表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたのことが大好きなので、今すぐ婚約を解消いたしましょう!  作者: あゆみノワ@書籍『完全別居〜』アイリスNEO


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/54

リーファの約束−1

 

 ゴトゴトと馬車に揺られやってきたのは王都の外れも外れ、ここがあの賑やかな王都の一角なのかと驚くほどのどかな場所だった。目の前には広大な草地が広がり、季節の花々やみずみずしい草が風に揺れている。少し先にはちょっとした小高い丘も見える。 


「王都にもこんなのんびりした場所があったなんて知りませんでした! とても素敵なところですね! ランドルフ様」

「そうなんだ。ここは王都とはいっても大分外れだからな。この辺りまでくるとさすがに静かだし景色もいいんだ。自然も多いしな。それに、ほら! あれを見てみろ」


 馬車の窓の向こうを、ランドルフが指差した。

 その先にあったのは、一軒の大きなお屋敷だった。赤茶色の壁の立派な屋敷で、広い敷地内には屋敷をぐるりと取り囲むように立派な木が植えられている。


「……?? 素敵なお屋敷ですね? どなたかお知り合いのお宅ですか?」


 もしやこれからその人のところをたずねるつもりだろうか、とランドルフに問いかければ。ランドルフは鼻の頭を照れ臭そうにポリポリとかきながら、しばし言い淀んだ。


「いや、実はここを君に見せたくて連れてきたんだが……。まずは馬車を降りて少しこの辺を散策しよう。ミリィ」

「……?? はい!」


 そよそよそよそよ……。

 さぁぁぁっ……!


 頬をなでていく風に、ミリィはふわりと微笑んだ。


「気持ちいいですね……。ランドルフ様」

「あぁ……」


 聞こえてくるのは風に揺れる葉擦れの音と鳥の声。人々の興奮した歓声もおしゃべりも聞こえない。まるで世界にふたりしかいないような穏やかな時間に、ミリィは深呼吸をした。

 皆があんなに歓喜するほどのことを自分が成し遂げたのだと言われても、どうもピンとこない。だってミリィからすればただランドルフとともに国を、そして誰かを守りたいと思っただけだったから。

 誰かにあんなにも喜んでもらえることももちろん嬉しいけれど、やっぱり日常は平穏がいい。


 そんなことを思いながら隣を歩くランドルフをちらと見れば、ランドルフもようやく色々な重荷から解放されたようないつになく穏やかな表情をしていた。

 そしてランドルフはあの屋敷の門までくると、ミリィに手を差し出した。


「え? あの……入ってもよろしいのですか?」


 屋敷の住人が驚いて出てきはしないかと思わず心配になって首を傾げれば、ランドルフは小さく笑った。


「大丈夫だ。おいで」


 優しい微笑みに胸をドキリと高鳴らせつつ、その大きくたくましい手に自分の小さなそれを乗せ敷地の中へと入っていく。


「うわぁ……!! 近くで見るとさらに素敵なお屋敷ですね……。それにもしかしてこの木って……リーファですか!?」


 これまでに見たどれよりも大きく育った立派なリーファの木に、ミリィは感嘆の声をもらした。これだけ立派なリーファが満開に咲き綻んだら、どれだけ素晴らしい光景だろう、と。きっと世界が一面明るい黄色に包まれて心が浮き立つに違いない。そう思った。

 するとランドルフはにっこりと笑ってうなずいた。


「君なら気づくと思った。このリーファの木を見てここがいいと思ったんだ。いや、もちろん君がそれでいいと言ってくれればの話だが……」

「……?? なんのお話ですか? ランドルフ様」


 ランドルフはほんのりと赤らんだ顔で小さくコホン、と咳払いをするとおもむろにその場に片膝をつきミリィを見上げたのだった――。

 

「ラ……ランドルフ様っ!? 急に一体何をっ??」


 突然の行動にミリィが慌てふためいていると、ランドルフは胸ポケットから小さな箱を取り出しこちらに差し出した。その中には――。


「これは……指輪っ? しかもこれ……」


 それはリーファの花を模した小さな石が散りばめられたかわいらしい指輪だった。そのきらめきとかわいらしさに言葉を失うミリィに、ランドルフは照れた微笑みを浮かべ言ったのだった。


「ミリィ・レイドリア子爵令嬢。私は君を心から愛している。永遠に大切にするとこの人生すべてと命を賭けて誓う……。だから、これを受け取ってはくれないだろうか? どうか私を信じてこの手を取ってほしい……!」


 ミリィの胸が、これ以上ないくらいに大きくドキン、と跳ねた。


残り一話で完結です。

ここまでお読みくださった皆様、誠にありがとうございました。

誤字報告もありがとうございました。相変わらず誤字多めな私です……。


感想などございましたらお寄せくださると励みになります!

よろしくお願いいたします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