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カエルには、吸盤があるのだ。  作者: 半崎いお
飛び出た場合の
22/31

かくしてるもの、かくれてるもの、かくされてるもの

「なんか赤いものが窓に!!」とドアを開けてすぐに伝えた。

思っていた以上に大きな声が出てしまって恥ずかしくなったけど

そこには誰も、いなかった。


ナチュラルな木製のダイニングテーブルセットのむこうには清潔そうなキッチン

場所が間違ってるわけではなさそうだ。


っていうか

キッチンが食堂から見えるようになってるってすごくない?

煙とか、炎とかどうしてるんだろう。

めちゃめちゃ綺麗なその場所に、ちょっとびっくりしていたら、後ろから声がした。



「その『赤いもの』ってこんな色でした?」

びっくりして振り向くと、そこにはラーゼ(仮)さんがいた。


右手で

がっしりと

そいつの尻尾を鷲掴みして逆さ吊りにしている。




あー

なんか分かった気がした。

またおまえか。




「すごい音がしたなと思って外を見たらこのバカが目を回して落ちていてな」

細かく揺すられてもびくともしない。

「死んじゃった?」

「このくらいじゃびくともしませんよ。曲がりなりにも龍だからな」

そう言ってポーンと、ソファに放り投げた。

扱い雑だな!! 



そのまま仰向けになってるけど、大きな真っ白いお腹が上下に動いてるのは見える

ピクリとも動かないけど、生きてはいるのだろう。



「この子が窓にぶつかってきたの?」

「そのようだ。こいつが窓をぶち割ってくれたので、代わりに魔法で封じておいたんだが

 見事にそこにぶつかったんだろうな。アホが。まあ、こいつのアホは今に始まったことじゃないが」


あー、そういうキャラなのこの子。

おおごとじゃなさそうでよかった、と、ため息をついたら、ラーゼ(仮)さんに笑われた

「ごめんな、このバカが色々迷惑をかけちまって」

「いえ……ちょっと楽しかったんで大丈夫です」

「強いな」

そう言ってふっと笑うラーゼ(仮)さんはとても優しい目をしていた。

悪い人じゃなそうだな、なんて素直に思ってしまいそうになる

いけないいけない。

それは良くない傾向だ。



++++++++++++++




勧められるまま椅子に座り、目の前に差し出された黒っぽくて白っぽい飲み物を受け取る

なんだろう。

すごく甘くていい香りがする。


「疲れた気持ちと体によく効く飲み物だよ。多分すごい好きだとおもうよ」

そう、言われるままに口をつける。

ほろ苦い、不思議な味。初めてだけど、これ、確かにすごい好きだ。

熱すぎず、でもほっとあったまるような、絶妙な温度。

いいにおい。

ちょっとかけられてる茶色い粉が、特にいい匂いがする。

夢中でごくごく、半分くらい飲んでしまったら、ぽうっと、お腹の中に光が灯ったみたいな気がした

あ、かなり減っちゃった。

残り、飲んじゃうの勿体無いな。

「ふふ、心配しなくてもまた作ってあげるよ。ただ、一気にあんまりたくさんは良くないからね。

 まだまだ美味しいものはたくさんあるから、期待してていいよ」

柔らかい笑顔。

「マザー、って言うのもこれからはまずいか。僕の一番知っている彼女の名前はセレナ。

 彼女からきいてるよ、甘いもの好きなんでしょ。ほんとセレナは世話焼きなんだから」

「えっ!?」

マザーが世話焼き。

そんな印象全くなかったから戸惑った。

いつも同じ顔で、同じ声で、機械のように動いていて……

「あー、わかるわかる、言いたいことは。俺も今のあいつ見て驚いたもん。

 さすがに魔法の熟練度がすっごいえげつないな、ってね」

「え? 魔法?」

「気づかなかったでしょ。あれ、魔法だよ。“鉄面皮”ってやつ」

「てつめんぴ」

「てつの、つらの、かわ。表情や声色が変わらないようにする魔法」

えええええええ? なんでそんな魔法を?

って言うか、常に使ってるの?

でも、思い返してみれば、そんな魔法を使っていると言われても納得なのであった

『人間じゃないんじゃない?』と言われるほどの『通常営業』

物凄く、納得してしまう。

「あいつの部屋、みたことないんじゃないか? だれも。俺はあるけどさ」

「ありません……」

確かに誰も、マザーの部屋を見たことがないと言われていた。

緊急事態ですらきがつくともう部屋の外に出ているし

部屋の中に入っている時間もびっくりするほど短いようなのだ

その上、マザーの部屋だけ二重扉になっていて、全く中がみえない。

あのマザーのことだから、ひどくシンプルな部屋なのではないかと思われていたけど…?

「君たちの写真でいっぱいだよ、壁中。通信をしてもいっつも子供たちのはなしばっかり

そのなかでも、特に君の話が多かったよ。ミソノ。才能に溢れた面白い子、だって」

「才能にあふれた……って」苦笑が漏れてしまう。「そんな昔の話なの?」

「え、先週ですけど」

「え」

「はい。先週。いなくなっちゃうのが悲しい寂しい、って。俺のところにだってわかっててもって

めっちゃ泣いてたよ。あのひと、子供が巣立つたびうざいんだけど、君のは格別だったね」

「……水の日ですか?先週の」

「そうだね。目でも腫れてた?」

そうなのだ。

朝、洗眼薬を頼まれて届けたのだ。

言われて、少し目が腫れているような気がしていたのだ。

「あんなに才能にあふれた子の芽が摘まれるなんて、悔しくてたまらない、と大号泣。

あいつ、気持ちが無駄にあっついんだよ、ほんとテンション高いしうるせーし

鉄面皮つかってるとことかほんとにウケるわ。誰だよお前って感じだぜ。

いまは無理だけど、少し落ち着いたら通信してみてもいいぜ」


全く想像がつかない。

誰の話?


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