うんとこしょ、どっこいしょ。コーイチはエランを抜こうとしますが、それでもエランは抜けま……抜けた!
イチャイチャします。
「コーイチ様、もう出られそうです」
エランは言って、自由になった両手を地面につき、自らの下半身を引き抜こうとした。が、ダメ。びくともしていない。
「すみません。無理でした」
また、頭と耳が垂れる。
「大丈夫大丈夫。俺が手を貸せば抜けるかな?」
俺は彼女の背後に回り、屈んだ。
「ちょっと両手を上げて」
「こうですか?」
俺の言うままに、エランは両手を上げた。
「ちょっと失礼」
俺はエランの脇に手を入れ、脇の付け根をがっしりと掴んだ。
「あっ……ん……」
やけに色っぽい声を漏らすエラン。
歳不相応な吐息混じりの声に俺は、変なところを触ってしまったのかと思って、さっと手を離した。
「ご、ごめん! なんかマズかった?」
「い、いえいえ! ちょっとくすぐったかっただけです」
「そ、そっか。決して変な意味じゃなくってさ、君を引き抜こうとしただけだから……」
「もちろんわかってます。さぁ、どうぞ」
エランは再び両腕を上げた。
また変な声を上げられやしないかとちょっとドキドキしながらエランの脇に手を入れる。
彼女の脇下に触れた瞬間、やはりくすぐったいのか、エランはピクリと身体を震わせた。
ただそれだけだった。俺は安心して彼女の脇の付け根を掴んだ。
「痛くないか?」
普段女の子の身体に触れる機会なんてなかったから、力加減がわからない。
「大丈夫です。ちょっとくすぐったいだけで」
「それは……、ちょっとだけ我慢してくれ。それじゃ引き抜くぞ。全身に力を入れてくれ」
「はい!」
ぐっ、とエランの身体がこわばる。
「痛かったら言えよ。それじゃ、いくぞ!」
俺は力強く、それでいてゆっくりとエランの身体を地面から引き抜こうと踏ん張る。
かなり地面に食い込んでいるらしく、そう簡単には抜けない。
だけど、抜けなくもなさそうだ。
徐々にだが、もりもりと土が盛り上がり、彼女の腰骨の辺りが見えてくる。が、そこで何かに引っかかり、そこから一ミリも引き抜けなくなった。
「んっ……! あっ……!」
また色っぽい声を上げるエラン。
突然そんな声を上げるもんだから、俺は力も気も抜けてしまった。
一旦、エランから手を離した。
「今度はどうしたんだ?」
「な、何か、何か硬いものがお尻にあっています。コーイチ様が持ち上げようとすると、それがお尻に食い込んで、何かとっても変な気持ちです」
こちらを向いたエランの顔が赤かった。
ほんのちょっぴり胸がドキドキしていた。
まだ小さい女の子の上げた声に、つい変な気持ちになってしまった。バツが悪くて苦笑いするしかない。
イカンイカン。こんな小さな子に欲情したらロリコンだぞ。平常心平常心。
深呼吸して、夜のひんやりした空気を胸一杯に満たす。すると、心が落ち着いてくる。
「その硬いものってなんだか分かる?」
「ちょっとわからないです」
「そっか」
俺は再びエラン身体を掴んだ。そして今度はさらに慎重に、彼女の身体を引っ張ってみる。
「痛いか?」
「いえ、痛くはないんですが、なんか、お尻の、その、間に食い込む感じで……」
「痛くないならちょっと強引にでも引き抜こうかと思ったけど、食い込むんじゃ危ないかなぁ」
引っかかりが取れないかと、エランの身体を上下左右にゆっくり揺さぶってみる。
「あんっ! あっ! ちょっとズレました! これなら大丈夫かもしれません!」
「お、じゃあ再開するぞ。痛かったら言えよ」
「はい!」
「いくぞぉ!」
腰を落とし、しっかりとエランの脇の付け根を握り、全身全力でゆっくりと引き抜く。
エランの言った通り、いい感じで抜けてくる。と思った矢先、やっぱり引っかかる。
それでもエランが何も言わないので、止めることなく引き抜き続行。
痛くないのなら、多少手荒になっても仕方ない。
「あっ、もう少し、もう少しだと思います!」
「本当か!? あんまり手応えないんだけど!」
全力だ。歯を食いしばる。顔面が熱い。
こんなに必死に本気に筋肉を使ったのは、いつぞやの体育祭の綱引き以来だ。
「あとはお尻なんです。ちょっとそこが引っかかってて、そこを乗り越えたら――」
「これはさぞかし大物だな!」
「お、おっきいお尻の女の子はお嫌いですか……?」
「えっ、いやいや! そんなつもりで言ったわけじゃ――」
瞬間、スポッと勢い良くエランの身体が地面から飛び出した。
『たかいたかい』の格好で高く持ち上がるエラン。
飛び散る土。
勢いあまりまくって大いにのけぞる俺。
エランの後頭部の向こうの星が一つ、一際強く光った。
かと思えば、その星がスッと俺の顔面に向かって落ちてきた。
「あっ……」
と思った時にはもう遅い。落ちてきた『星』は、俺の眉間を打った。
それがダメ押しになって、のけぞり許容角度を大きく超えた俺は、仰向けに倒れた。
倒れ際に、エランを怪我させちゃいけないと、彼女を必死に抱きとめた。




