カフェ
お洒落なカフェ。客は女性ばかりでとても賑わっている。博美と無限が入ってくる。
店員 いらっしゃいませ〜 ワ!
客 ちょっ、ちょっと見て〜や。
客 うっわ〜 めっちゃイケメン。
客 ほんまや〜
客 なにあれ? ちょっと信じられへん。
(二人は店員に案内されて席に座る)
無限 グワッ痛、、 いきなり何すんねん!
博美 そこにスネがあるからや。
無限 なんやねんほんま、、 「人間の食事が食べたい、イケてる店探せ」って言うから探したんやぞ。
博美 ハ? 口の聞き方。
無限 はい? あ〜あ、これは悪かったですね、 お姉さまとお呼びしなければなりませんか? おねえさ、グワッ痛
博美 そんな兄弟おるか!
無限 どんなけ理不尽やねん。
博美 古くから神は理不尽やと決まっ
無限 またそれかよ。 その言葉にどんな説得力があると思ってんねん。 ほら、せっかく来たんやし、そんな顔せんといてや。 何かあった?
博美 ああ? なんや、、 その、 何キメて来とんねん。
無限 今? 家出る前に言ったらいいやん。 お姉ちゃんと歩くんやから、ちゃんとしようと思ってん。
博美 そ、そうか。
無限 そやで。
博美 で、それが和装なん?
無限 和装は見た目もいいし、ちゃんとした印象あるやろ? だから選んだんやで。
博美 そ、 そう。
無限 そうや。 あ、メニューいただけますか? フッ 本当はオレがキメまくって羨望の眼差しを受けるために決まってるやろうが。 こっちに来てからの狼藉にキレとんねん。 せいぜいプライド潰れたらイイわ。 しかも想定通り自意識過剰やし、ちょっと持ち上げたらコロっと影響されやがる。 ハッハー ちょろい女やが
博美 オイ!
無限 え?
博美 心の声がダダ漏れなんじゃ!
無限 スネェ〜痛
(店員がメニューを持ってくる)
店員 あ、あの、 メニューです。
博美 ありがとう。
店員 だ、大丈夫ですか?
無限 大丈夫ですよ。 ありがとう。
店員 あ、あ ヤバ いえ、 き、決まりましたらお呼び下さい。
(店員が下がる)
無限 フッ
博美 おまえ、また、、
無限 ちょっとちょっと、冗談ですよ。 少しぐらい楽しませて〜や。
博美 少しかよ! ってそこやないわ。
無限 嫉妬しすぎやで。
博美 うっさい。
無限 はぁ、 さあ、何食べる? 美味しいって評判の店探したんやで。
博美 そ、そうやな。
無限 ん? まだ何か?
博美 ちゃ、ちゃうわ。 に、人間の食事って初めてやし、、
無限 ああ〜 確かに。 オレもそうやけど、 で、緊張してんの? お子さま〜
博美 アホなこと言いな。
無限 今までありとあらゆる食事はしてきたやん。
博美 あんたの作る黄泉料理やけどな。
無限 うわぁ〜 言い方よ。 やけども味なんて一緒やで。 変な期待したら、「思てたんとちゃう〜」ってなるで。
博美 しょ、 初体験やぞ。
無限 な、なんでその言葉をチョイスしたんや、、
博美 あんたは変なところで冷めとんな、 あかんでそれじゃあ、 常識なんてものはあてにならんからな。
無限 神の言葉とは思えんな〜
博美 アホか、 真那に魅せられた奴が何言うとんねん!
無限 は! た、確かに、、
博美 その納得ムカつく〜
無限 意外にも真理を突くね。
博美 「なるほど」、みたいな表情で言うのやめてくれるか。 それより注文何にし
無限 オレはコーヒーとサンドウィッチにするで。
博美 どこで被せてきてんねん、 もっと悩めよ。 しかもゴリゴリ洋モノやんけ。
無限 別にいいやん。 なに? 和食が良かったん?
博美 そ、そうやないけど、 なんかご飯感が欲しいやん。
無限 自分で頼めばいいやん。 まぁ、和食もイイね。 オレらの若さやったら早いかもやけど。
博美 どんな高級な店をイメージしてんねん?
無限 ほんまや、 しもた〜 高級な所なんかお姉ちゃんに行けるわけないわな〜 ハハハ〜 グハッ
博美 イメージするとこそこやないやろ。
無限 痛えな、、 ほら、早く決めてーや。
博美 女に対する対応よ。
無限 ん? メリットないしね。
博美 まぁ、 確かに。 って、なんで納得せなあかんねん。
無限 知らんがな。 ええかげんにして〜や。 ほら?
博美 わ、 分かった。 ほな、 い、 一緒で。
無限 プッ
博美 死なすぞ!
