1-2
ちゅどーん。
草原のど真ん中で炎が燃え上がり、轟音が周辺に響き渡る。
そんで、抉れたクレーターに倒れてる人から焦げ臭い煙が出ている。性別は男。
あ。死んでないよ?
ただ、気絶しているだけで。
何かを憎むような表情になっているけど。
武器の長剣にかなり力を込めて握っている。
で。
もうひとり、抉れたクレーターを眺めている人が居る。
そいつは黒い帽子と縫い目が無い衣を身に付けていて、長い杖が右手にある。性別は女。
おお。魔法使いっぽい!
まさしくその人こそが、今の抉れたクレーターを創っちゃった張本人だけどね。
何をしたかと言うと。
それを知るには時を少し遡る必要がある。
まず、2人はゴブリン集団を追っていた。
途中で戦闘もあったけど、取り逃がした。
やがて草原にて、追い詰めた。
ここで決着をつけるーーそう思った2人は焦ったんだよね。
先に大剣を持った人がゴブリン集団に突撃した。
なかなかいい勝負だった。
焦った魔法使いが呪文を唱えて、【ファイアボール】をゴブリン集団にぶつけるまでは。
勿論、仲間を巻き込んで、大爆発。
というわけで、今に至ります。
「ごめーん。狙いが狂っちゃった」
女の魔法使いがキャッと言わんばかりにウィングをした。
そこらへんの男達が居れば、目がメロメロになりそうだ。
・・・・。あのー。
軽く謝るで済ませるレベルじゃないんですが・・・・。
気絶から回復した仲間が半ばキレていますし・・・・・。
「もういい! お前とはもう二度組まない!!」
あーあ。
長剣を持った男性が啖呵を切ったよ。
そしたらどっちが今回の失敗の原因なのか、揉め始めた。
その間、生き残ったゴブリンが逃げ出したりして。
・・・・。悪運が強いね。ゴブリンさん。
バルド・ブルーア。
盾と長剣を巧みに扱い、時は肉壁役を引き受け、時は鍛えてきた剣技を披露する。頼れる前衛職の男。
・・・・だったんだけど。
今回の大爆発で三十三回目の仲間割れを起こし、ぼっちになりましたとさ。
実は彼こそが、これから語る、世界を巡る壮大な物語の主人公だ。
今は主人公っぽい雰囲気が微塵も無いけどね。