突然に降って沸いた夢の産物
まさかまさかの、ほんとうにあったマジックバックを、検分してみる。
見慣れない、ペッタンこのポシェットのようなものがあると思って、手を入れてみたら
そのなかから、でっかい缶がいくつも出てきたのだ。
どう考えたって、魔法のカバン。
マジックバッグ。
バッグ自体は、大きなお財布二つ分くらいのおおきさで、ぺったんこ。
ガッリリ分厚い布でできてはいるけれど、服の中に隠せてしまいそうなほどの薄さだ
私の顔よりちょっと小さいくらい。
大きめのフラップをボタンで閉じる形になっているんだけど、
手を入れたら、そんなところから、私の頭よりちょっと小さいくらいの缶がわんさか出てきたのだ。
全部出すのは諦めた。
それくらい、たくさん入っている。
なのに、重さは全くない。
……出たよ高級品。
重力無視とかのすんごい魔法が仕込まれてて、亜空間収納とかいうこれまたすっごい魔法がかかってるんだこれ。
亜空間収納鞄自体はそこそこ稼いでる人なら気軽に使ってるし、重量無視も高くはなるけど、見たことはある
すんごいタッカイやつになると、時間停止とかついてるとかも聞くけど、お貴族様の持ってるやつとかのはず…
よし、調べるのは今はやめておこう。
とりあえず、すぐ使いそうなもの以外は旅行鞄に全てぶち込んで、このマジックバッグの中に入れてしまおう。
大切なものたちを捨てずにすみそうだという事実が胸にようやく染み込んできて、涙が出そうだ。
私をここにみちびいた? 置いてった人、至れり尽くせりすぎるわ
バッグは難なく鞄を飲み込んでくれた。
そして、さっき見つけたこの缶。
よくみると、でっかく「朝・軽」「昼・ランチ」「夜・ディナー」って書いてある。
あ、「茶・茶菓子」缶まである。
かいてあるってよりも、外側にびっしり立体的に彫られている模様の一部が、そう読めるのだ。
まいったな。これは間違いようがない。
私が昔読んだ本に書いてあったよ。
大魔法使いが果ての小島で見つけて持って帰ってから大人気になったと言われている
「フルコース缶」とよばれている果実にちがいない。
木になる木の実、果実なのだけれども、優美なブリキ缶のようなもので皮ができていて
その中にはフルコースのめちゃめちゃ美味しいお食事がセットされているという謎果実だ。
冷たいものは冷たく、暖かいものは暖かく保存されているという、なんとも不思議な奇跡の果実。
…なんでこんなにあるの?
全部出したわけではないけど、それぞれ、すくなくとも5個以上は入っていたようだ。
もしかして、食べていいのかも知れない・
サンドイッチも入ってたし、これも、きっとそういうこと、だよね?
あとでお金請求されたり、体で払え!って言われたり、しないよね?
色々と、不安も疑問もあったけれど
憧れの缶詰を目の前にして
私の理性はそんなに長くは働いていられなかった。
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散々悩んだけど、開けたのは朝食缶。
中身は、外からは全く分からない
引き上げるように、円筒形の缶の蓋を開けると、ふわりと、バターとベーコンの香り。
わお。マジで湯気ほっかほかじゃん。
開けてすぐにでてきたのは、色とりどりのフルーツが数種。
しろいものと蜂蜜のようなものがかかって、きちんと冷えている。
脇にちょっとした取っ手のようなものが上に向かってが伸びている
これを外せということなのだろう。
外してみると、その下の段にはスクランブルエッグに、ベーコン? それに豆?
肉と卵両方の上に豆もとか贅沢にも程がある。
さらにまた、取っ手。
蓋のついたカップに入ったスープと、白くてふわふわのパン。
パンは、スライスしてバターまで塗ってある。
あ、ジャムの小瓶。
芸が細かい。
スープは何かの野菜のすりおろしのようなものだった。
ぜんぶ、あったかくて、冷たくて
そして、きれいで、いろいろあって
貴族様のお食事ってきっとこんなふうなんだろうね。
確かに、読んだ本にも、お貴族様や王様のお弁当として、とか書いてあったもんね
……金額請求されたりしたら私一生奴隷になっちゃうんじゃないかな
いや、それは、ないと、信じよう……信じていいのか?
不安と心配で、せっかくのご飯もあまり進まなかった、
なんていう細い神経はもちあわせていなかった
信じられないくらい美味しい素敵なものをお腹いっぱい食べた私は
超越ご機嫌ルンルン状態で、結界石を解いたのであった。
マジックバッグのおかげで身は軽く、持ち運んでいるのは日用品用の小さなカバンと、
杖代わりの傘だけだ。
旅装は、いざという時のために長距離歩けるように考えていたから大丈夫。
歩ける。
いく先は、あの深い森を左に、この道に沿って
行ける限り、進んでいく。
それしかない。
願わくば
私がへたばるよりも前に馬車が通りがかってくれますように。
平和な馬車で、お願いします!!!




