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けもの耳少女エランが仲間に加わった! 親愛の握手は土のザラザラとした感触だった。

ネット小説大賞締め切り間近! スパートかけるぞ!

 「私はずっと奴隷として生きてきました。奴隷には持ち物なんてないんです。私自身が誰かの持ち物なのですから。この服も、自分で買ったわけじゃありません。私を高く転売するために、見た目を取り繕うために押し着せられただけですから。ですから、私には命の恩人であるコーイチ様に差し上げられるものといったら、自分自身しかないのです。コーイチ様、どうか私をおそばに置いて下さい。もし無理だとおっしゃられるなら、私、もう死ぬしかありません」


 「なっ!?」


 「だってそうじゃないですか。命の恩人に恩を返せないとあったら、それは一族の恥です。死んで詫びる他ありません。それにどのみち、子供の私が一人で生きていけるはずないですから……」


 「わ、わかったわかった! じゃ、こうしよう! 俺と君はしばらく一緒にいよう。俺としてもこっちに来たばかりで、君のようなしっかりした子にいてくれればありがたい。それだけで充分恩返しになる。でも奴隷としてじゃない。俺は君のことを奴隷だとは思わない。俺は別に奴隷なんて欲しくないし、奴隷なんて良くないことだと思うからね。それでいいかい?」


 「はい! おそばにおいてもらえるなら何でも! でも、ちょっぴり不安です……。おかしいですよね?」


 エランは困ったような笑顔を浮かべた。


 「ずっと奴隷として生きてきましたから、ついさっきまでの自分が、何だか急に消えてしまったような気がして――できることなら自由の身に解放されたいと普段から思っていたはずなのに、今度は奴隷じゃなくてもちゃんとやっていけるのかな? って思うんです。これっておかしいですよね?」


 エランの言葉で、俺は元の世界で見たニュースを思い出した。

 過労で心も身体も病んだブラック会社の社員が、やっとの思いで会社を辞めたというのに、それはそれで不安を感じてしまうという話をテレビでやっていた。

 そりゃそうだ。自分を取り巻く環境が大きく変われば、誰だって少しぐらいは不安にもなるだろう。

 たとえそれが大局的に見れば、良いことだったとしても。

 俺だって同じだ。俺の場合は環境どころか世界が変わっているから、不安だらけでしょうがない。


 「いや、全然おかしくないよ。俺だって同じさ。こっちは魔法がある世界って聞いて、最初のうちはわくわくしてたけど、いざ来てみていきなり怖いオッサンに襲われたから、おっそろしい世界に来てしまったなぁ、って今はもう不安だらけだよ。だから、不安のある者同士、仲良く支え合っていこう」


 俺はエランに右手を差し出した。握手のつもりだった。が、エランは俺の手を見て、キョトンとしていた。


 「あ、こっちは握手って習慣ないか」


 「すみません。アクシュ? ってなんですか?」


 「別に謝ることじゃないよ。世界が違うんだから文化も違うよなぁ。俺のいた世界では、親愛のしるしに、お互いの手を取るんだよ」


 とは言っても、俺自身ほとんど握手なんてしたことなかった。

 俺の地元では全くもってメジャーじゃない。


 「こんな感じに」


 俺はエランの、土まみれの小さな右手を手に取り、軽く握り締めた。土まみれはお互い様だ。

 その手はひんやりとしていて、ザラザラと荒れていた。苦労を重ねてきた手だ。しかし力強く、血色は悪くない。健康的だ。

 エランも俺の手を握り返してきた。俺達はしっかりと握手を交わした。


 「手、大きいですね」


 エランはニコニコして言った。

 俺の手をしっかり握り締め、離す気配もないから、どうやら握手を気に入ってくれたようだ。


 「そりゃ、君よりちょっと年上だからね。これからよろしくな、エラン」


 「はい、こちらこそよろしくお願いします! コーイチ様!」


 「様はいらないよ」


 「すみません、コーイチ様」


 「まだ付いてる」


 「す、すみません、コーイチ様……あれ?」


 「よ、呼びづらいか?」


 「すみません、どうも様が付かないとなんだか……」


 「じゃ、まあいいか。こっちの世界じゃ俺の名前は言いづらいみたいだし、慣れたらでいいよ」


 「すみません……」


 エランは俯いた。しゅん、と気落ちすると、頭の耳も垂れ下がる。それが可愛い。

 こんなに可愛いのが、どうして迫害の対象なのか、理解に苦しむ。


 「謝らなくていいよ。謝るようなことじゃないよ。じゃ、ちゃっちゃと君を掘り起こそうか」


 それから五分ほどせっせと掘り続けると、腰から上を完全に掘り出すことが出来た。

 左腕も完全に掘り出し、両手が自由になった。ここまで来ると、もう一息だ。

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