コーイチ、雨中を駆ける! ボンボンの綺麗な顔をフッ飛ばせ!!
投稿から二ヶ月、20,000PV達成!
さて、やる気も出てきたことだし、あの自己中心クソッタレボンボンヤローに、この『火剣の勇者』様が教育的指導を与えてやりますか。
俺と壇上のヤツとの距離は、三十メートルから四十メートルくらいってとこか。突っ切れば数秒だな。
雨が強くなってきた。
あまり長引かせたくはないな。風邪をひいたら洒落にならない。お呼ばれして、そのお土産が病気なんて笑えない。
俺は壇上のヤツを見据えた。
ヤツもこっちを見ていた。俺を見下したような目をしている。
イケメンなだけに、余計に鼻につくし、腹が立つ。
俺の怒りは更に燃え上がる。
ヤロー、目に物見せてやる! でもって、その綺麗な顔が恐怖で哀れに歪むところをたっぷり拝んでやるからな!
俺は腰をグッと落とし、ボンボンに向かって全速力で駆けた。
ヤツの『つらら』の尖端が一斉にこちらを向き、射出された。
高速で迫る『つらら』。
考えるより早く、剣の意志が俺の身体を動かす。
素早い薙ぎ。
一瞬で蒸発する『つらら』
が、薙いでも薙いでも、新たな『つらら』が襲い来る。
それは俺とヤツの距離が縮まるほど、苛烈さを増す。
ヤバッ……! これ、一直線は無理だッ!
堪らず、射線から逃れるため横っ飛びした。ゴロンと一回転し、すぐさま立ち上がる。
さっきまで俺がいた地点に、何本もの『つらら』が鈍い音を立てて突き刺さる。
同時に、ビキビキ、バキバキと嫌な音を立て、凄まじい速度で地面を凍らせてゆく。
ソレを見てゾッとした。超恐ろしい。
当たったら酷いことになるのは容易に想像がついても、自分が氷漬けの死体になるのは、想像しないようにした。
再び、ヤツに向かって突撃を開始する。
最初の数本を打ち払うと、すぐに横っ飛びする。そしてまたヤツに向かって突撃する。
これならイケる!
『つらら』生成と、射出の合間を上手く縫えば、ヤツにたどり着ける。
再び発射される『つらら』を切り払い、そして横っ飛び、だが、
飛んだ先に『つらら』が迫っていた。
偏差射撃だ。目標の移動する位置を予測し、その予測位置を攻撃するやり方だ。
一瞬がとてもスローに感じられた。飛来する何本もの『つらら』が、やけにハッキリ見える。事故に遭う瞬間、視界がスローに見えると聞くけど、きっとこんな感じなのだろう。
戦慄した。身体の凍るような恐怖があった。実際当たってしまえば身体が凍ってしまうだけにかなり恐ろしい。
やはり身体が勝手に反応する。
黒い炎が『つらら』を薙ぎ払う。
が、取りこぼしがある。
身体を捻って回避しようとするも、間に合わない。
『つらら』が脇腹をわずかにかすめた。
とっさに薙ぎ払ったせいで、受け身も取れずに肩口から地面に落ち、転がった。
「ぐっ……!」
結構痛い。だが、悠長にしていられない。
痛みを押して、俺はすぐに立ち上がった。
かすめた横っ腹を見ると、服が凍っていた。
直後、
刺すような痛みが横っ腹を襲った。
腹が凍った……!?
俺は反射的に剣を凍った部分に当てた。
すぐに剣を離して横っ腹を見る。
服が少し焦げてしまった。だが、おかげで氷は溶かせたらしい。
横っ腹が少しひりひり痛む。多分軽い凍傷だ。これならまだ大丈夫。全然動ける。
ヤロー、やってくれるぜ。ワンパターンじゃダメってことか。左右に細かくチラして動かなきゃダメか。クソッ、結構しんどいな!
俺はまたまたヤツに向かって突っ込んだ。
と、同時に左右へフェイントを交えステップ。
ヤツに的を絞らせない作戦だ。
思った通り、ヤツの『つらら』が左右に大きく散る。
弾幕が厚みを無くす。厚みのない弾幕なんて全然怖くない。一本や二本程度の『つらら』は一振りで掻き消せる。
ヤツの顔色が変わった。目をやや見開き気味に、眉根を寄せ、眉間にしわができる。引き結ばれた唇が固くなっている。
その面から察するに、どうやら『予想外』って感じだな。俺がここまでやるとは思ってなかったらしい。ざまぁ見ろ、ボンボンめ。
ヤツは『つらら』の本数を増やしてきた。
が、それも無いよりマシ程度のもんだった。
五、六本増えたところで、俺のフェイントステップに対応できない。弾数が少なすぎる。
とは言うものの、俺も限界が近い。
正直言ってフェイントステップはかなりしんどい。
こうなってくると、後は気力、体力、根性で何とかするしかない。
どっちが先にへたばるか勝負だボンボン! 俺は負けねーぞ! 気力、体力、根性はボンボンじゃあ身につかない! ハングリー精神の偉大を見せつけてやるよ!
がむしゃらに、ひたすら突き進む。
ヤツの『つらら』の命中精度、質、生成速度が落ちてきた。
ヤツの魔力も尽きかけてきているのか?
チャンスだ。やるなら今しかねぇ!
距離は約十メートル。
体力的に、突っ込んで仕留めるにはギリギリの距離だ。
ヤツの周りに浮遊していた『つらら』が尽きた。
千載一遇のチャンス! これで決める!
俺は全速前進で突っ込んだ。
とそこで、ヤツは俺が思ってもいなかった驚くべき行動を取った。
ヤツは俺にクルリと背を向けると、一目散に壇上から逃げ出した。
タッタタッタと走ってゆくボンボン。
フォームは運動音痴のそれでかなりダサく、カメ並に遅い。
が、疲れきった今の俺はそれより遅かった。これ以上走るのはもう無理だった。壇上、先ほどまでヤツが立っていた地点で、俺は足を止めた。
膝に手をついた。息が上がっていた。しばらく動きたくない。
二十メートルほど先で、ボンボンが俺と同じように息を上げていた。
ヤツは工事中の邸の足場を背後に、息を荒くしてこっちを見ていた。
だが、俺よりヤツのほうが若干余裕がありそうだった。
多分雨に打たれたせいだ。
雨が俺の体力を大きく奪った。
雨さえ降ってなければなぁ……、クソッ、ここにきてツイてない。
いや、待て待ておかしいぞ。俺には世界最高の幸運があるはずだ。それなのに、なんでこんなことにならないといけない?
こんなとこで氷漬けにされて殺されるなんて、運の良い人間の死に方じゃないだろ。
女神様、あなた本当に俺を幸運にしてくれたんですか? そのチート、バグってません?
心の中で女神様に問いかける。ついでに、この危機を助けてもらえるように祈る。
もちろん返事は返ってこないし、女神様が現れ、俺を助けてくれることもない。
現実は非情である。
読んでくれてありがとう!




