大騒ぎドラゴンの使命
母国から出てきたわたしが前置きなく置き去りにされたこと
あんなところに真夜中にたった一人で放置されたわけ
そして、ここにきたこと、
その全てがあらまじめ仕組まれていた……
結果を知った今ではむしろありがたいとも思うのだけれど
(いや、他に方法はないのか?と思うところはあるのだけれど)
伝えられたそこまでのこと、の方が衝撃的だった。
わたしはあの国にいたから、
あの国のせいで無能力者としてしか生きていけていなかった、ということ
そのままあそこにいることを選択していたら、と考えるとゾッとするどころでは済まない
あの国に生まれ、生きていた、生きてきたこと
そして、そこから逃がしてくれたマザーのこと
マザーの、真実の姿のこと。
初めて知ることばかりで情報量が多すぎて、口から何か溢れ出てきそうだ
処理能力にも限界があるよ?
そして、あの、結界の中で震えていたあの日の夜更け
あそこを通りがかったのはなんらかの幻獣、だったらしい
大きさからすると竜種の何かと、少なくとももう一種、であっただろうということだ。
「龍との接触」は、実際にその存在を感知すればいいそうで、
だったらなるほど、わたしが能力に目覚める条件は揃っていたのだ
その前の旅路で遠目に眺めた妖精の群れや精霊が起こしたと言われる風、魔物たちなど
あの街の中では見ることができないものの全てが「可能性」に直結していたらしい
今の時期は龍たちが大騒ぎしているから、少なくとも竜種には遭遇するだろうとは予測していたとのこと
『その中に何か、この子の可能性があれば』と言っていたという、マザーの思い
うん、何だかよくわからないけど、あったよ
あったみたいだよ、マザー。
まだ、よくわからないけどね
能力があった、と言われはしたけれど
会ったことのあるアルディは元々人語が話せるし
実感なんて、なにひとつ、全くないのだもの
ただ、あの、『鑑定』の光景だけが美しく
ひたすら美しく、心にはっきりと、痛みを伴うほどに、刻まれていた
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アルディは完全にイレギュラーだったときいてびっくりした
このお騒がせ君は、こう見えても探索や捜索が得意な龍ということで
広く探索網を張って可能性のある人間をずっと探し続けていたのだ
そして、その網に引っかかったにわたしの魔力を探し当てて一目散に飛んできた、らしい
この地域もさんざん探し回っていて、ラーゼさんのこのお家にも何度も訪ねてきていたとのこと
訪ねるというよりも乱入としか思えない大騒ぎドラゴンとしてラーゼさんとも顔見知りだったというわけ
「だから俺は使命をもらっていたんだってば!」
アルディは偉そうに踏ん反り返りながら反論してきた
「使命を持って、古龍の親方を治せそうな人間なり何なりを探せって言われて動いてたの!」
「……だからって、あんなぶつかったら人が死ぬような速度でヒトの家に飛び込んでくるやつがあるか」
ラーゼさんが冷たい声で返す
「だってどんだけ探したと思ってんだよ!5年だぜ5年。おやっさんももうだいぶ辛そうになってきてるんだ」
大声を上げて、全身で訴えてくる姿には焦りが見える。
「シンプルな疑問なんだけどね、アルディ。あなたがその古龍さんの言葉を人間に伝えるってできないの?」
「それくらい簡単にできらぃ!」
「じゃあ、なぜ、そうやって治したりはしないの?」
アルディが龍の言葉を人に伝えたら病気の治療くらいできるんじゃないのかと素直に思う
人間がお医者さんにかかるように、症状を聞き取って、伝えて、診断をもらって、っていうやつだ
アルディは盛大なため息をついた
そして、馬鹿にしたような目つきでコチラを睨みながら不機嫌そうに答える
「人間には龍の病気は治せねぇからだよ!」
「じゃあわたしにも直せないんじゃないの?」
盛大に地団駄を踏むアルディ。
「普通の人間! 普通は人間には治せないし、治療もできないの!」
「……わたしにはできるの?」
「できるはずだ! 龍、言葉、音楽、植物、癒し、光あたりが能力にあったはずだろう!?」
「使い方わからないよ? 龍が龍を治すこともできないの?」
「んなもんやってみればできるようになるんだ!
竜は人間ほど器用ではないし、多彩な言語も音楽も持たないから俺らにできないことができるんだよ!」
ったく、何でそんなことも知らねえんだ 人間ってアホだ!
みたいなことをぶつくさ言いながらそこら中を転がり回るアルディ
龍自体を見たのが昨日がはめて何だから知らないのは仕方ないでしょうが……
ギャーギャーぶつくさワーワーいいながら暴れている赤龍はちょっと鼻から煙も吐いている
……あああ!カーペットが焦げてる!焦げてる!
ラーゼさんが情け容赦なく魔法で水をぶっかけた
あ、すぐに乾いてる
魔法ってすごいな
話してもすごくうるさくて(動きや何やらが)要領を得なかったので
結局ラーゼさんに説明してもらった。




