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阿鼻叫喚火の海祭り開催!

そなたにゾエが救えるか?


 頭のどこかで、冷静な俺がそれを拒否する。そんなことは無理だ、撹乱と救出を一人で二つ遂行するのは不可能だ、と救出を決定した俺を制止しようとする。


 だが、誰のせいでゾエがあんなことになってる? 言うまでもなく俺のせいだ。できるかできないじゃなくて責任の問題なんだ。ゾエを救出せずに見捨てるなんてのは、今の俺にはありえない。


 「ゾエ、待ってろ、今助けてやる」


 俺は『黒炎剣ファイア・ブレイド』を構え、ゾエに向かって走り出した。

 狙いは『仮面』。あれが怪しいのは一目瞭然。とりあえず無理矢理脱がせてみるか。破壊はともかく、脱がせるだけでは死ぬことはないだろう。


 ゾエは手を掲げ、『電撃弾ライトニングボルト』を撃ってくる。その動作、やはりいつものゾエじゃない。妙に機械的だ。

 俺はそれを『黒炎剣ファイア・ブレイド』で受け止める。受けたマナを瞬時に変換し、『紫光剣ライトニング・セイバー』を起動する。

 『紫光剣ライトニング・セイバー』で『電撃弾ライトニングボルト』をいなしながらあっという間に距離を詰める。

 距離を詰められているのに関わらず、ゾエは逃げたり慌てたりしない。やはり、機械的だ。いつものゾエならもっと慌てふためくはずなのに。


 もう俺とゾエの距離は十メートルを切った。俺はそこであえて足を止め、『電撃弾ライトニングボルト』を撃ってくるのを待った。タイミング的にそうするのがいいと思った。

 案の定ゾエは撃ってきた。それを『紫光剣ライトニング・セイバー』でいなし、全力で突進。ゾエが次弾を撃つまでには時間がある。


 ゾエの懐に入った。ゾエはまだ撃てない。俺は『紫光剣ライトニング・セイバー』を解除し懐にしまうと、ダッシュの勢いをそのままにゾエに抱きつくようにタックルした。

 地面に倒れるゾエに馬乗りになり、俺は仮面に手をかけた。すると、


 バチッッッ!!!


 「いっつっっーーーーー!!!!」


 ――バチッときた!


 仮面に電気が走ってる。それも静電気どころじゃない威力の。俺の指先からは軽く煙が立ち上り、薄皮がちょっぴり焦げてしまった。


 俺は慌ててゾエから離れた。ゾエの手に、マナが集中しているのを見たからだ。

 直後、ゾエが撃ってきた。俺は懐から錆びた短剣を出し、それで受ける。そして『紫光剣ライトニング・セイバー』を起動する。


 起動したはいいが、どうすればいいのかわからない。周りに敵が集まり始めていた。だが、そいつらはさっきの俺の戦いぶりを見たせいか、ある程度距離を保ち、少なくとも今すぐ攻撃を仕掛けてくる気配はない。

 だからといって悠長に構えてはいられない。俺がゾエに手こずってると判断されたら、そこに乗じてくるのは目に見えている。


 時間はかけていられない。となると、


 力ずく、腕ずくでやるしかない! 考えてる時間なんてない!


 ゾエから放たれる『電撃弾ライトニングボルト』をいなしつつ、距離を詰める。もう一発飛来する『電撃弾ライトニングボルト』をかわすと、俺はゾエの背後へ回り込んだ。

 後ろから羽交い締めにし仮面に手をかける。


 バッッチンンッッッ!!!


 「いっっっだぁッ!!」


 かけた手に仮面から流れる電流に弾かれる。

 俺はビリビリと痺れる手をぷらぷら振りつつ、ひとまず距離を取る。ゾエが再び射撃の構えを見せたからだ。至近距離で『電撃弾ライトニングボルト』を受けたくはない。


 素手じゃ駄目だな。となると、あとはこっちか。

 俺は左腕にチラッと目を落とした。


 『奥の手』を使うか。


 再びゾエに突進。

 またまた放たれる『電撃弾ライトニングボルト』をいなすと、俺は『紫光剣ライトニング・セイバー』を右手に持ち替えた。

 そして、空いた左手の真の力を解放する。


 頼むぜ【黒炎龍の義腕ドラゴンズアーム】。


 俺の左腕はみるみるうちにどす黒く巨大化し、鋭い爪の生えた異形となった。

 この怪物の手で仮面に触れる。


 バチバチバチバチバチバチ!!!


 仮面から電流が流れ、俺の左腕を襲う。痛みが走る。だが、さっきほどじゃない。やれる。確信した。

 だが、かなり力を入れているにも関わらず、仮面は外れる気配がない。


 くそっ、やっぱり魔法的な手段じゃないと駄目なのか……!?


 電撃に耐えつつ仮面と格闘していると、目の端に数人の敵が得物を持ってこっちに突進してくるのが見えた。

 俺は右手の『紫光剣ライトニング・セイバー』を敵へと突きつけた。


 「来れば殺すッ!!!」


 警告してやった。気が立っていたせいで言葉がキツくなったが、かえってその方が効果があったかもしれない。敵は足を止め、やがてジリジリと後退していった。


 そのときだった、俺の左腕にまた別の痛みが走った。何かが左腕に当たって地面に落ちた。


 矢だった。左腕で良かった。もし生身の部分だったら――、


 そう思うと、途端にムカついてきた。


 このクソ魚人共! 俺を殺そうとしやがった!


 もうムカついた。こっちが優しくしてやりゃつけやがりやがって、もう我慢ならない。

 俺は一旦ゾエから離れ、剣を左手に持ち替えた。そして『黒炎剣ファイア・ブレイド』を起動した。


 「調子に乗るなよアホ共がッ! あんまりナメてると焼き魚にしてやんぞッ!」


 『黒炎剣ファイア・ブレイド』に力を込める。刀身は燃え盛り、黒い火柱となる。俺はそれを水平に薙ぎ払った。

 近づかせないための威嚇のつもりだった、だが――、


 「あっ……!」


 怒りのせいか、黒い炎は俺の予想を超えて激しく燃え盛り、薙ぎ払った先にいた敵を容赦なく包み込んだ。

 辺り一帯が火の海になった。一瞬にして周囲に熱気溢れ、異様な臭気が満ちた。焦げる匂い、それも生物の……。


 阿鼻叫喚の地獄絵図だった。至るところで炎から逃げ惑う魚人。いや、逃げているならまだいい。火がついて走り回る者、もはや地面に倒れ伏している者さえいる。

 俺は自分が引き起こしてしまった現実に、目眩を覚えた。吐き気すらこみ上げてきた。


 だけど、これは奴らの自業自得でもある。奴らが俺に仕掛けてこなければ、そもそも戦争を仕掛けてくるほうが悪いんだ……。俺は自分を守っただけだ……。


 自分に言い聞かせた。そうすることで自分を保った。自分のやるべきことを見失わないためにも。

 今はゾエを救うのが先決だ。

 ゾエの方へ振り向くと、


 「ああッ!?」


 仮面がめちゃくちゃ燃えていた。

 そんでもってさっきからの機械的動作とは打って変わってじたばたしていた。仮面を必死に剥がそうとしている。


 「ちょ、ちょっとなんなのよコレー!!!???」


 仮面をかぶってから、初めてゾエの声を聞いた。

やりすぎた……!

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