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楽しいお引っ越し。コーイチとエランが新居で引越し祝いをしていると、コーイチ宛に、オンナノコからの手紙がっ!?

今日は土曜日だから通常の二倍投稿だッ!

 ジュリエッタお嬢様を裸にひん剥いたその日からしばらく、俺は彼女がいつ殴り込んでくるかと怯えながら生活するハメになった。

 表面上は普段通りに振る舞うのだが、内心はビクビクしつつ、常に警戒を怠らなかった。

 一週間ほどそんな風に過ごしたのだが、その間、何も起こらなかった。

 尾行も付かないし、誰かに狙われているという雰囲気もない。街はいつもと変わらない。

 良かった、街中で辱められて怒り狂って復讐に駆られているお嬢様はいなかったんだ。

 一週間、何もなかったことで、俺はすっかり安心した。

 安心したところで、俺は前々から準備していた、ある計画を実行移すことにした。


 俺は、『宿を出て、アパートを借りる』計画を発動した。

 作戦概要は至極簡単、読んで字のごとく、宿泊費の高い宿を出て、月極の安いアパートを借りるという計画だ。

 これにより家賃は今までの半分程度で済み、なおかつ広い部屋に移れるというわけだ。

 デメリットは、家具を一から揃えなければいけないことと、街に根を下ろしてしまうこと。

 が、後者は今の俺にはそれほど悪くない。『混沌の指環(カオス・リング)』を探さなければならないが、それにはおそらく時間がかかるだろうし、入念な準備がいる。しばらくは街に逗留とうりゅうし、金銭を蓄え、ステータス向上に勤しむべきだろう。


 『ジュリエッタお嬢様ストリップ事件』をもうすっかり忘れた頃、俺は日雇いを一日休み、引っ越し作業を開始した。

 アパートの大家さんに借りた大八車を引いて、エランと二人、家具屋を訪れた。もちろん家具を買うために。

 家具選びはエランに一任した。よく使う人が選ぶのが筋だと思ったからだ。


 女性のショッピングは長い。という俺の中にあった概念は、エランには当てはまらなかった。彼女三十分足らずで、必要な家具全てを選び終えた。

 彼女いわく、予め買うものをメモしておいたということだが、それにしても早かった。

 たった二人で使う家具、それに小さなアパートに入れるということもあって、どれも小ぶりで可愛らしい家具ばかりだ。日雇いで日頃から鍛えている俺なら、一人で充分運べるサイズだ。

 家具を買い、次に日用品を買い、最後に夕食の食材を買った。

 こんな長い間二人でショッピングをするのは初めてだったから、楽しかったがやけに疲れた。


 買い物が終わり、アパートにつくと、エランは何もない部屋の床に寝転び、ぐっすりと眠り込んでしまった。朝早くから昼過ぎまでずっと歩き回っていたのだから仕方がない。

 俺は彼女を抱きかかえ、部屋の隅に下ろした。

 それから、まず最初にベッドを部屋に入れ、ベッドの上に彼女を寝かせた。

 気持ちよさそうによく眠っている。エランの寝顔を見ると、疲れているはずなのに、身体にやる気が漲ってくる。


 よし!


 俺は奮起し、彼女が起きる前に、引越し作業を終わらせて、起きた時にビックリさせてやろうと思った。引越し祝いサプライズだ。

 俺は猛然と動いた。動きまくった。働き蟻のごとく、働き蜂のごとく、ブラック企業のサラリーマンのごとく働きまくった。

 全ての家具、日用品を入れ、配置した。俺たちの部屋が完成した。

 部屋を見渡しながら、これから二人でこの部屋で生活するんだな、と思うと、何だか胸が熱くなってきた。感無量だ。思わず涙が出てきた。

 涙まで出るのは、多分疲れすぎたせいだろう。俺は自分のベッドの上に横になった。

 隣のベッドのエランはまだ寝ている。起きた時、さぞ驚くに違いない。

 彼女が起きた時のことを想像しながら、俺は目を瞑った。

 途端に睡魔に襲われて、すぐに眠りに落ちてしまった。


 エランに揺さぶられて目を覚ますと、二人で買った小さなテーブルの上には、いつになく豪勢な料理が乗っていた。引越し祝いということで、今日は奮発したのだ。

 彼女の驚く姿を見るどころか、逆に、彼女に驚かされてしまった。

 ま、それはそれで良いか。楽しければ、全て良しだ!

 幸せと美味しい料理を、たっぷり噛み締めた。

 最高の気分だ。本当に異世界に来てよかったと思う。可愛いけもの耳少女と楽しい晩餐を過ごせるなんて、前の世界じゃ絶対にありえないことだ。

 エランと談笑し、料理に舌鼓を打っていると突然、ノックの音がした。続いて、


 「コーイチという男はいるか?」


 男の声がした。知らない声だ。

 部屋は一間だから、玄関口は見えている。不審に思いつつも返事をした。


 「幸一は俺ですが」


 返事はなかった。代わりに、ドアの下から白い封筒が差し入れられた。

 俺は恐る恐る玄関ドアに近づき、封筒を拾いつつ、ドアをそっと開けてみた。そこにはもう誰もいなかった。

 ドアを閉め、封筒を確認した。封筒には『ハタシジョー』と書かれてあった。ちなみに、この世界にはひらがなとカタカナしかない、多分。

 少なくとも俺はそれ以外の文字を、こっちに来てから見ていない。


 「何ですそれは?」


 エランは小首をかしげ、けもの耳をピクピクさせながら言った。


 「『ハタシジョー』って書いてある」


 「ついに来ましたね」


 「ついにって?」


 「コーイチ様が貴族のお嬢様を裸にしたあの件ですよ、きっと」


 「えっ、マジか……?」


 喉元過ぎればなんとやら、ってやつで、『ジュリエッタお嬢様ストリップ事件』を、俺は今の今まで完全に忘れてしまっていた。

 恐る恐る、封筒を開いてみる。すると、中から一枚の紙が出てきた。それにはこう書かれてあった。




 『ワレ、ジュリエッタ・ハインラインは、サキゴロうけたチジョクをそそぐべく、コーイチにケットウをもうしこむ。アスのショウゴ、わがヤシキに来られよ。』




 なるほど、エランの言うとおり、ジュリエッタお嬢様からの『果たし状』だった。

読んでくれてありがとう!

これからも頑張って書いていきますのでよろしく!

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