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ミチユキシラジ
「俺にもいるんですかねえ、死神。」
「無論です。」
紳士さんはゆるゆるとうなずいた。
「かの人と同じ日に生まれ、同じ時を生き、同じ日にその生を終えます。それが、死神の宿命なのですよ。」
「死神って哀しい生き物な気がする。」
広介が言えば、紳士さんはまた苦笑いをする。
「やはりそう思いますかな、人間は。」
広介はうなづいた。
「そうですね。でも私は正直、今ワクワクしていますよ。遠足の前の日のような気持ちがします。」
紳士さんは、ふと空を仰ぎ見た。
「私の人生はとても、騒がしかった。戦争が終わって結婚して、子供が生まれて子供たちが巣だって、先月妻が亡くなりました。恐らく妻は今、自分の死神と黄泉までの道程を歩いているのでしょうねえ。」
そう言って、紳士さんはベンチから立ち上がる。
広介に深く、頭を下げると“死神さん”は、町の外れの方に行ってしまった。