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電光、再び。嵐の中で相まみえるは仮面。

攪乱作戦中。

 だが、敵もさるもので俺の威圧に屈することなく得物を構えた。やる気まんまんだ。

 ところが、こいつらの面のどこをどう見ても強そうには見えない。どいつもこいつも戦場の興奮に呑まれていきり立っているに過ぎない。アルファードのような猛者もさの余裕とは程遠い。

 実力のないヤツほど、得てしてそうなってしまう。その上、こいつらはどうも功名心に飢えているようにも見える。


 負の相乗効果だ。そのせいで俺との圧倒的な実力差を理解できていない。


 そんなことがわかってしまうほど、俺もこの厳しい世界の厳しい修羅場をくぐってきた、ということになるんだろうな。慣れって恐ろしいもんだ。


 そう感慨深く思っていると、眼前の海人がその手に持った槍の穂先を俺に向け、意気盛んに突進してきた。


 「うおおおおあああああ!!!」


 すごい雄たけびだ。だが、戦いにおいてそれは無用だ。そんなのは自らの恐怖心をごまかしているに過ぎない。ビビってます、そう自ら宣言してるようなもんだ。


 (まずは小手調べといくか)


 敵は猪突猛進、槍を突き出してきた。意外に、しっかりした突き。だが、アルファードに比べれば月とスッポン。亀とうさぎだ。

 それをかわし、同時に軽く『黒炎剣ファイア・ブレイド』で槍を薙いでやった。触れた部分は一瞬で燃え上がり、焼け焦げ、寸断された。

 海人は槍を取り落した。さすがに得物が燃えていてはどうにもならない。さっきまでの鬼気迫る表情はどこへやら、呆然とし、目元に恐怖がありありと浮かんでいる。


 「失せろ。死にたくないのならな」


 言ってやった。


 「ヒッ」


 海人はしゃっくりにも似た、小さな悲鳴を喉奥から鳴らし、尻尾を巻いて逃げ出した。


 さて、ここまではっきり実力差を見せてやったんだ。あとの連中も恐れをなして逃げ出しているはず……、と思ったらそんなことはなかった。

 連中はかえって意気軒昂。逆にやる気に火をつけてしまったらしい。ひょっとしたら、敵が強ければ強いほど、それを倒せばもらえる恩賞が大きくなるとか? だったら今のは失敗だったか。


 ま、それは後で考えればいいか。今はただこいつらを叩きのめして生き残ることが先決だ。


 奴らはやる気を見せたが、だからといって襲ってくる気配はみせなかった。さっき抜け駆けしたのがあっさりやられたのを見て警戒してるのだろう。


 功名も欲しいが命も惜しい、というとこか。


 だが、どっちつかずはよくない。中途半端は命取りになりかねない。やるならやる、やらないならやらない、何事も徹底的にやらなきゃいい結果はでない。

 これは俺が何かで観たか、読んだかして学んだことだ。


 だから俺は徹底的にやる。

 来ないならこちらから行ってやる。

 この包囲を突っ切って、正門から帰ってやる。


 俺は『黒炎剣ファイア・ブレイド』を握りしめ、敵に向かって駆けた。

 さすがに、向かってくるとあっては敵もそれなりに対応する。でもあくまでもそれなりだ。槍やら斧やら剣やらの穂先を俺に向けるはいいが、それらの使い手の顔は俺の突撃にビビリまくっている。

 いくつもの敵刃が、拙劣せつれつに繰り出された。


 正直言って、笑っちゃうほど相手にならない。遅すぎる、下手すぎる、無駄すぎるの三重苦のショボい攻撃。


 俺は『黒炎剣ファイア・ブレイド』の出力を上げ、燃え立つ刀身を太らせ一薙ぎ、一瞬にして奴らの得物を溶かし、消滅させた。


 「どけッ!!! 死にたいのかッ!!!!」


 一喝。すると、奴らは潮がひくように道を開ける。モーゼになったような気分だ。


 俺は正門へと続く道を駆ける。だがなかには、ビビったと見せかけて横槍を入れてくるヤツもいる。その都度、敵の得物を『黒炎剣ファイア・ブレイド』で消滅させてやる。前に立ち塞がろうとする愚か者には、殺しはしないが痛い目にあってもらう。拳と脚で、ときには身体全体で、殴る蹴るタックルでわからせてやる。


 あくまでも目指すは正門のみ。まともに戦っては勝ち目がない。あくまでも俺のやることは撹乱であり、目標は生還だ。


 『黒炎剣ファイア・ブレイド』をしゃにむに振り回し、敵を蹴散らし、ひたすら駆けて、ようやく正門へと続く道へと出た。

 正門は高所にあって、曲がりくねった坂を登らなければならない。しかもその道中には敵がひしめいている。


 (危険な道中になりそうだ……!)


 だが、やめるという選択肢はありえない。俺は坂への一歩を踏み出した、

 そのときだった。

 その踏み出した足が、地面の凹みに引っかかり、躓いた。


 「おわっ……!?」


 思わず前につんのめる。勢いのままに片手を地面にぺったりとつけた。

 なんとか無様で危険な転倒を回避した、

 と思った直後、

 屈み、地面に手をつく俺の頭上を青白い閃光が走った。


 「うおぅっ……!?」


 突然のことに驚いたが、その正体はすぐにわかった。『電撃弾ライトニングボルト』だ。それもよく見知ったやつだ。いや、それどころかかつて俺は、これを嫌ほど味わった。


 (ゾエ……!)


 振り向くと、そこには仮面のゾエがいた。

 どうやら、プランの変更が必要なようだ。

 といっても、大した変更じゃない。一つイベントが挿入されただけだ。

 ゾエの救出。これだけだ。

ゾエ救出ミッション追加。

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