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そして思いは通じ合う

 

「ランドルフ隊長~!! なんか国で隊長と天使ちゃんが話題沸騰中みたいですよ? ほら!」


 ある日のこと。ロイドに恋人から届いたという手紙を渡され、ランドルフは衝撃を受けた。そのあまりの衝撃に手渡された手紙を危うく握りつぶしそうになり、ロイドが慌てて取り上げた。


「ちょっと!! 何するんですかっ!! 俺の天使からの大事な手紙をくしゃくしゃにしないでくださいよっ!! 隊長!!」

「あ、あぁ。すまん……。つい……。しかし一体これはどういうことだ!? 私が踊り子と恋仲で、ミリィと結婚後は愛人として囲うつもりだとかなんとか……??」 

 

 ロイドは皺が寄った便箋をぶつぶつ文句を言いながら手で伸ばしながら、答えた。


「そのユリアナって踊り子、前に隊長が袖にした女ですよ。その女が腹いせと金に困って、そんな噂を流したんだそうですよ?」

「むぅ……。そんなことあったか……??」


 言われてみれば確かに、踊り子をしているとかいう女がいたような気もする。


「でもそれをミリィちゃんが見事愛の力で撃退したおかげで、今じゃ国中守り神のお相手はミリィちゃんしかいないって大人気らしいですよ。いやぁ、愛の力って偉大だな」

「あ……ああああああああ、愛っ!? ミリィが……私を愛……??」


 ロイドの言葉に、なんともくすぐったく気恥ずかしい気持ちで頭をぽりぽりとかいた。


「いやぁ、なんとも健気っすねぇ! 守り神を小さな体で必死に守ろうとする健気な天使!! うーん! 尊い!!」

「……!!」


 またも顔から火が吹いた。うっかり鼻血が出そうになり慌てて鼻を押さえ、ランドルフは遠い空の下にいる婚約者を思った。そしてその募る思いを急ぎ手紙にしたためた。万感の思いを込めて、国で待つ愛しい婚約者へ――。

 


『婚約者殿


 先日部下のもとに届いた手紙で、最近王都で私にまつわる噂が流れていると聞いた。なんでも私がとある女性と特別な関係にあり、その者が色々とあることないこと噂を振りまいていると――。

 それをあなたがとりなしてくれたことで、それが真っ赤な嘘であると皆信じてくれたと聞いた。濡れ衣を晴らしてくれたこと、心から感謝する。

 神に誓って潔白ではあるが、今回のことであなたが嫌な思いをしていないことを願うばかりだ。

 

 遠い空の下、あなたを常に思っている。一日も早く、あなたに会いたい。会って話がしたい。どうか国へ帰れるその日まで、待っていてほしい。必ず生きて帰ると約束する。


 ラルフ』


 それから一週間ほどがたち、ランドルフのもとにミリィからの返事が届いた。


『敬愛する婚約者様


 噂のことはもうすっかり落ち着きましたから、ご心配はいりません。私のこともどうかご心配なさらず。私はあなたの言葉を信じます。信じています。ですから、どうかお心を痛めることのございませんように。


 私も会いたいです。もうあれこれと明後日の方に思い悩むのは、止めにします。遠い空の下、ずっとずっとあなたの無事なお帰りをお待ちしております。

 そして、あなたにふさわしくあれるようもっと強く素敵な女性になるために努力を重ねることにいたします。あなたの婚約者として恥ずかしくないように、顔を上げて隣に立てるように。

 お会いできる日を、指折り数えています。 あなたにたくさんの幸運が降り注ぎますように。


 あなたのリル』


 その手紙を手に、ランドルフは今度こそ本当に鼻血を吹き出した。


「あなたの……リル?? ぐほっ……!!」


 これまでは『リル』と名前だけだったのが、『あなたのリル』という文面に変わっていた。そこににじむいじらしくかわらしい愛情に、ランドルフは拳を握りしめた。


「絶対に……!! 絶対に、生きて帰るっ!! 何があろうとも……、どんな試練が立ちはだかろうとも!! 絶対に……!! ミリィのもとへ帰るっ!!!!」


 ランドルフの決意表明を、ロイドとその仲間たちが生温い目で見つめていた。



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