無限 おもろいね〜 あ、 店員さ〜ん!
(店員が猛ダッシュで入ってくる)
店員 ハイィ〜!
無限 ど、 どえらい勢いやな。
店員 し、し、し、仕事が早いスタッフの福矢です。
無限 え? 名乗る仕組みなん? あ、あの、注文なんですが、、
福矢 あ、あ、あなた様がご注文?
無限 はい? え、 ええ、注文ですけど、どうしました?
福矢 い、いや、 えっとその、 だって、 アイドルはトイレ行かないって言うじゃない、 ですか?
無限 「ですか?」と言われても、 なんですか? それに、チョイスした話題も飲食店ではどうかと思いますよ。
福矢 も、も、も、申し訳ありませ〜ん。
無限 か、 顔が近いです。
福矢 すす、すいません。 じ、実はあまりにイケメンなお客さんなので、スタッフ全員で、誰が注文を取るかでバトルがありまして。
無限 そ、そんな内情を話してくるんですね。
福矢 そうなんですよ〜 いやこれがですね、なかなかのファイトクラブでして。
無限 今度は語り口調?
福矢 ええ、 ええ〜 やってやりましたとも。 一人は精神汚染、 一人はヴァルハラ行き、 一人は今ごろ就活中です。
無限 うっわ〜 何これ? どうして自信満々に、しかも滑らかに話せてんのやろ??
福矢 もちろん私は仕事が早いですから勝ち組ですけどね! ん? あ、すいません、ちょっと呼ばれまして。
(福矢が下がる)
無限 フッ
博美 なんでこっち見るんや。 この
無限 あ、すいませ〜ん。
博美 話聞けや!
(別の店員が来る)
店員 あ、はい。
無限 注文を。
店員 どうぞ。
無限 ホットコーヒーとサンドウィッチを2つずつ。
店員 かしこまりました。 あ、水を入れますね。
無限 ありがとう。
(福矢が叫びながら戻ってくる)
福矢 ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと〜 注文は私が!
無限 ごめんね、 注文してしまいました。
福矢 う、 うそぉ、、、
無限 な、なんちゅう絶望感、、 ちょっとぶっ飛び過ぎですよ、あなた。 好意は感謝します。 気をつけて頑張ってね。
(福矢ともう一人の店員が話しながら下がっていく)
福矢 ちょっと、あんた就活。 工務店行くんちゃうの〜
無限 おもろかったね。
博美 あんただけな。
無限 ま、 「イケメン!」 ですから。
博美 ちっ、 クソが!
無限 言葉言葉。 デートっぽくって楽しいでしょ?
博美 どこがやねん! 私は食事に来ただけやし。
無限 またまた〜 自覚がないカマチョは痛いね〜 ん? あれ? 気にしてるん?
博美 そ、 そんなにかまってちゃんか?
無限 う、 そんな顔で返されると。 す、すいません、 ちょっと調子に乗りました。
博美 弟!
無限 あっ。
博美 別にいいんやけど、、 自分の感情がよく分からへんわ。
無限 しゃあないんちゃう? 今は人間なんやし。
博美 楽しんでんの?
無限 もちろん、 最初は面倒やと思ってたけど、今はなかなか。 お姉ちゃんもやろ?
博美 どうなんかな? 言葉では言えんわ。
無限 オレたちにはあんま意味ない話題やね。 いやぁ、 真那さんも居ればな〜
博美 えらい気に入ってるな。
無限 あら、冷静な反応。 ええ、 あの子はとっても良いよ。
博美 まあ、そやけど。
無限 周りにも良い影響を与えてる。
博美 カリスマってやつ?
無限 言葉で当てはめたらそうなんやろうけど、不要じゃない? 単に心がしっかりしてるだけやで。
博美 それも分かりにくいな〜
無限 はは、 そもそも人の心なんて分からんやろうし、無理に分かろうとせんでもいいんちゃう。
博美 でも、 なんか分かりたいって思うやん?
無限 まあね、 なんでなんやろ? 「理解した」って思えることが安心につながるからかもね。
博美 なるほどね〜
無限 お姉ちゃんに偉そうなこと言ったかな?
博美 ん? 言ったん?
無限 別に。
博美 ふ〜ん。 ま、そやな、 あの子とも一緒に遊びたいな。
無限 た、た、頼んます〜
博美 ムカつく急変〜
(福矢が食事を運んでくる)
福矢 先程は大変失礼しました。 ご注文のコーヒーとサンドウィッチです。
無限 お、 ありがとう。
福矢 何かありましたらお申し付け下さい。
(福矢が下がる)
博美 う〜ん?? さっきとは別人やな。
無限 はは、 やらかしてしまうことは誰でもあるやろうし、 反省して良くなってるならそれでいいでしょう。
博美 そやな。 にしても、、
無限 ええ、 何故か唾がめっちゃ出る。
博美 なあ、 この反応は例え生理的なものでもダサくない?
