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水蜘蛛  作者: 漆原康弘
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拍芸

音楽が、特にロックが好きであるが、ジャンルを選り嫌いしない。

出来れば何でも聴いてみたいと思っている。



よく音楽好きの人から、あのギタリストのプレイを見て聴いて"勉強になるから"なんて言われる。

確かにその人の技術を模倣して理解したならば、レパートリーの一つに加えられるだろう。

そうやって広く多くを知り手札を豊かにし、全体を彩る要素としていくべきだと知っている。

だが、私がモノを介して真に学びたいのは魂である。

音楽に限ったことではないが、そのジャンルが世に生まれ根付いた理由、つまり歴史や文化といったマクロな部分であったり、その人がそのジャンルに入れ込む経緯、つまり人生というミクロな根源に触れてみたいのだ。

だからジャンルに拘りは無い。

ロックだって膝の汚れた魂の叫びであるし、ジャズやブルースだって勿論そうだ。

各々に存在する暗黙のルールや雰囲気が各々をカテゴライズしているだけの話である。

音楽の何が好きかは人に依るが、私は音楽を演っている人が好きなのである。



技術は個性に非ず、が持論である。

ろくに出来もしない若輩者が大層な事を言えた義理など無いのだが、そうだと意地を通したい。

何かに偏り特化するということは、多くの何かを蔑ろにするということ。

コレしか出来ないからコレをやる、は行く処まで行けば格好良いしスタイルとして素敵で、そういった人を私は好きなのだが、私が選ぶには相応しくない。

普通を目指した者として何でも平凡に出来たい。

色々出来るけど私は今この瞬間コレをやる、で在りたい。

最終的に最も心地好い何処かに落ち着くまでは広くを知りたい。


師も不思議と広くを勧める人なので、窮屈な趣味や癖という牢獄に囚われることなく順調に見識を拡げられている。

私も師も決して深く自らを語らない人間なのではあるが、なんとなく上手く行く関係であると感覚が言っているので私は自らの感覚を信じる。

そもそも先輩に対して服従すべき立場なのだから、理屈は不要だし懐疑は進んで圧し殺す。




初対面のある先輩に勇気を出して話掛けた事がある。

先輩は個性的なギタリストで、私に無い想いとエネルギーと魂でギターを弾く人だった。


私は満遍なく平凡なギタリストになりたいのです。

私が隅に居れば無難に纏まると思われる人になりたいのです。

そう言うと先輩は変わってるねと仰った。


私の想う満遍なく平凡な技術とは、ストイックな練磨を必要とする姿を指すのだが、果たして上手く伝わったのだろうか。

雑さの無い丁寧な、ジャンルやその場の調和を乱すことの無い、空気のような人に私はなりたい。

普通への探求とは、私の魂の叫びである。


私のような未熟者が個性を謳うなんて烏滸がましく、まだまだ早い。

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