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リーファの約束−2

これにて完結です。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!

また他の作品でお会いできたら嬉しいです。

 

 ランドルフはすぅ、と息を吸い込むとミリィをまっすぐに見つめた。


「ミリィ……。私はあの日、まだ幼かった君に会って心底救われた。この両手がとても薄汚れた気がしてうんざりしていたところに、君がリーファをくれたんだ……。私の両手は汚れてなどいないと言って、ともに国を守ると言ってくれた」


 そして続けた。


「だから……、いつか君に会えたら礼を言おうと思っていた。あの時はありがとう、と。けれどその後大人になった君が、私との約束を一生懸命守っていてくれていたと知って、私は……。あの日からずっと君が私を支えてくれていた。だから……」


 胸の音がランドルフに聞こえてしまうのではと心配になるくらい、ミリィは胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。顔も恥ずかしいくらいに真っ赤に染まっているに違いない。けれど、ランドルフの熱い眼差しからどうしても視線をそらせない。


「だからミリィ、あらためて言わせてくれ……! どうか私と結婚してほしい。これから先の人生を、ともに歩んでほしい。必ずや君を守り抜く。……その約束として、これを君に」


 ランドルフは指輪を箱から抜き取ると立ち上がり、ミリィを優しく熱い眼差しで見つめた。


「どうしても自分の目で選んだ贈り物をしたかったんだ。あの首飾りのように、誰かに頼んだものじゃなく、思いを込めた贈り物を……。これは君と私の新しい約束の証だ。リーファに誓うよ。この先もずっとどんな困難な時も、君とともにあると――」

「ランドルフ様……」


 ミリィは、ランドルフの目に自分の姿が映っているのを見た。これといった目立つ特徴のない、平凡な自分の姿が。けれど婚約を結ぶ前の自分と比べたら、少しは胸を張れるようになった気がする。自分なりに外見も中身も成長できたような。それが嬉しい。


 ランドルフの言葉ひとつひとつが、あたたかく胸に染み渡っていく。あたたかな灯のように、ゆっくりじんわりと。

 ミリィの両目から、ぽろりと雫がこぼれ落ちた。どう言葉を重ねたら良いのだろう。どうすればこの溢れんばかりの思いが伝わるだろうか。心の中にこんこんと湧き上がるこのあたたかな思い。誰よりも愛しくて、誰よりも大切にしたい人。


 言葉にならない思いが、涙となって次から次へと頬を伝う。ミリィは手を胸の前でぎゅっと握りしめ、息を整えると。


「……ランドルフ様。私も……心からランドルフ様をお慕いしております。あの日からずっと、あなたと同じ道を行きたくて頑張ってきたのです。だから私もこのリーファにかけて、お約束します。どんな時もあなたの幸運となれるよう、生涯ランドルフ様とともに歩いていきます……!」


 差し伸べられたランドルフの大きな手に自分のそれを重ね、きゅっと握りしめた。合わさった互いの手の平から伝わるその熱に、じわりと喜びが全身に伝わっていく。


「ありがとう……。ミリィ。……それで、どうだろうか? ここを私たちの住処としてはどうかと思って、急ぎ契約を済ませてしまったのだが。あ、あぁっ! も、もちろん君がもっと別の屋敷がいいとか別の場所がいいというのなら、今からでも他に探して……!」


 そしてミリィは知ったのだった。ランドルフが急ぎ押さえたいものがあると言っていたものが、このリーファにぐるりと囲まれた屋敷だったことを――。


 ミリィは満面の笑みを浮かべ、大きくうなずいた。


「はいっ!! とても素敵ですっ。このリーファの木に囲まれたお屋敷で、大好きなランドルフ様とこれからの人生たくさんの幸運を積み重ねていきたいですっ!!」

「だ……大好きっ!? ……ぶほっ!!」

「あっ!! ランドルフ様っ、大変っ!! どうなさったのですかっ!?」


 幸せのあまり鼻血を吹き出した守り神と、それを誰よりも愛しともにありたいと願うちょっと斜め上の天使は嬉しそうに、少し恥ずかしそうに笑い合う。

 隣国でしたあの約束は、こうして果たされた。そしてまた新たに交わされたリーファの約束に、吹き抜けた風がまるで祝福の拍手のようにリーファの葉を揺らしていた。


 その後ふたりは、リーファの花が咲き綻ぶ美しい季節に、両国から祝福され華々しく婚礼を挙げた。その時にふたりが身につけていたリーファを模した装飾品や、ロぺぺが手がけた明るい黄色を帯びた美しい衣装は、その後隣国でも大人気となったらしい。


 そして毎年リーファが満開に咲き綻ぶ季節になると、ふたり仲睦まじく屋敷の庭を散歩する姿が見られたという。

 ユールが出回る季節には、パイの焼ける香ばしく甘い香りが漂っていたとか――。


 守り神とともに国を守り続けたランドルフと、国のため民のためにと生涯慈善活動に邁進したミリィ。ふたりはその後、理想の夫婦として長く語り継がれることになったのだった。



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