自称ゲームの神様
気がつけば、そこは見知らぬ世界だった。
見渡す限り白い世界。それ以外は何もない孤独な世界だ。
これは夢なのか。
間違えてメール画面を開いた瞬間、眩しい閃光が放った事は覚えている。
もしかして、その衝撃で気絶してそのまま、寝てしまったのか。
試しにほっぺたをつねってみた。夢なら痛くないはず。
「痛!」
思いの外痛かった。
「夢じゃないよ。」
ああ、やっぱ夢じゃないんだ……って今の声は!?
「やっほー!」
「うぉ!?」
気づけば目の前に少年がいた。アニメのイラストが書かれた服装を着ており、英語でアイラブゲームと書かれたキャップの深い帽子をかぶっていた。
声は少年だが、見た目は少女にしか見えない。もしかして、ボクっ娘とか
「僕は男だよ〜。」
うん、やっぱり男だったね。女の子があんなオタクな服着るわけないか。
というか、こいつは誰だ。なぜ、ここにいる。
もしかして、脳内が勝手に作り出した妄想なのか。
それが、可愛ければ男の子でもいいなんて俺ってそこまで落ち込んでたのか?
やっぱ、ギャルゲーばっかやってるからなのか……うーん、そろそろRPGに乗り換えた方がいいのか。
「あははは!!君は面白いね。」
腹を抱えるほど大爆笑する少年。
「というか、お前は誰だよ……」
爆笑する少年を目の前に呆然と眺めることしかできない。
「あ、ごめんごめん。僕はアラタっていうんだ。よろしくね、荒川疾風君。」
やっと落ち着いて、自己紹介をしてきた。
「君のアカウント見たよ。いやー、あのゲームを1日で攻略するなんて凄いね。」
あのゲームというのは、寝る前までプレイしていた、風香連想という人気ゲームのHD版である。
正確には、一人のヒロインを攻略しただけだからやっとスタート地点に立ったようなものだ。
「僕はまだ図書館編までしか行ってないんだよね〜。」
ほぅ、あのゲームを図書館編まで進めていたとは、かなりのやり手だ。あそこはストーリを住める点ではかなり重要な点だから慎重にやることだな。
まぁ、そこまでは序盤。ここからが始まりなんだよなあのゲームは。
「まさか、ゲームの神様である僕を差し置いて下界の人間がクリアーするなんてね〜。」
悔しがるアラタ。
ん、今こいつなんて言った?
「ゲームの神様って言ったんだよ。まぁ、元は電子機器の神様だったんだけどいつの間にかゲームの神様になっちゃったんだ。」
「ゲームの神様?元電子機器の神様?」
状況がイマイチわからないぞ。ただでさえ、メールの事で困惑してるのに突然出会った少年に「僕は神様だ!」なんて、発言されても何を信じていいのかわからない。
「まぁ、そうだよね。取り敢えずお茶でも飲みながら話でもしようよ。」
気がつけば、テーブルと粗茶が置かれていた。
ここは正直にもてなしを受けることにした。
*************
「成る程、ここは神界って場所のか。」
お茶を飲んで、少し落ち着いたのを確認したアラタは説明を再開した。
未だに信じられないが、ここは正直に現実を受け止めることにした。
「うん、そうそう。やっと信じてくれたんだね。」
ある程度な
「もう、つれないなー」
可愛らしい仕草でプンスカ起こるアラタ。
ノ○ラの唯一神さんを思い出したよ。
「うん、それ知ってるよ。でも、あれ空想。でも、僕は本物の神様だからね。」
多分、こいつの格好が唯一神さんをモデルにしてるのは間違いないな。
「だって、かっこいいんだもん。僕達の世界にはファッションっていう概念がないからね。ほら、見てよこの服。」
渡されたのは白い布のような服と花冠。
よく映画とかでギリシャ神話の神様とか天使がこんなのを着ていたな。確かに、これはダサいな。
「この服の方が僕に似合っていていいんだよね〜」
くるりと一回転するアラタ。
確かに、こんなうっさんくさい服を着て神様とか言われても詐欺師にしか見えない。
その点、今のアラタの格好は親近感が湧くしちょっとだけ信じてみたり。
「うんうん、そうだよそうだよ。君は本当にわかってくれてて嬉しい。議会のジジイ共に教えてやりたいよ。」
いや、それは君だからの話。もし、おっさんだったらさっきの服の方が威厳があっていいと思う。
ちょいワルオヤジとかヤクザの格好で来ても困しな。
「あははははは!確かにゼウスとかポセイドンがそんな格好したら笑うしかないね。」
疾風の思想にまた爆笑するアラタ。
気づくのが遅すぎたが、こいつは俺の心を読めるようだ。
やっぱり、神様だというのは本当みたいだな。
「で、なんでお前は俺をここに連れてきたんだ。」
笑うアラタを差し置いて、真剣な眼差しで質問する。
空気を察したのか、アラタも笑うのを止め真剣な表情になった。
「僕が君を呼んだのは理由があるんだ。」
なんだが、ラノベみたいになってきた。もしかして、異世界に転生して世界を救って欲しいとかか?
