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カエルには、吸盤があるのだ。  作者: 半崎いお
飛び出た場合の
13/31

提案というかたちをした、なにか

想像もつかないような方法で私の部屋に侵入してきたハウスマザーが

緊張を隠せないそぶりで、告げてきたのは、思いもよらない選択肢。

私は本日3回目の「心臓が止まるかと思った」を、味わう羽目に、なったのだった。



その、少し掠れた声は

「この国にいても辛いようなら、トリパニアになら、おくってあげることができるわ」と

あの国なら、能力がなくてもできる仕事もあるかもしれないし、能力がなかったことを隠して生きられるかもしれないから、と。

私に、告げたのだった。



結界まで張って、張ってあるっていってたのに、周囲を確認するようにしてから

全く考慮に入れていなかった選択肢を提示してくれた、のであった。




そうだった。

ママが言ってたよ

「ここだったら、最悪お前が能無しでもなんとかして暮らしていけるように考えてくれるって噂があるからね」って

ママの読みが当たっちゃったね。

それ以外のところでは、大外れだったけどさ。




「もし、行く気があるなら、この石を首にかけなさい。そうではないなら、この部屋の机の中に残しておいて」

そういってマザーは、透き通るような、しかし深い青い色の石を私に手渡した。

無骨な革紐で縛り上げるかのようにぐるぐる巻にしてあるから、せっかくの綺麗な石なのにあんまり見えないくらい

「これは私からの餞別がわりのお守り、と言うことにしておきなさい。この建物から出たら服の中に隠しておくこと」

マザーは、私の手を握りながら、目を覗き込みながら、そう告げてくれた。

なんか、変だ。

こんなに、普通に喋るマザーは見たことがなかった。

私に触る手が、暖かい。

いつもあんなに、氷のように冷たかったのに。




「色々聞きたいこともあると思うわ。でも、知っていることであなたが危険に晒されてしまうかもしれないの」

マザーって、いくつだっけ。

いつもよりもひどく、若く見える気がする。

ものすごい違和感を感じて、呆然とマザーを見てしまう

トリパニア……この提案に乗ってしまっていいものなのだろうか

この石は一体なんなんだろうか

そしてなぜ、マザーがトリパニアに行きたい? なんて言い出すんだろう

確かに疑問はたくさん浮かんできている。

でも、そのどれもがなぜか、言葉という形を結ぼうとしてくれなかった。

私はひたすら、驚いたままで、いたのだ。



「この魔法もそろそろ限界。トリパニアに行けば、全てがわかるだろうし、あなたはちゃんと生きていけるはずです

だから、危険ではあるのだけれど、私としてはここを出て、違うところに行って欲しいとおもっているの。

今は話せないことが多すぎるのだけれど、もし行こうと決めたなら手筈はこちらで全て整えることができます。

約束通り、院長室まで来てくださいね。そして、どちらにせよ話を合わせてください。

この話が漏れると、私の身にも、あなたにも、孤児院にも危険が及んでしまいます。

話を合わせて、指示に従ってくださいね。そのことだけは、よく考えてね。」





「は、はい」



どもった返事を返してしまった。

いつも、はいって言いなさいって怒られていたのに。


「はいっていいなさい」

「はい」

あ、やっぱり言われた



微笑みあう。

私、マザーが大好きだったよ。

そっと、マザーが私の頬に触れる。

何かを堪えるように細められたその目が、あんまりにも優しくて、悲しくなった

マザー、大好きだよ。

「あなたが、あなたらしく幸せになれることを心から祈っているわ。

 いつかまた、私が私としてあなたに会えることも、心から祈っているわ。

 トリパニアにいく馬車に乗って、ラーゼに会いなさい。

 そうすれば、開くことができるはずだから」

マザーの目からも、一粒、涙が落ちた。

泣けるんだ、この人。

っていうか、マザー、私あなたと、もっとこう言うふうに話がしたかったよ、ずっとずっと。



「行きたくない、と言うならそれもいいと思う

 それなら、その時のための方策を授けることも、できるわ。

 でも、それも、出国することも、両方、知られてはいけないこと、なの

 守れるかしら。守れないなら、私はあなたを殺さないといけなくなるかもしれない」


なんか物騒なこと言い始めた。

この厳重さだもん。ヤバさ半端ない。



とりあえず、限界まででっかく何度もうなづいておいた。

殺されるんだったら自分で死ぬよりは楽なのかもしれないけど

でも、私まだ諦める気にはなってないんだよ。



「ああ、本当に時間ね。私はあなたの選択を尊重します。

 何も伝えられないも同然だから、不安だし怖いと思う、だから残る、と言うならそれもありよ

 でも、私の案に乗るのであればトリパニアにいく馬車に乗って、ラーゼに会いなさい」



うなづくことしかできないけれど

「ラーぜ」その名前だけはきっちり覚えておかなけれなばならないのは理解した。



「では、またあとでね」

いつもよりもくっしゃくしゃの笑顔で、

マザーはまた、雲になって煙になって、霧になって消えていった





あれ、どうやってやってるんだろう

どんなきぶんになるんだろうな



一生、私にはできっこないけどね。





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