ショートショートI「偉大なる嘘発見器」
ついに博士は嘘発見器を作った。今までの嘘発見器とは全く違う仕組みで、人を椅子に座らせなくてもいい。質問を機械に話すだけで「YES」「NO」のランプが光るのだ。
「この地球上には生き残りの恐竜がいる」
この質問を博士が投げかけると、たちまち「NO」というランプが点った。それを見て、博士は満足そうにうなづいた。それを見ていた助手が博士に尋ねる。
「結婚したら幸せになれますか? という答えのない質問にはどう答えるんですか?」
たちまち機械に「YES」「NO」のランプが点った。
「なるほど。YESであり、NOでもある、ということですね」
機械に「YES」のランプが灯る。
この機械に意地の悪い質問をしてやろう。どう答えるか見ものだ。助手は咳払いをして、改まった声で機械に問いかけた。
「私は常に嘘をつく、という人は嘘つきか?」
必死に考えついたのが有名な〈これ〉なんて未熟だな。助手は心の中で笑った。さあ、どう出る?
「YES」の次に「NO」が点った。それを見て博士は説明する。
「自己言及のパラドックスにも対応しておるよ」
「ふうん」
「あ、バッテリーが残り少ない。すまんが電源を落としてくれないか」
「解りました」
助手は機械に駆け寄って、博士に話しかける。
「でもこの機械は自分の答えが正しいって解るんですかね?」
その問いかけで、機械はうんともすんとも言わなくなったのだった。