数日間の ほねやすめ
とりあえず、古龍にはあってみなければならなさそうだということが、分かった。
アルディから “少しでも可能性があるなら、会ってもらいたい” と懇願されたということなのだが
ほんっとうにうるさかったので、つい、首を縦に振ってしまったのだ。
アルディのアレは一つの暴力だとおもう。
現在、龍と意思疎通ができる存在は数名いるけれども、龍医と呼べる人間は一人も存在せず
本当に龍族は逼迫しているという
全く、ひとつも実感も自信もないけれど
このわたしが何かの力になれるのであれば
求められるのであれば
できることならしたいと
思ってしまったのだ
とりあえずは、色んな疲労が溜まっていそうなので、数日静養をすることに、なった
わたしの足取りを誤魔化すためにもその方が無難ということでもある。
古龍の寿命は長い。
数日程度は、全く関係ないであろうと、いわれた。
急がなくていいの?って、落ち着かない気分だけれど
ここの家は、静かで暖かだ。
アルディはやかましいので申し訳ないけれど、自室からは締め出せるようにしてもらった。
日を重ねるごとに少しづつ落ち着いてはきているような気もするけど。
いままでの生活とは、かけ離れていた
食べてみたくても “無能力の孤児” では決して食べられなかったようなものを食べ
自由に外に出たり、ヒトの世話をしたり、目を気にせずにすごしたりすること
思ったことを思ったように聞き、知りたいと思ったことを学ぶ。
そんな時間を、過ごすことができたのだ。
ここでは、わたしは、ただのわたし、だった。
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旅立ちは、ここにきてから10日がすぎた日に決まった。
わたしの健康状態や精神状態を鑑みて、ラーゼさんが、そう決めた。
今日は、7日目。
あと三日だ。
ちなみに
わたしの引っ越し荷物はわたしを放置するために荒野に設置した時に
しっかりと回収されていたので無事に渡してもらったし
恐ろしいことにマジックバッグはマザーからのプレゼント、としてわたしのものになった
時間の停止能力までついているという超高級品で恐縮しまくったのだが
何と、マザーはこれを自作できるらしい。
ほんと、何であの人あんな仕事してるんだろう
なので、3日かけて荷造りしな、と言われても
このお家でいただいた夜着や着心地の良いお洋服を追加したり
必要だからと持ってきた古びたものをあたらしいものに取り替えるような作業だけでよかった
はずだった。
この頃になると日に数時間だけとはいえ
落ち着いている時間だったらアルディはわたしの部屋にも入っていいことになった
(即座に締め出すことも可能です、もちろん)
旅は、一緒に行くことになっているので、お互いに慣れることも必要なのだ
(不安で仕方ないけれど)
わたしの部屋にいるときは、寝台でゴロゴロしたり、ウロウロしたり、鼻歌を歌ったり
自由に行動しているアルディは、ツヤツヤで真っ赤で、ちょうど犬のような大きさ
可愛いペット、というような存在感だ。
撫でてあげると喜ぶし、こちらもすべすべの体が気持ち良く、まさに、と言った感じだ。
撫でられて喜んでいるというのを隠そうとするのもまた可愛いけど
ご機嫌そうに尻尾の先がゆらゆらするからすごく良くわかるんだよね。
本を読みながら、机の上にでんと居座るアルディを撫でていたときだ。
その時に読んでいたのは、これから行くだろう国々の紀行文
参考になるだろうと、ラーゼさんが手渡してくれたものだ
女性のライターさんが、いろいろなものを食べたり飲んだり、見たり聞いたりして
軽いけれどもイキイキとした筆致で表現しているロングセラー。
“セラン=ビッグフットののんびり気まま旅“ だ
作者は神出鬼没で、いろいろなところを思うままに旅して書と絵にしたためている
読んでいるだけで、どれだけたのしいことがこの先に待っているのだろうって
ワクワクドキドキとした気分になれた。
セラン=ビッグフットは正体不明とは言われているが
一つだけ、はっきりとした特徴があると言われている
ちいさな龍が、その旅に同行している、というのだ
……まあ、だからこそ我が街ペリスでは見たこともなかったんだけどね
小さな龍を伴っている。
それがこれからアルディを伴って旅に出るわたしに、ちょっと似ているようで嬉しかった。
あの国の外では、竜はそんなには珍しいものでもないらしいのもよくわかった
小さな龍も、街の人々と気軽に交流している姿がよく描かれていたから