無限 今は人間やで。
博美 あんたの割り切りってすごいな。
無限 そんなことよりも考えてることがあるんよ。 黄泉の食事でも同じものを作ってたのに、、
博美 あ! 確かに。
無限 味だって想像できるのに、、
博美 いや、 もうええよ。 早く食べようや。
(周りの客がドン引きするぐらい、無表情で黙々と食べる二人)
博美 なんでなん? なあ、 なんでなん? 聞いてる?
無限 はい? なんか言いました?
博美 なんでなん? って聞いてんねん。
無限 何がですか?
博美 何って、食事のことや。
無限 食事がなんですか?
博美 味に決まってるやろ!
無限 味がなんですか?
博美 わざとか?
無限 あのですね〜 主語が抜けてるんですよ。 そして聞きたいことは「なぜ美味しいのか?」、でしょ? どうしてはっきり言わないんですか? だいたい、美味しいかどうかも個々の主観なわけで、今の流れではっきり分かるわけないでしょうが。 「どうしてこんなにおいしいのか? 無限様のご意見をお聞かせ下さい」 そう言えばいいん グハァ〜痛
博美 ちゃんと言おうとしてること分かってるやないか! それに話し方。
無限 あ! というかこの流れ何?
博美 こっちが聞きたいわ。 そうや、 なんでこんなに美味しいの?
無限 分からんわそんなこと。 そやな、確かに美味いわ。知ってる味やのに全然違うと思った。
博美 あんた、 いつもどんな作り方してんの?
無限 え? なんなん、 オレの料理にケチつけんの? ずっと作ってきたのに、、
博美 あ、 それは、 ごめん。 いや、 やっぱなんでか分からんやん?
無限 そうやね。 黄泉のもので作ってたから?
博美 それだけ? 味は知ってるやつやねん。 確かに、違いってのは地球の食材で人が作って、というだけやけど、、
無限 それが理由なんかな〜 よし、聞いてみるか。 すいませ〜ん。
(福矢が来る)
福矢 はい、どうされましたか?
無限 あの、 とても美味しいですね。
福矢 あ、 ありがとうございます。そう言っていただけるのはすごく嬉しいです。
無限 なんと言うか、 教えていただけるなら、何か特別な作り方があるんですか?
福矢 特別、ですか? どうでしょうか、 特別と言われると答えが難しいですが、料理に使用する素材は新鮮で良いものを選んでいます。 あと、調理スタッフは美味しいものを届けたい一心で頑張っています。
無限 熟練者がたくさん居るんですか?
福矢 全員腕はありますが、熟練者などとは諸先輩方に対して申し訳ない言葉です。 ただ、各々、より良い料理を作るために一生懸命です。 私どもも、諸先輩方に追いつける店にしたいと毎日精進しています。
無限 そうですか。 とても美味しかったので、何か秘密があるのかなと考えてしまいました。
福矢 いえいえ、本当にありがとうございます。 ここまでお尋ねいただけるのはとても嬉しいです。 スタッフの励みになります。 私個人の話で恐縮ですが、5年前にここで友人と食事をした時に、とても料理が美味しく、良い時間を過ごせたので働くことを希望しました。 ご満足いただけたのでしたら、それは料理人のやる気によるところかと思います。 全員、自分の料理にプライドを持って取り組んでいますし、私も自信を持ってそうだと言えます。
無限 なるほど、 美味しさの秘訣は作る人の気持ちもあるんですね。
福矢 それが大切だとスタッフ全員信じております。
無限 そうですか、 どうもありがとう。
(福矢が下がる)
博美 気持ちね〜
無限 どうなんやろか? 冷めた見方をすればそんなはずないと思う。
博美 やけども美味しかった。
無限 そやね、 良くしたいという気持ちがあれば改善していくやろうし。
博美 私らには分からんのかもしれんね。 それに「気持ち」なんて言われたら、あんたが作ってくれる料理は、「そういうことか」になるしな。 フフフッ
無限 言うよね〜
博美 ま、いろいろ聞けたし良かったやん。 「今日の食事は美味しくて楽しかった、次も楽しみやね」になったわけやし。
無限 そやな、 納得したいと思うなんて、オレも変なこと気にしたな。
博美 いいんちゃう? やけども、これからは地球の食材使って料理してや〜
無限 そのつもりですよ。 と言うか、ちょっとは自分で作ろうとしてくれへん?
博美 あ!
無限 「あ!」じゃねぇ〜よ。
博美 ごめんね〜 私はあんたの料理、結構LOVEやで!
無限 この流れでよく言えたな。 ま、せいぜい美味しいのん作りますわ。