やりすぎと言う名の指紋
突然に現れた「ラーゼ」らしき人物に、聞きたいことは山ほどあった。
放置されてから今までの時間にあったことには謎が多すぎて
完璧にキャパオーバーになっている
頭の中は完全に
「お前か!?」
だったのだけれど、
すぐに、その問いかけは自らの猜疑心と警戒によってかき消された
いや、この人がマザーの言ってた “ラーゼ” かどうかわからなくない?
……とはいえ、この人はその人だって証拠ってどこにあるわけ?何を聞けばいいの?
そんなふうに色々考えてしまって固まっていたら、その人は立ち去ってしまったのだ
あんまりにも、かんたんに。
なんだっけ、下のキッチン、だっけ。
少し落ち着いてから、って……服でも汚れてるのかな?
あ。
これわたしめっちゃ軽装じゃないか!
今来ているのは、寝かせられたときに着せられていたと思しき
とてもシンプルな一枚布のワンピースだった
これで、キッチンと言うか、部屋の外に出るのはちょっとと言うかかなり恥ずかしい。
って言うかさっき思いっきりこの格好見られてたけど!
ギリギリ透けたりみえてたりはしてないけど、これ多分ワンピースとかのインナーだ
ってうか、わたしを着替えさせたのは誰!? あのひと?
やばくない!?
一応、体を色々触って確認してみたけど、なにもわからず
あの人に聞いてみるしかないのか……でも、この格好じゃなぁ、と思って見回したら、
さっきあの人がいたあたりに綺麗に畳んだ細かいチェック柄のワンピースがたたんでおいてあった
上にはおる物、靴下、楽にはけそうで柔らかそうなブーツ、髪を束ねる物までが用意してあった。
その横には、硬く絞ったふきんとぬるま湯を張った洗面器。
乾いたタオルに、櫛に、髪油。
少しあたためたミルクと、クッキーが2枚。
どう考えても至れり尽くせりすぎる。
細やかすぎる。
やりすぎ感を感じるほどの快適感。
この感じ、知ってるわ……と、ため息が出る。
「……ラーゼかどうかはわからないけど、とりあえず、きっとあの人だわ」
妙な確証を感じてしまったが、それでももしかするともしかするので、
絶対に確認をしなければと、思い直す
そういえばあの龍も「ラーぜ」って呼んでた気がしたけど?
いや、安心するのはまだ絶対に早い。
そう言うふうに簡単に「へえ、そうなんだ」ってやったおかげでどんな目にあったか
忘れるなんて、ありえないんだから。
++++++++++
着替えながらも、なんだか手の上で踊らされているような気がしてモヤモヤした
クッキーを齧り、ミルクを飲んだあとにも、思い通りなんだろうとおもってモヤモヤした
いったい、あの人はなんでそんな、ここまで、あそこまで世話を焼いてくれるのだろう
あとから巨額の請求でも来るのかしら
逃げ出したほうがいいかな、と、また心によぎる。
座って、一息ついて
なんだかちょっと眠くなっちゃったな、下行くってなんか気まずいな、とうだうだしていたら
突然、ビッターーーーーン!! と、ものすごいおとがした。
なんか、窓から赤いものがズルズルボトーっと、落ちていくのがギリギリ見えた。
まど?
赤いもの?
え? 血じゃないよね!?
窓ガラスには何もついていないけど、すんごい音はしたよ!
とりあえずさっきの人にお伝えしないと と
わたしは、何も考えずに
階下のキッチンへと
足を踏み入れてしまったのだ
もう、後戻りできなくなった本当のポイントはこの後の会話の中にあったというのに。
まあ、それを聞いたら戻れないよとか聞いたとしても聞いてただろうし
後から思えば、あんな国心底いらないけどね




