13話 もう一人の仲間
「じゃあ、ラヴェルを解放させてやるか」
何もなかったようにルヴィウス団長は鎖に手を伸ばす。慣れた手つきでそれを外すと音を立てて地面に落ちた。跪いていたラヴェルが動きだす。
立ち上がったラヴェルは意外と背が高い。見上げるようにしているとラヴェルがこちらに目を向け、じっと見つめてくる。しばらくすると口を開いた。
「オイ、チビ行くぞ」
そう言って前に向き直ったと思ったらそのまま階段の方へと歩いていってしまった。
「は?チビじゃない!っていうか勝手に行くな!」
「オマエの言う事を聞く義理はねェ」
急いでラヴェルの後を追う。
「仲良くやっていけそうですね」
「ああ、それに頑張ってもらわなきゃ困る」
どこをどう見たら「仲良くやっていける」んだ?もう既に遠のいているだろ。
その後、地上に戻るとロビンとオルメルが待ってくれていた。ラヴェルは、ヨツキ副団長がボロボロの格好のラヴェルを歩きまわすのは外聞が悪いと言ってどこかへ連れて行ってしまった。あとから合流させるというが、大丈夫だろうか。うっかり拷問されてしまうのではないか。
「じゃロビン、オルメルあとは任せたからな」
「おっけー任せてよ団長!」
「了解。アンタら早く行くぞ」
団長はにこやかに三人の顔を順番に見ると団長室へ戻っていった。団長の姿が見えなくなると三人は歩き出した。
「いい人そうだな、団長って」
「僕たちと会話する時はいつもあんな感じだよ、優しいし頼りがいがあるよね!」
「ただ、仕事の時になると人が変わるがな」
人が変わるとは一体どういうことだろうか。やっぱり人の命を扱う仕事をするから、冷酷無慈悲な人格に変わるとかだろうか。
「確かに!他の騎士団との会合に参加すると急にポンコツになるよね!」
「え!?ポンコツって!」
団員が団長を貶してもいいのだろうか。いや、逆に距離が近くて良いのかもしれない。
「ポンコツな時もあれば至って優秀な時もある。団長は顔を使い分けるのが上手いから尊敬できるな」
「ロビンが尊敬するとこそこなんだね!じゃあそれだとロビンも顔を使い分けられるようになりたいって
ことだよね?でも、ロビンは顔に何もかも出るから無理だよ」
「そんなこと分かっているから尊敬してんの!」
段々と、この二人の事が分かってきたような気がする。オルメルは優しい性格だが、時々余計なことを言う節があり、ロビンは嫌味を言ってくる時もあるが、意外と純粋そうだ。
「で、俺らは今どこに向かっているんだ?」
階段を上がり、比較的広い廊下を歩いているがどこを目指して歩いているのかよく分からない。
「第6騎士団の寮だよ!僕たちの騎士団は団員数が少なすぎてこの建物一つで充分なんだよね!」
その後、スゥ専用の個室や鍛錬場、食堂など様々な部屋を案内されロビンとオルメルの大雑把な説明を受けた。
大体の説明が終わり、廊下を歩いていると奥から誰かが物凄い速さで走って来ているのが見えた。よく見ると焦げ茶色のふわふわとした髪を靡かせた少女が大量の書類を腕いっぱいに抱えいるではないか。
「ごめんなさい!どいてくださーい!!」
そう叫んだと思ったら、ズサーッと俺たちの目の前で大胆に転んでしまった。書類が勢いよく空中を舞い辺りに散らばってしまっている。
「大丈夫か!?」
「またテテが転んでる!大丈夫?怪我は無い?」
「テテ、これで何回目?」
鼻の頭を赤く染め、恥ずかしそうに起き上がった少女は慌てて書類を拾い始めた。
「本当にごめんなさい!実はこれ、今日で4回目なのです……はぁ私ってばほんとに……」
一緒に散らばってしまった紙を拾い集めながら話を聞いていると徐々に元気が無くなっていく姿が視界の端からでも分かった。
「テテはどうしてこんなに急いでいるの?」
「この書類を早く届けに来いって第1騎士団に言われていまして……」
申し訳なさそうに小さな声でそう話すテテは書類をスゥたちから受け取ると再び走り出そうとした。すると、
「待て、テテ」
「な、なんでしょうかロビンさん」
ロビンに話しかけられ、ビクッと飛び上がるテテは恐る恐るロビンへ視線を向けた。ロビンは腰に手を当てテテの方へ身体を向けると、面倒くさそうに話し始める。
「また嫌がらせだろ、それ」
「ありゃ、そうだったの?テテ、そういうことはちゃんと断らなきゃ!」
どうやら、他騎士団に嫌がらせで書類を短時間で届けなければならないようだった。かわいそうに。
「うぅ……ごめんなさいぃ」
もうほとんど泣いているテテという少女を見るとなんだか庇護欲が湧いてしまう。
嫌がらせをされるのは落ちこぼれの騎士団と呼ばれているからだろうな……。
「出来ない事は出来ないって断りな」
「でも……殺しちゃまずいじゃないですか……」
……ん?なんかおかしくなかったか?殺しちゃまずい?どうして断ることが殺しに変換されるんだ?
「テテ、言葉で伝えられれば充分さ!嫌なことは言葉にしないとね」
「はい……分かりました。できるだけ頑張ってみます!」
なんで誰も突っ込まないのだろうか。俺がおかしいのだろうか。
「そうだテテ、こいつは今日から第6の仲間になったスゥだ。丁度良い、アンタとアンタの仕事をスゥに紹介してやってくれ。スゥ、テテがちゃんと第1騎士団で嫌がらせを断れるか見ててやってくれ」
「え、俺!?」
なんてことだ、矛先がいつの間にか俺にも向いていた。面倒くさいことになってきた。第6騎士団員が第1騎士団に行くなんてどうなることやら……。
「スゥさん?ですか?これからよろしくお願いしますね!早速なのですがこれから第1騎士団の駐屯地に行こうと思います。同行ありがとうございますね!先輩として頑張ります!」
キラキラした目でこちらを見るテテになんと返せばいいか戸惑っていると
「そういえば、スゥに伝え忘れていたね!テテも元死刑囚なんだよ」
特大の爆弾をオルメルが落とした。
そういうことは早く言え!!
既に先行きが不安でならない……




