「できた」✖️2
ちっこいまっかなドラゴンちゃんをからかうのはとても楽しかった。
あんまりに可愛らしいので、途中から楽しくなってしまったのだ。
なんかもう、ほんとに涙目になってきてたので、ちょっとやりすぎたとは思っている
いやほんとに、おもってるよ。うん。
うわ、上目遣いでうるうるし始めてる。
罪悪感。
マジでやりすぎたかもしれない。
よし、いってあげよう。
「しゃべれるようになれー」
「それだああああああああああ」と叫んだ龍は、脱力したようにパタンと倒れた
えっ? 復活したんじゃなかったの?
まだなんか残ってる??
さっき倒れていたのと違うのは、めちゃめちゃ大きくお腹が上下していて
鼻から煙がぷすぷすたちのぼっているところだ。
瞬きもしてるし、なんて言うか、生気がある。
さっきのやつはほんとに、人形みたいに固まって落ちてた感じだったもんね。
しばらくそうやって荒い息を立てていた龍の吐息には次第に何か言葉が混じり始めた
小さくて、途切れ途切れでよく聞こえない。
ちょっと近づいてみると、絶え絶えではあるが、同じ言葉をずっと、繰り返していた
「つか……つかれ……つかれた…… つかれ…
いや、疲れたならしゃべらなくてもいいんじゃないだろうか
しゃべらないと死んじゃう生き物なのだろうか。
「なにやってるんだアルディ」
うしろから突然、聞いたことのない男の人の声。
びっくりして振り向くと
明らかに半笑いのその人が、こっちを見ていた
開け放たれたこの部屋の戸口にもたれかかって、にやにやしている。
もしかして今のやりとり、全部見られていたんだろうか……
わたしが意地悪してたのもバレちゃった? この子の飼い主とかだったらどうしよう!?
「おい! ラーぜ!!! どこまで見てたんだ!!!」
アルディと呼ばれた赤い龍は、その青年に食ってかかるように飛びかかっていった。
めちゃめちゃ早い。
「あぶない! やめて!!」
とっさに力一杯叫んでしまった。
だって、あんなに怒って、煙まで吐いて。
飛んでいくときに、ヒュンッと風が横切った気がした。
なんてスピードなんだろう。やめてって言ったって何が起こるわけでもないのに
衝撃音や何かが聞こえるだろうと思って身構えていたのに、
何も、
起こらなかった。
身構えて、ぎゅっとつぶってしまっていた目を、恐る恐る開けたら
ん? あれ?
龍がいなかった。
青年も、そのままニヤニヤしながらたっていて、なにも、ない。
あれ? あれ? とあたりを見回したら
青年の大笑いの声が、室内に響き渡った。
いや、なんでこんな爆笑してるのこの人。
「初めまして、お嬢さん。すごいね君」
笑いすぎて涙目になった青年が、面白くてたまらないとキラキラした目で挨拶してくれた。
すごい? なんのこっちゃ。
「アルディなら、あっち、窓の外まで吹っ飛んでったよ。君の、魔法で」
え?
わたしの魔法???
「どこまで飛んでったかな、あれ。結構行ったんじゃないかな、あーおかしい」
まだ笑いが止まり切らないようだ。
わらってるってことは、きっと龍くんの命には別条はないのだろうと、ちょっとほっとする。
でも、わたしの魔法で、って、
わたしは魔法使えないはずなんだけど、この人は何を勘違いしてるんだろうか
「わたし、あの、能力なしで……」
「でも、アルディが今吹っ飛ばされたのは、確実に君の魔法だよ」
「あなたじゃなくて?」
「君の、“やめて” に込められた魔法で、龍であるアルディは吹っ飛ばされた」
「え?」
「ほんとだよ」
「えぇ???」
わたしの魔法で龍が吹っ飛んだ?
さっきも、アルディはわたしが喋れなくした、っていってた。
わたしの、まほう?
どういうこと?
なんだか頭がぐるぐるして、考えがまとまらない。
わたしの、まほう??
でも、なぜだか “自分がやった” と言われて、変に納得してしまう自分もいる。
やった、ような、きがする。
どうやってできたのか、何をしたのかなんてちっともわからないけれど。
なんか、足から力が抜けてしまいそう
頭の中だけでもなく、体までちょっとグラフラしてきてしまった。
なんなんだ、いったい。
「だいじょうぶかい?」
青年が優しくかたりかけてくれる。
わたしがフラついたのが分かったのだろう。
「ちょっと、おちついてからでいいから詳しく説明してあげるよ。
下のキッチンで待ってるね。階段を降りたらすぐにわかるから。
僕の名は、ラーぜ。君のことは、マザーから聞いてる。」
その名前には聞き覚えがある。
そうか、「ラーゼに会いなさい」だ。
やった。
わたしラーゼに会えたんじゃん。
…ほんとかな?




