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11話 落ちこぼれ騎士団の裏の顔

紙切れに書かれた通りに来てみれば、古びたレンガ調の建物が目の前にあった。外壁には蔦が巻き付き、良く言えば味わいがあり悪く言えば手入れがされていない。


「本当にここが第6の……」


そう呟くと突然目の前のドアが開く。


「そうだ。間違えずに来れたみたいだな」


現れたのはサラサラとした黒髪に柔らかそうな三角耳の生えた女性、ロビンであった。


「ついてこい」


それ以上俺に掛ける言葉は無いようで、建物に入るよう手招きされる。ロビンに従って何も言わず後ろについていく。内装も木製の床が古き良きと言う雰囲気を醸し出している。


「……オルメルはいないのか?」


何も喋らないロビンに恐る恐る質問する。


「……」

無視された。無視はひどくないか?ここには初めて来たというのに、何も説明されずただついてこいと言われただけだぞ。いや、俺も昨日オルメルを無視していたな。自分も人の事言えなかった。


軋む階段を上がり暫く薄暗い廊下を進むと重厚感のある扉が現れた。とうとうその扉の前に来るとロビンの足が止まり、スゥへ向き直る。


「えっと?ここは?」

「団長室だ。さあ行くぞ」


そう言うとロビンはドアノブに手を掛けゆっくりと手前に引いた。

何も聞かされずに連れてこられたのが団長室!?確かに、入団が決まったのなら挨拶するのが最初かもしれないけれど、急にそれを言われても困るだけなのだが!


ギィーと音を立てて扉が開くと眩しい光が奥からスゥへ差し込んで来た。その光の中に何人かの影が見える。


「ようこそ第6騎士団へ」

光に目が慣れるとそこには見慣れた一人と見慣れない二人がいた。


アンティーク調の机に肘をついてこちらを見据える見覚えのない男の後ろにはオルメルが付き従うように立っており、その隣には縦に長く尖った耳をピクピクと動かしている男が立っていた。


「……新しく第6騎士団に配属されることになりましたスゥです。これからよろしくお願いします」


何か言わないと思い、とりあえず挨拶する。すると一人席についていた男が徐に立ち上がり俺に向かって歩いてきた。


光沢のある短い赤髪を揺らしこちらに歩み寄る中肉中背の男は二十歳半ばから後半程であろう。まだ、若いというのにどこか威厳があるように感じる。


「珍しくロビンとオルメルが期待の新人が現れたと興奮していたから楽しみにしていたよ。俺の名前はルヴィウス、第6騎士団団長だ。これからよろしくな!」


俺の目の前まで来るとニカッと笑って手を差し出してくる。言葉の節々から陽気さが伝わってきて安堵する。手を伸ばし、しっかりとルヴィウスの手を握る。だがその手は彼の陽気さに反して皮が分厚く硬かった。


「抜け駆けは反則ですよ、私にも紹介させてくださいルヴィウス」


団長の手を離すと先程後ろに控えていたもう一人の男が歩いてくる。雪のような白髪に、長く尖った耳、そして細められた目が特徴の狐獣人だと思われる男が病的なほどに真っ白な手を俺に差し出し、握手を促す。断る理由も無いので手を重ねる。


「お会いできて嬉しいです、スゥ君。私は副団長のヨツキと申します。きっとこれからルヴィウスが君を扱き使っていくと思いますが頑張ってくださいね」


優しそうに微笑み掛けてくれているがその実、腹の底が見えない不信感があった。直観だが……あまり関わりたくないな。


「スゥには俺から色々と教えてやりたいのは山々だが、残念ながら俺にはやらなきゃならない仕事が沢山ある」


「あれだけ早く終わらしてくださいと言ったのに、怠けていたのはどこの誰ですか?」


「ごめんってヨツキ、そうムキにならないでくれよ」


呆れたような口調で団長を叱る副団長という不思議な構図が目の前に広がっており、この騎士団の掴みどころのなさを感じた。


「それは置いといて、大切な話は俺からしておこうと思う」


ルヴィウス団長はヨツキから俺に向き直ると真剣そうに話し始めた。その雰囲気を感じ取ったのか他の人も団長の方へと向き直る。緊張した空気が流れ始めた部屋の中で、誰もが団長の言葉を待つ。


「スゥ、君はこの騎士団を『落ちこぼれ』だとか『雑用係』だと聞いたかもしれない。確かに他の騎士団の雑務を引き受けてはいるが実はそれはあくまで表向きだ」


なんだか聞いてはいけない事を聞いている気がするのだが気のせいだろうか。これ以上聞きたく無くなってくる。しかし耳を塞ぎたい思いに駆られながらも何故かルヴィウス団長から目が離せない。



「我ら第6騎士団に課された真の職務は諜報、監察、粛清、暗殺。——言わば『裏のお仕事』だな」


ニカっと爽やかに笑った団長の近くには無表情のヨツキとオルメルが、スゥの後ろには静かに団長の言葉に耳を傾けるロビンが扉を塞ぐように立っていた。



「因みにこの事は国家機密ものだからな、もう逃げられないぞ」



……なんてところに来てしまったのだろうか、自分は。




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