所持品は無し。スキルもたった二つだけ。やることねーな、なんて寝転がってると、何やら足音が……。
今回も短い。
次に【所持品】をタップする。
画面が切り替わり、アイテムアイコンが並んだ。アイコンはさっき現在装備で見た、服の類しかなかった。
一応ポケットを確認してみた。何も入っていない。ハンカチ一枚すら入っていなかった。
まあ、装備や所持品には何の期待もしていなかったさ。そんなものはわざわざステータス画面で確認しなくてもわかることなんだし。
最後の希望の砦【スキル】を恐る恐るタップする。
『スキル画面』に切り替わる。
【オーラスキャン】
【神運】
二つのスキルがあった。
オーラスキャンはこっちに来る前に女神様が授けてくれたもので、説明も受けていたから知っているが、【神運】とはなんだろう?
このスキルの説明は受けた覚えがない。女神様の説明忘れだろうか?
何やら忙しいらしいから、その可能性は大いに有り得る。
【神運】をタップする。スキルの詳細が表示された。
【神運】
固有スキル。パッシブスキル。
世界で一番運の良い者だけに与えられるスキル。
神に愛され、神に選ばれ、神に守られているかのごとく、いついかなる場合にもいかんなく幸運を発揮することができる。
かいつまんで言えば、常時運が良い、ということ。
なんだか胡散臭い説明だ。
だっておかしいじゃないか。常時運が良いなら、何故俺は今こんな場所で困り果てなければいけない?
今の俺の境遇は、全くもって運が良いとは言えないんじゃないか?
スキルの効果に疑問を抱きつつ、【オーラスキャン】をタップする。
【オーラスキャン】
固有スキル。アクティブスキル。
人や物を対象とし、それらのステータスを表示する。
精度にはムラがある。そこは経験で補おう。
物にも使えるってのは初耳だ。ちょっと試してみよう。
「オーラスキャン……!」
自分の靴を見つめながら、ちょっぴりカッコつけて言ってみた。
ジョジョとか、超能力バトルものでは自分の能力をよく口に出す。
一度ああいうのがやってみたかったのだ。これはきっと男の子なら誰だって一度は思うことだろう。
すると、靴のステータス画面が開いた。
そこには、さっき現在装備画面で見たものと同じ文章が表示されていた。
なるほど。これは便利かもしれないぞ。
きっと異世界には俺の知らないものが多々あるはずだ。『異世界の知識』という分野では、俺は赤ん坊も同然。
見たものが一体どんなものなのかわかるスキルは、かなり重宝するはずだ。
これが有ると無いでは異世界生活の難易度が大きく違うだろう。
オーラスキャンはきっと役に立つスキルだが、残念ながら現状はあまり役に立たない。
ざっと周囲の闇を見回しても、オーラスキャンしてみるほどのものは何もない。
「夜が明けるまでジッとするしかないか……」
一人ごちて、その場に座り込んだ。気疲れしていた。思い切って地面に仰向けに寝転んでみた。
地面は少しひんやりとしていたが、不快なほど冷たいというわけでもなかったので、そのまま星を眺めることにした。
さすがに眠ろうとは思わなかった。
こんな状況で眠れるやつは、よっぽど精神がタフなヤツか、もしくはナマケモノくらい鈍いヤツかだ。
そうしていると、遠くから何やら音が聴こえてきた。
それが聴こえると同時に、辺りの自然のささめきが少しトーンダウンした。
おかげで、遠くからの音がやけに耳についた。
徐々に近づいてくる。
近づくにつれ、音が鮮明になる。
リズミカルだ。テンポがある。
足音か?
多分足音だ。いくつもの足音。
足音の他にも何か別の音も混じっている。でもそれは何だかわからない。
俺はそっと身を起こし、音の方を見た。
周囲は未だ暗く、音のする方も闇だ。暗い闇の中、音のする方へ俺は一歩、また一歩とゆっくり踏み出した。