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必見!? 女の子を一瞬のうちに優しく脱がせる方法をご紹介! これができれば、スマートさを演出し、なおかつムードを維持したまま(以下検閲削除)

いざコトを始める時、相手を脱がすのに手間取ってしまうことありませんか?

そういうことがよくあるというそこのあなた、そんなあなたに是非、この回を読むことをお勧めします。

 『火炎弾(ファイア・ボルト)』が胸のあたりに炸裂した時、さすがに死んだと思った。

 それだけ強烈な衝撃だった。痛みもある。『火炎弾』を受けた胸と、ぶっ飛ばされた時に打った背中。

 だが、意外にもそれほど痛まない。

 背中の方は、野次馬がクッションになってくれたおかげだと思うが、胸の方はどうしてだろう?

 高速で打ち出された火の玉をまともに受けたというのに、掌で思いっきり叩かれた程度の痛みしかない。

 多かれ少なかれ痛みを感じられるということは、少なくとも生きている証拠だ。


 俺は胸の『火炎弾(ファイア・ボルト)』を受けた辺りに手を伸ばした。

 上着も肌着も焼けてしまったらしい、そこはつんつるてんになってしまっていた。

 胸の真ん中辺りに何かあった。金属質な何か。

 それを手に取り、薄めを開けて確かめてみた。

 それは一ヶ月ほど前に拾った、錆た短剣だった。

 そうだ、俺はこれをずっと持ち歩いていたんだった。

 護身用くらいにはなるかと思って、肌身離さず身に付けていたんだった。


 こんな小さな短剣が俺を守ってくれたのか?

 ちょっと信じられない。信じられないが、そうとしか考えられない。

 『火炎弾(ファイア・ボルト)』は恐らく魔法。

 俺に魔力耐性が無いことは、こっちに来る前に確認済み。

 ということは、この錆びた短剣のおかげで助かったと考えるのが自然だ。

 それに、短剣はもろに『火炎弾』を受けたのだろう、熱を帯びていた。

 ほのかに温かい程度だが……、いや、それにしてはおかしい。

 何やら温度が上がってきている気がする。うん、気のせいじゃない。

 どんどん熱くなっていってるぞ……!?


 その時、グリップに埋め込まれた、赤い石が淡く輝き出した。

 そして次の瞬間、錆びた刀身に火が点った。オレンジにメラメラと燃え盛る炎が。

 炎を見ていると、俺の中でスイッチが入った。

 今まで入ったことのない、未知のスイッチ。

 俺の中でも炎が燃え盛りだした。怒りの炎だ。


 あのクソアマ! よくも()りやがったな!

 こっちは誤解だって、わざとじゃないって言ってんじゃねぇか!

 それをなんだ、問答無用で公開処刑か?

 ちょっと石が当たったくらいでか弱い一平民を嬲り殺しか?

 そんなことは断じて許せねぇ!

 ちょっと生まれが良くて美人だからって調子に乗りやがって!

 それがヤツのやり方ってんなら、俺にもやり方がある。

 ヤツにも火で焼かれる痛さと怖さを教えてやるッ!


 完全にプッツンだ。もう周りもよく見えない。俺の目が唯一捉えるのはあのクソアマだけだ。

 俺は燃え盛る短剣を手に立ち上がった。

 辺りがざわつく。


 あのクソアマは、俺を殺したつもりで、いい気になって背を向けて去ろうとしている。

 その様はまるで、後ろからブチ込んでくださいと誘っているようだ。

 据え膳食わぬは男の恥。

 遠慮なく後ろから荒々しく突き、イカせてやる。

 プレゼントにはお返しがいるだろう。こっちからはあの世までの直通片道乗車券だ。

 俺はクソアマに向かって駆け出した。

 何故か今の俺には、この短剣の扱い方がわかる。

 剣が俺に語りかけ、まるで剣と一体になっているかのような感覚。

 剣の意志が、俺に流れ込んでくる。


 憎いだろ

 難ければ怒れ!

 そのための剣だ!

 剣の炎は怒りの炎だ!

 それをそのままぶつけてやれ!

 正当な報復だ!

 一回は一回!

 目には目を!

 殺意には殺意を!

 炎には炎を!

 やれ!

 突け!

 殺せ!

 燃やせ!


 俺は剣の思うままに従う。剣の意志は俺の意志そのもの。俺が剣で、剣が俺だ。

 剣の炎は俺の怒りの炎。間違っているはずがない。

 短剣の炎が、一層強く燃え盛った。それはまるで炎の刀身だ。

 もはや短剣じゃない。熱く『燃え盛る怒りの剣(ファイア・ブレイド)』と呼ぶべき俺の剣。


 クソアマがハッとなって気が付いた。

 今更遅い。もう剣の間合い。そして、俺は既に剣を振りかぶっている。あとは頭に振り下ろすのみ。

 ヤツに反撃の時間など与えない。ヤツができることは束の間、己の過ちを悔いること、それだけだ。

 俺は剣を振り下ろそうとした、その時だった。あのお嬢様の表情が大きく歪んだ。

 それに見覚えがあった。それはついさっき見た、鞭を打たれていた奴隷と同じ表情。

 それは恐怖の表情だった。


 対して俺はどうだ?

 『燃え盛る怒りの剣(ファイア・ブレイド)』を振り上げる俺は、ついさっき奴隷を鞭打っていたこいつと同じじゃないか?

 今の俺は、こいつと同じ……!

今俺は、とんでもないことをしようとしている!

 こんなものを頭に振り下ろしたら死んじゃうぞ!

 そう思うと、途端に怒りの熱が冷めてきた。正気にかえった。

 が、時既に遅し!

 勢い良く振り下ろされた『燃え盛る怒りの剣(ファイア・ブレイド)』は止められない。

 勢いがつきすぎていた。


 「避けてええええええええぇぇぇぇ!!!」


 俺の叫び――願いは虚しく、『燃え盛る怒りの剣(ファイア・ブレイド)』は振り下ろされた。下ろしてしまった。

 やっちまった!

 俺は恐ろしくて目も開けられない。

 なんてことをしでかしたんだ俺は!

 怒りのあまり、相手を殺すなんて、そんな物騒なこと、なんでやっちゃったんだろう。

 そっと目を開けてみると、目の前が赤々と燃えていた。

 あのお嬢様が火に包まれていた。

 俺は自分のしでかしたことの重大さに、半ば放心しかけていた。


 しかし、燃え盛ったのはその一瞬だけで、まるで蝋燭の火が風にかき消えるように、フッと、彼女を包んでいた炎が消えた。

 炎の後に残されたのは、全裸のジュリエッタお嬢様だった。

 彼女はキョトンとした顔で俺を見ていた。

 多分俺も同じような顔で彼女を見ていただろう。

 多分そこにいた誰もが、目の前で起こった現実を理解できなかったに違いない。

 とても静かだった。

 野次馬の声もなければ、足音もしない。聞こえるのはどこかで鳴いた鳥の声くらいだ。

 まるで時間が止まってしまったようだ。


 ジュリエッタお嬢様の白い顔が徐々に赤みを帯び始めた。

 まるで体温計の温度が上昇するように、首筋から徐々に頭にかけて。

 顔全体が真っ赤になった瞬間、


 「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


 ジュリエッタお嬢様の絶叫が静寂を切り裂いた。

 身体の大事なところを、小さな手で隠すジュリエッタ。

 主人に慌てて駆け寄る従士。

 その様子をポカンと見つめる奴隷の女の子。

 面白がる野次馬たち。

読んでくださりありがとうございます! ブクマしてくれるともっとありがたいです!

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