第二十一話 川島です。ひゅうがについての内緒です。
つかさが屋上からいなくなって、俺はひゅうがと二人きりになった。
「ひゅうが、良いやつだな。よく言ってくれたよ。」
俺はひゅうがに話しかけた。ひゅうがは眉間に皺を寄せ、拳を強く握り締め小さく震えた。
「ひゅうが?大丈夫か。」
俺が声をかけると、ひゅうがは小さな子供の様に、大声で泣き始めた。
「おれは!ヒック……。良いやつなんかじゃねーよ……。うあーーーん!」
俺はテンパった。とりあえず、ひゅうがを座らせ、背中をさする。
「おれは、おれは……。ヒック。つかさがりんのすけに取られるの、嫌だったんだ。川島と一緒にお昼食べてるのも、取られてるみたいで嫌で。ヒック。うぅぅ。」
ひゅうがは、制服で涙を拭う。俺はポケットティッシュをひゅうがに渡した。
「そうだったんだな。ごめんな。」
「ううん。おれ、こんな気持ちになった事なくて。すごく嫌な奴みたいな感情が……ヒック。つかさ見てるといっぱい湧き上がって。うっ。うぅぅ。だから、そういうのは全部我慢しなきゃって……ううああ。」
ひゅうがはティッシュを取り出して、鼻をかんだ。
「でも、じぇんじぇん我慢できなくて。どうずればいいかわがんないよぉ……うああーーん!」
俺はひゅうがの背中をさする。言葉を選びながら、丁寧に伝えるよう努めた。
「ひゅうがはさ、つかさの事がとっても大事なんだな。大事で大切だから、独り占めしたくなっちゃったんだよ。それって、嫌な奴じゃなくて、誰でも起こりうる感情だ。」
「うぅぅ。そうなの?……そうか。ヒック。」
ひゅうがは泣き止んだ。ときどきしゃくりを上げてはいるが、落ち着いた様だ。
俺は安心して、胸を撫で下ろした。
「うん。独占欲ってやつだな。」
「どくせんよく?」
「それだけ大切な宝物の様な人って事じゃないかな。偉そうな事言ってるけど、俺はそう言うの思った事ないだ。ははは。」
俺は苦笑いした。ひゅうがは、鼻を啜って立ち上がった。
「おれ、まだ何も頑張ってなかった。つかさを大事に思う事に気づいてなかった。おれ、がんばる!がんばって、つかさの一番になってやる!」
ひゅうがは真っ直ぐ遠くの方を見つめている。目がキラキラと輝いていて綺麗だった。
「うん、俺も応援してる。これからは一緒にお昼ご飯食べような。」
ひゅうがに笑いかけると、とても嬉しそうな、尻尾を振る犬の様な表情になる。
「本当か!?約束な!!」
ひゅうがが小指を出す。俺は自分の小指を掛ける。
「うん、約束。」




