忘年会は無礼講(お題小説文字数制限なしバージョン)
沢木先生のお題に基づくお話です。
忘年会は無礼講、片道切符、すごろく、駆け抜ける社長秘書、バーゲンを使わせていただきました。
それから文字数制限なしですが、一応「1212」です。
そして、無断で登場させた皆さん、ごめんなさい。
律子はスチャラカなOLである。
そのスチャラカさに拍車がかかる忘年会シーズンが到来した。
「今年も無礼講で行きましょう」
一人で盛り上がる律子。
「律子先輩は一年中無礼講ですよね」
新人の蘭子が言った。
「言えてる」
何とか蘭子とお近づきになりたい二年目の須坂君が口を挟む。
「何か言った、須坂ッチ?」
律子が睨む。
「いえ、何も」
須坂君は蘭子と顔を見合わせてクスッと笑えたので、もう今年は思い残す事はない。
「余興ですごろくゲームしようよ」
律子が幹事の藤崎君に言った。
「参加人数が限定されるから、難しいよ、りったん」
藤崎君にあっさり却下され、落ち込む律子。
「ああ、今年も片道切符買って、最果ての町に行こうかしら?」
涙ぐむ律子に藤崎君が慌てた。
「そんな大袈裟な……」
そして、忘年会当日。
律子が所属する営業一課は今年トップの成績を守り続けたので、その栄誉を讃えるために近藤社長が参加するらしい。
「って事は、あの子も参加するのかな?」
男共が色めき立つ。
「何、あいつら、鼻の下伸ばしちゃって、もう」
律子が言うと、同期の香が、
「社長秘書のめぐみさんが来ると思ってるんでしょ。でもめぐみさんは忙しいそうだから、来られないかも」
「ああ、あの才色兼備のめぐみさんね」
律子は溜息を吐いた。高学歴の上に超絶な美人で、大学時代はミスコンで優勝経験もあるらしい。
「勝てる要素がない」
律子は思わず男共の大騒ぎに納得してしまった。
「勝とうと思ったのか」
香は仰天した。
忘年会が始まった。
男共のテンションが低いのは、近藤社長の話が酒が入ったせいで当社比200%増になっているのと、めぐみが来ていない事に原因があった。
「社っ長、パアッと飲みましょう」
すでに無礼講全開の律子が長話をやめない近藤社長に絡む。
(いいぞ、やれ!)
男達は律子の「健闘」を心の中で祈っていた。
「わはは、いつも陽気だな、律子君は」
社長も酔っ払っているので、律子の無礼を窘めない。
「さすが律子先輩ですね」
蘭子が感心した。
「ホントだよね」
欲が出た須坂君が割り込む。
「須坂さんて……」
蘭子が酔っ払って来たのか、潤んだ瞳で須坂君を見る。
「は、はい」
須坂君は淡い期待を胸に蘭子を見る。
「本当に律子先輩の事が好きなんですね」
見事完全撃沈の須坂君であった。
律子と藤崎君は二次会の手配のために席を立ち、廊下を歩いていた。
「失礼!」
ものすごい勢いで駆け抜ける社長秘書のめぐみ。
「あれれえ、めぐみしゃん、来らいかと思っらわ」
呂律が回らない律子が声をかけた。
「すみません、遅くなりまして。社長には内緒ですが、バーゲンセールに行ってました」
めぐみは恥ずかしそうに振り乱した髪を整えながら、宴会場へと消えた。
その言葉に何だか親近感が湧いた律子である。
「行くよ、りったん」
誰もいないのを見て藤崎君がスッと律子の肩を抱いた。
「あらん」
律子は酔いも手伝って藤崎君にしな垂れかかった。
「重いよ、りったん」
藤崎君は悲鳴を上げた。
お粗末さまでした。