年下の女の子にされるがまま!? 女の子から唇を近づけてきたら、もう目を瞑るしかないね。
イチャイチャは続くよ。
「コーイチ様……、大丈夫ですか?」
「ん、まぁ何とかね……」
仰向けに倒れたが、大して痛くもない。
問題は眉間を打った『何か』だ。一瞬星のようにキラリと輝いた『何か』。
眉間を突いた痛み方から察するに、固く尖った『何か』。
「どうかされましたか? どこか痛むのですか? 私のせいで顔を打ってしまったんですか?」
眉間をさする俺を、エランは心配そうに見守る。
「大丈夫。君のせいじゃないよ。君を地面から引き抜いた時に、石か何か、尖った物が一緒に飛び出したみたいだ。で、それが俺のここに当たった」
俺は自らの眉間を指差して示した。
「よく見せて下さい」
エランの顔が近づく。キスの距離感。相手は小さな女の子といえど、女は女。俺は思わず照れてしまった。
照れてのけぞろうとする俺の頭を逃さないように、エランの手が俺の頭をがっしりと掴んだ。
俺の人生史上、かつてない異性との急接近。
エランの大きな目が俺の目を、もとい、眉間の辺りを見つめ、柔らかな鼻息が顔にあたってくすぐったい。
ドキドキして俺は息もできない。興奮のあまり荒い鼻息を、エランの顔に吹き付けるようなことだけは避けたい。そんな格好悪いマネはしたくない。
「ちょっと赤くなってますね。痛いですか?」
エランは俺の眉間にそっと指を這わせた。
もうほとんど痛みは引いていた。指を当てられても、痛みが増すことはなかった。
そもそもそれどころじゃなかった。
痛むのはそこじゃなくて、今は胸だ。ドキドキが強くて、胸が苦しかった。
鼻息が荒くならないように静かに呼吸をするのも、ドキドキに拍車をかけている気がする。
「痛くないよ」
息が当たらないよう、静か~に喋る俺。
「それは良かったです! それじゃあ、きっとこれですぐ治ります」
そう言うと、突然エランは唇をさらに近づくけてきた。もうくっついてしまいそうな距離だ。胸のドキドキがさらに高まる。
これは、ひょっとして『そういうコト』か!?
異世界にきてすぐに、現地人と『そんなコト』になってしまうのか!?
いやいや、ダメだろ!
これがキレイな年上のお姉さんとかなら、ノープロブレム。
しかし相手は小さな女の子。
年齢は詳しく聞いていないけど、見た感じ俺よりかなり年下に見える。
元の世界でいうところの小学生程度の小ささ。
そんな子とあんなことになってしまうのは、ちょっと犯罪的じゃないか!?
「ちょっ、ちょっとそれは――」
「ジッとしててください。すぐ終わりますので……」
俺の頭を掴むエランの手に、更に力が加わる。
ガッチリとホールドされると、もうどうにでもなれ、という気になってくる。
初めてが自分よりかなり年下の子にリードされて……、なんて思ってもみなかった。
俺は目を閉じた。観念し、その後の展開を待った。
眉間に柔らかくて温かいものが触れた。
なんだそっちか。俺の期待はハズレた。まぁハズレて良かったんだけど。
が、安堵も束の間、俺の眉間に触れたそれは、ペロペロと音を立て始めた。
そう、それは唇じゃなく、舌だった。エランの舌が俺の眉間をナメていた。
「ななな、何をっ!?」
「あんっ。コーイチ様、動いてはいけません。今せっかく治療しているのですから」
「治療? これが?」
「治療というのは大げさな表現かもしれませんが、私達、『頭に耳のある人間』の舌には、癒やしの力があるんです。ですから今しばらく、ジッとしていて下さい」
なるほど。さすがは異世界人。ただの人間の俺には無い、ファンタジーな力をお持ちというわけだ。
そう言われては、大人しくするしかない。
でも、これはこれで中々……、なんというか、いやらしいというか、淫靡というか、イケナイことをしているような気がしてくるのは何故だろうか?
「はい、終わりました! 多分これでもう痛まないはずです」
エランはサッと俺から離れ、ニッコリ笑って言った。