「これを見て欲しい。」
そう言って、アラタが取り出したのはDVDケースのような物。
「これは……」
疾風はそれを受け取り、まじまじと見つめる。
中身を開けるとゲームカセットが入っていた。
「それは、とある理由でお蔵入りになったゲーム。蒼穹恋歌っていうゲーム。君が好きな恋愛シュミレーションゲームだよ。」
ギャルゲーな。
「ゲームの神様である僕も、そのゲームだけはどうしてもクリアー出来なくてね。不本意だけどゲームの終わりを全部調べたら……」
なんだか、急に空気が重くなってきたぞ。なんだ、このゲーム相当やばいのか!?もしかして、呪われたゲーム?プレイしたら死んじゃうとかやめてよ、?
「ハッピーエンドが無い、クソゲーだったんだよ!」
疾風はそれを聞いてずっこけてしまった。
そもそも神様からクソゲーという単語が出てきたのも驚いた。
ハッピーエンドの無いギャルゲーか。それは確かにクソゲーだ。
少なからずともどんなギャルゲーにもハッピーエンドは必ずしも存在する。
一時、スクール○イズや日暮○しなどバットエンドが強烈なヤンデレ系シリーズがブームになった時もあった。
きっと、それに乗っかって作ったみたいだけど、完成する前にブームが終わって打ち切りになったんだろう。
それならまず、ハッピーエンドから造れよと疾風は思うのであった。
「うん、僕もそう思うよ。」
自称ゲームの神様も共感しているようだ。
「自称は余計だよ。」
はいはいわかりました。神様(仮)
「なんか、発音おかしくなかった?」
「気のせいです〜!」
「僕の言い方を真似しないで!どっちが神様かわからないよ!」
冗談冗談。これ以上は可哀想だからやめておこう。
「で、このゲームがどうだっていうんだ。」
このゲームを俺に紹介したということは何かあるんだろうな。
「いい質問だね!」
池上彰かお前は……
「僕は君の腕を見込んで、頼みたいこと。それは……」
それは……
「このゲームをハッピーエンドにして欲しい!!」
「はぁ!?」
思わず声を出して驚いてしまった。
「あ、ちょっと言い間違えた。正確には、ハッピーエンドを作って欲しいだ。」
もしかして、そんな事の為にわざわざあんなメールをしてまで呼んだのか?
