすらと照らすだけで、地下室は真夜中に近い暗さだ。
あまりにも暗いから、地下室がどのような形状で、どれくらい広いのかわからない。
わかることは床が板敷きということだけだ。
「ぶぅええっくしゅんッ!」
くしゃみが出た。
寒い。このままじゃ風邪をひきそうだ。
濡れた服を着たままなのがいけないと思い、とりあえず服を脱いだ。どうせ誰も見ていないんだから、下も全部脱いで、スッポンポンになった。
脱いだ服は早く乾くように、その辺に適当に広げておく。
少し寒さがやわらいだ。思ったとおり、全裸のほうが幾分マシだ。
俺は依然疲れている。
本当は横になりたいが、全裸で板敷きの床に寝転ぶのは、ヒンヤリ感が強そうなので、やめておく。
代わりに、もたれられる壁やら何やらが丁度良いものがないかと、暗闇の地下室を手探りで彷徨った。
地下室には四方の壁、床と天井、地上へゆく木の段梯子を除いては何もなかった。トイレすらない。
トイレしたくなったらどうすりゃいいんだ?
一応、それは確認しておくべきだろう。
「すいませーん」
地上に声をかける。
返事なし。
「すいませーん!」
少し声を大きくする。
やっぱり返事なし。
俺は段梯子を登り、地上へのドアを開けようとした、が、開かない。まぁ、これは想定の範囲内。
簡単に開いたんじゃ、押し込めた意味がない。
ドアをノックした。
「すいませーん!!!」
声をさらに大きくした。
返事なし。
俺は諦めた。
疲れ果てていた。これ以上はしんどすぎる。
もう知らない。小便大便したくなったら勝手にしてやる。ヤツら怒るかもしれないが、そんなのこっちの知ったこっちゃない。そもそもこんなところに押し込んだヤツらが悪い。
俺は段梯子を降り、壁に持たれかけ、床に腰を下ろした。
壁は幸いにも土じゃなく、板だった。
壁も床も想像した通りヒンヤリしていて、ケツも背中も冷たい。
少し不快だが、この程度なら、じき慣れるだろう。
しかし、この地下室は最低だな。もはや牢獄だ。
明かりもない、トイレもない、ベッドもない。ないないばっかりキリがない。
『グリーンドルフィンストリート刑務所』の方がまだマシだ。
黒田官兵衛が入れられた土牢に比べればちょっとだけマシか。
ま、どれだけ待遇が良かったところで、牢屋は牢屋だ。入りたいと思うような場所じゃない。
さて、どうしたものかなぁ。
ひとまず生きてることを喜ぶべきか。
でも、本当に喜んで良いんだろうか?
この先拷問に掛けられたりしたら、あの時死んでおけば良かったってことにならないか?
水責め、鞭打ち、木馬責め、石抱き、様々な拷問が頭をよぎる。
頭を振り、恐ろしい想像を振り払った。
拷問は勘弁して欲しい。
けれど、主筋のボンボン殺した俺を殺さず、生かしておくということは、拷問したり、見せしめにしたりするためなのかもしれない。
それはヤバイ! めちゃくちゃヤバイ!
何とかここから脱出しなければッ!
とは、思うけど、脱出の良い方法なんてちっとも思い浮かばない。
『火剣の勇者』は火剣が無ければ勇者ですらない。
今は運が良いだけの全裸の男にすぎない。
いかに優れた英傑でも、身一つで脱獄は難しいだろう。ただの男子高校生に毛が生えた程度の俺じゃ、どうしようもない。
「はぁ……」
自然と溜め息が出た。
眠くなってきた。もう考え事はしたくない。
疲れすぎたらしい。少し眠った方がいいな。
俺は膝を抱え、立てた膝に肘をついて、頬杖をついた。
意外と眠れそうだった。
俺は目を閉じた。目を開けていても閉じていても、さほど風景は変わらない。どっちにせよ真っ暗だ。
俺はすぐに眠りに落ちた。
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