千里の道もというけれど
いくら、馬車が通らないかなーと思って祈ったって、願ったって
そう都合よくすぐ通ってくれるようなものじゃないのは、昨日散々考えてわかってる
ってことは
わたしは、この道を延々と、あるいていかなくてはならない、ってことだ。
いくら謎の誰かさんがとても親切だといっても
私の荷物の中に乗り物を仕込むようなことは不可能だったようで
移動を簡単にしてくれるようなものは残念ながら隠されてはいなかった。
まあ、魔法が使えない私に使えるそんな魔術具、聞いたこともないけどね。
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持って歩かなくてはならない持ち物が少ないといっても
歩かないといけない距離は半端ないわけだから、かんたんにとどく、なんてもんじゃない。
かんがえてみたら、私の人生でこんなにずっと歩いていたことなんてなかった。
鑑定がおわってからは孤児院からはそんなに離れることができなかったし
なんか用事とかおつかいとかあってどうしても遠くに行かないといけないことはあっても
できるだけ知ってるひとに連れて行ってもらうようにしていた
いろんな意味で、危なかったから、どうしようもなかったのだ。
ずっと、外を自由に歩きたいとは思っていた。
街の、城壁の外を見てみたいとも、思っていた。
それが、こんな形であっても叶っているのかな、と思うとちょっと小気味好い。
ここで死んでしまっても本望!とかいう気はさらさらないけど
できれば生き残ってもっともっと色々みたいけど!
でも、だからこそ。
きょうは、っていうか、こんなところには
本当に、誰もいなし、なにもないし、手助けを求めらる可能性もないから
わたしは、わたしのちからだけで
ずっと、ずっと、歩くしかないのだ。
夜が開けて少ししてからあるきはじめて、もうお日様は高く上がりつつあるけれども
景色は全然、代わり映え、しない。
距離を測る道具も、時計も持っていない私にはそれ以上のことを知ることもできない。
気にしないのが一番だ。
きっと、少しでも、近づいているには違いないから。
それに、幸か不幸か
出てきて欲しいわけでは全然ないけど、魔物や野獣なんてものも、いない。
全くいない。
気配すらもない。
平和にピヨちゅんいっている、鳥の声が聞こえてくる、だけ。
はーーーー、のどかだねぇ!!! まったくもう。
こんなうらうらした気持ちのいい天気で、踏み固められた道をとぼとぼ歩いて
ピヨちゅん鳥が鳴いて、木々はさわさわさわさわしてたらさ
ふつうにお散歩してるだけみたいな気分にちょっとなってきちゃうじゃないか
いつ、何に襲われるか分からない、たった一人でこんなところにいるのに
もう、まだ昼前だというのに疲れてきてしまってはいるのだけれど
気分はそんなには悪くないのだ。
ご飯いっぱい食べたからかな。
そういうことに、しておこう。
空は青く、
歩きやすい道で
とりあえず数日はご飯には困らないことが確定していて
多分、今夜も安全には眠れて
……ここ数ヶ月の状況よりはるかにいいじゃんねぇ。
そうおもったら、やっぱり空は青くて、風は優しかったのだ。
トリパニアのことは、ほとんど知らないけど
マザーが行けっていったくらいだから、能力なしでも生きられる国、なんだろう
わたしにも、なにか、できるんだろうか。
やらせてもらえるんだろうか
やることを、ゆるしてもらえるのだろうか
あの街では
どうしたって、「(能力)の(名前)」で呼ばれるみたいだったけど
そうじゃないまちが、あるんだろうか
あの日を境に変わってしまった人の目を、それ以降の人の目を思い出すと、寒気がする
そういえば、あの街では、空を見上げたことはずっとなかったような気がする。
私のような、能力なしは「目を伏せて道の端っこを申し訳なさそうにあるくべき」なんだと、
そういうことを怒鳴りながら、砂を蹴り付けてくる人や、キャベツの芯なんかを投げつけてくれる人が
いま、ここにはいないのだから
人目がないってこんなに自由なんだねー!!
そんな場合じゃないのなんて、分かりきってるはずなのに、やっぱり楽しくなってきてしまう。
楽しくなっては、思い出し気分悪いになって引き戻されて
でも、今はそうじゃないのだと思い直して
そして、また、楽しくなって
一人きりで歩くのって、そんな頭のグルグルとの戦いなのかも知れない
長い道を歩くときは、歌を歌えば近いと教えてくれたのは、ママだったか、マザーだったか
そんなことすらも、さだかではないけれど
はーーーーーー、さきはとおいなぁーーーーーー=!!!
もう、休憩しちゃおうか。
休憩の時も、結界球は起動するべきなんだろうか。
こんな時のセオリーなんて、何にも知らないって、思い知る。
結界球無駄遣いしたくないしなぁ……
ぐるぐるぐるぐる。
こんなふうに早く、朝と昼がすんで仕舞えばいいのに
気づかないうちに移動が済んで、目を開けたら街だった!!
みたいになればいいのに!!




