身振りは、口ほどに物を言う
さっきまでうるさいくらいに飛び回っていた赤い龍が、突然落ちた。
「えっ? 落ちた?!」
思わず声が出る。
なんかちょっと耳がおかしい気がしてたけど、きっとさっきの音のせいだ。
めっちゃ大きい音だったけど、あの音は、なんだったんだろう。
落ちたドラゴンは、動かない。
結構いい音がしたもんね。
ボトッ、というよりも、ビターンに近いかもしれない。
本当に飛んでいる途中に、いきなりボトっと落ちて動かなくなった、
結構勢いはよかった、けど?
ほんとうにそのままのポーズで、まったく、うごかない。
大丈夫?
死んでない??
竜って貴重なんじゃないの?
強いんじゃないの?
こんな突然に死んでいいものなの?
そおっと近寄る
全く、動きは見えない。
息をしてる感じもない。
え、殺しちゃったの、私?
もうちょっと、近寄ってみる。
やっぱり動きは見えない。
そっと、突いてみる。
小さくて緻密な鱗は、驚くほどにすべすべしていた。
あ、あったかい。
ちょっと安心する
……いや、死にたてだったらまだ冷たくならないよね。
あったかいからって、安心しちゃいけないんだよ。
もういちど、つついてみる。
反応はない。
どうしよう
とりあえずこえをかけてみた。
「だいじょうぶ……? お返事、できる?」
めちゃめちゃ高速なうなづきが還ってきた。
いきなり動いたぞ。
よかった生きてる。
「めちゃめちゃ痛そうだったけど、息できる?」
あ、こんどはめちゃめちゃ高速な、必死な横振りだ。
「息ができないの?? 大丈夫?? ゆっくり息できる?
大きく吸って、吐いて、できる? 楽な体勢になって息して?」
龍は、すごい速さで姿勢を変えると
めちゃめちゃ大きく、息を吸い込んだ。
そして、極めて大きなため息のような息を吐く。
めちゃめちゃ熱い。半分くらい煙になってるように見える。
もう一度息を吸う
吐く
そして吸う。
ものすごい必死に真剣に、息をしている。
落っこちてから息ができなかったのだろうか。
何度も何度も息をする、そのうちに、息から煙が減って温度もヌルくなってきた。
なんか大丈夫そう。
座って
ぜえはあしながら、涙目の龍がこちらを見ている。
めっちゃ泣きそうな顔してる。
ん?
自分の口を指さして
口をパクパクしてる・・・?
手をバツにして……バンザイ?
そして拝む。
何をいってるんだろうこの子は。
まったくわからない。
「え? 口?」
あ、うなづいた。
「口がいたい、おてあげ!」
ブンブンと横に振られるクビ。
違うのか。
「口が……うまく動かない! やったー!」
ブンブン振られる。
「口がうまく動かないのはあってる?」
ん、三角とな。
咄嗟に手で三角作るとか器用だなこの子。
「口がうまく……喋れない!!」
うなづき。やった。正解だ。
じゃあ、最後のバンザイは?
「しゃべれない、やったー?」
横振り。えー、わからないんだけど。
私を指さして、自分の口を指さして、パクパク、そしてバツ。
「……私が君を喋れなく、した?」
猛烈な勢いでのうなづき。
「え、私そんなことできないよ」
高速な横首振り。
いや、よくこの子首もげないな。めっちゃ振るやん。
私を指さして、自分の口をパクパクさせて、バツを作り、
また私を指さしてから、バツを丸にする。
「わたしに、なおせって、いってる?」
猛烈なうなづき
えーっと。
喋れなくなってるのは私がやったんだから、私になおせっていってるってこと?
「わたし魔法使えないよ?」
明確に、「はぁ?!」って顔。
いやこの子別に喋れなくても結構意思疎通できるんじゃない?
あ、すんごい勢いでまたやってる。
わたしが、しゃべれなくしたと。おまえがなおせと、何回も繰り返す。
「いや、わたしがやった気は全くしないんだけど、だから直し方もわからないよ」
あ、この顔は「あぁん?」だ。「そんなわけあるか!」だ。
めっちゃわかりやすい。
またなんかいってる。
自分の口をゆびさして、口の前でわたしに向けた手のひらをグーパーする。
「あなたがしゃべるのを?」
うなづき。
そしてわたしを指さす。
こんどは、自分の方を指さしてから、わたしを指さす。
そして、自分に向けたてのひらを、ぐーぱーした。
「あ、わかった! あなたに、わたしが、いう!」
満足げなうなづき。
よし!!あってた。
なんか楽しくなってきたな。
沈黙
そして、ちょっとイライラしたようにこっちを見上げる龍。
あれ、なんかかわいいな。
あ、地団駄踏んでる。
この子かなり短気だぞ。
んー?なんかおかしかったかな。
さっきと同じ動作を龍が繰り返している。
「よし! これでどうだ! わたしがあなたに、“しゃべれるようになれ” っていう!」
めちゃめちゃ大きな動きで、うん!うん!と、首を縦に振る龍。
もう、こうなるとほとんど、ヘッドバンキングだ。
ライブで大興奮してるみたいにしか見えない。
面白いなぁ、と思って見ていたら、ハッとしたような顔をしてわたしを睨んできた。
いや、そんな険悪な顔したら言ってあげないよ?
うん、なんとなく、自分がそうさせたんじゃないかって気は、してたからね
はいはい、そんなに睨まないでね、ちゃんというから。
かわいいなぁ、もう




