念願の異世界転生ライフ!
いえ~い、オタクくん見てるぅ~???
下校中にトラックに轢かれてしまった俺は、なんか神々しい空間に来ちゃいました~!
これって絶対アレだよね!
オタクくんが好きだって言ってたアニメの『異世界転生』ってやつ!
俺って、やっぱりラッキーボーイだわ!
オタクくんの分まで異世界ライフ楽しんでくるから、オタクくんは長生きしなよ~!!
⋯⋯俺は現世の友人に向けて、そんな風に別れを告げた。
周囲には、満天の星空が広がっている。
足元はガラスのように透明で、踏みつけるたび光の波紋が広がった。
目の前に立つ「女神様」が威厳に満ちた声で言う。
「貴方はこれから、異世界へ転生することになります。
その異世界は、悪魔からの侵攻を受けており、救世主様を待ち望んでいます。
貴方は救世主様を助ける『聖女』として、世界に平和をもたらすのです──」
女神が言い終わったと同時に、白い光に包み込まれる。
説明されるの、たったこれだけ?
長話よりは助かるけどさ、こっちの意志とかどうでもいいんだ。
「⋯⋯てかさぁ。俺はそもそも異世界を救うとかマジで興味無いんだけど。
わかってやってんなら、チョー怖いね」
光の中で、俺は呟く。
後はまぁ大体、オタクくんが喋ってた展開とおんなじだった。
転生者だって自覚が無いまま幼少期を過ごして。
良い感じの年齢になったら、高熱を出して記憶が復活。
異世界の貴族令嬢「エルシー・マッドリバー」としての人生が、びっくりするほど呆気なく、幕を上げてしまったのだった。
⋯⋯うん。取り敢えず、ひとつ言いたい。
「なんで俺の魂を、女の体にぶち込んだんだよ!!」