「うん。」
うん!じゃないよ。そんなの自分で勝手に食ってやればいいじゃないか。
「自分で作ったストリーをやったて面白くないでしょ?」
「……それはそうか。」
それは共感できる。ゲームは他人が作ったら面白いんだ。醍醐味だよこれは。
「それなら、クリエイターを呼べばいいじゃん。」
クリエイターに頼み込んで、ストリーをパソコンで作ってゲームにインストールして貰えば楽じゃん。
パソコンはそこそこ詳しいけど、ゲームを自作するほど知識が豊富ではない。
こういうことは専門家に任せるべきだ。
「そんなの、面白くないじゃん。」
アラタがちょっと怒った声で疾風の意見に反対する。
「どうせなら、今までに見たこと無いストーリーが見たいんだ。でも、どのクリエイターが作ったゲームも他者を真似したものばかり。愚問だね。」
それは言えることだ。誰もが、王道に走ってしまい活気的なものを作らなくなってしまった。今の世の中の悪いところである。
「そこで、君だよ。」
「おれ?」
「君は、僕も認めるGGMだ。その全てを知り尽くした君だからこそ僕は期待してるんだ。」
実際、神より早くゲームをクリアーしているから。
「そこで君には、蒼穹の恋歌の世界に転生してもらおうかと思うんだ。」
今、転生と言ったか。ということは、おれは死んだことになっているのか。
「あ、ごめん。転移の方だった。」
「お前な……」
「ごめんごめん。」
軽く謝るけど、すごいショックだからな。十数年で死ぬとか、彼女もできてないし、童貞だし。思い残すことが沢山ありすぎるよ。
それに、まだ風香連想を全クリしてないしな。
「そうそう、君には死んでもらっては困るからね。」
なら、ちゃんと言葉を選んでくれ。いつか、とんでもない目にあうぞ。
「ちょっといいか?」
「ん、何かな?」
ここで、疾風は気になることをアラタに聞いてみた。
「転移すると俺はあっちの世界で暮らすんだよな。」
「うん、そうだよ〜。」
相変わらず軽いな。それはさておき
「選択を間違えてバッドエンドになったらどうなるんだ。」
バッドエンドの内容次第で話は変わる。
刺されて死亡とか崖から落とされるなんて勘弁して欲しい。
転移ということはそのまま、向こうに身体ごと行くわけだから多分だけど痛みはあるはず。
選択を誤ったら……死なのか。
「あー、その点は大丈夫だよ。ゲームだから途中からやり直せるよ。あ、でもこのゲームはセーブ機能が付いてないから最初からやり直しのパターンかな。」
それを聞いて安心した。
「どう?神様でもクリアーできなかったゲーム。クリアーしたいとは思わないかい?」
挑発か。よし
「その話乗ったぜ!」
「うん、契約成立だね。」
互いに握手を交わし合う。
「あ、そうだ。」
アラタは懐を探り出し、パンフレットのようなものを渡した。
「それは、ヒロインの名前とゲームの説明だよ。誰を攻略するかは君の自由だよ。」
「へぇ、それはありがたいな。」
アキトはそのゲームの説明書にしばらく集中することにした。
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「なるほど、設定は斬新だがストーリはありきたりだな。」
蒼穹の恋歌
主人公とそのヒロインたちは飛行士になる為に飛行士育成学院に通うローファンタジー的な作品だ。
そこで、繰り広げられる非日常的な出来事を解決し、かなしき運命に縛られた少女たちを救え。
王道だな。
主人公は名前を入力する。ほぉ、名前を入力するとそれをヒロインが言ってくれる。かなり珍しいタイプだ。
ちなみにほとんどのゲームでは名前のとこだけあなたや君などに略されることが多い。
それと、恋愛パラメータというのが各ヒロインにあり、選択次第で好感度が上がったり下がったり。最終的に多いヒロインのルートに。
これもよくある。
「だいたいわかったかな?面白そうでしょ。」
「ああ、そうだな。」
飛行士を育成する学院か。もしかしたら、飛行機が操縦できるかもな。楽しみだ。
「それじゃー、そろそろ行く?」
そうだな。ヒロインの特徴とか性格もわかったし後はなんとかすれはわいいか。
「ああ、で、どうすればいい?」
「ちょっと待ってね。」
そう言うと、アラタはゲームカセットを取り出して、空に何やら呪文を唱えている。
刹那
カセットが爆発したかと思うと、白い光の粒子が集まって空間に穴が空いた。
「ここを通れば、転移は完了だよ。それじゃー、気おつけて。」
「ああ、必ずクリアーしてみるさ。」
疾風はそのまま、穴の中へと吸収されていった。
「さて、じゃー僕は温かい目で見守るとするか。」
手をパチッと鳴らすと、テレビが出現する。画面にはとある家の二階の部屋の映像が流れている。
「さーて、そろそろイベントの始まりかな」
疾風がどんな選択をするか楽しみに待つアラタであった。
ギャルゲーにありそうなタイトルを募集します。ご感想よろしくお願いします。