表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三千喜劇  作者: 笑千代
3/23

不動産屋

 入社1カ月の女性営業マンが、やる気満々で営業トークの練習をしている。


店員 先輩たちはお客さんと物件を見に行ってる。 よ〜し、これはチャンスや。 今までしっかり先輩の営業を見てきたし何度も練習してきた。 営業の本だってたくさん読んだんやから。 うん、初契約したるで〜 よお客さん来て〜


 (街中まちなかでの会話)


博美 次は住むとこやで〜 私がエエとこ決めたるわ〜

無限 なんで家だけは普通に契約しようとするんですか? 人としての身分を得るためにいろいろチートなことしたけど、今回もそれでいいですやん?

博美 アホなこと言いな、そんなことばっかりしてたらなんもおもろないやん。

無限 にしてもよりによって家探しで、、、 人間にとってもそこそこレアなイベントなんですよ?

博美 私の実力なら何でもできるわ〜

無限 それはチート能力を使ったらね。 あぁ、不安やわ。


 (博美と無限が不動産屋に入店)


店員 あ! いらっしゃいませ〜。 ささ、どうぞこちらにお座りください。 はい、ではこれが当店で最もラグジュアリーなお部屋でして、家賃はなんと月100万! こちらの契約書にサイン、、、 あ、いつ入居されますか?

無限 エッ? いきなり何言ってるんやろこの人。

博美 おい〜 動揺するなよ〜

無限 いやするでしょ? どこいじってるんや!  いやあのね、そんないきなり契約書出して、しかも家賃100万ってちょっとおかしくないですか?

店員 ですよね! いやぁ分かりました。 特別ですよ特別。 お二人のためだけに「と、く、べ、つ」な物件をお出しするんですからね、これは他言しないでくださいよ。 当店の隠し物件で家賃2万円。 さ、こちらに拇印ぼいんを。

無限 いや、だからね、

店員 ・・・エッ? 決めないんですか? こんなに詳しく説明して特別な物件を出したのに。

無限 どこが詳しくやねん。 決めません。

店員 ・・・ウソですよね? 家賃100万から2万ですよ? 「ドア・イン・ザ・フェイス」をしたんですよ? 知らないんですか?

無限 過大な要求を先に出しておいて本来の目的を達成する営業テクニック。

店員 え? 知ってるじゃないですか! 自分がおかしな反応していると思いませんか?

無限 思いませんね! というよりさっきから何なんですかあなた? いきなりこの対応も失礼ですし、営業テクニックどうたらなんて言う必要ないでしょ?   いやいや、そこじゃないな、、 とにかくいい加減にしてもらえます?

店員 えっ、、、あっ、、、 す、すいません。

無限 いえ、まぁ大丈夫ですよ。

店員 すいません、私まだ新人で。 こんなこと言うとお叱りになられるかもしれませんが、早く初契約して先輩たちに伝えたくて、、、

無限 大変ですね。

博美 ふ〜ん、人を動かす力ってすごいね〜   気にせんでいいよ。 ところでさ、私たち部屋を探してるの。

店員 存じています、ここ不動産屋なんで。

無限 プッ   痛ぁ

博美 こここそ注意しいや!

店員 あああ、また、、すいません。

博美 いいよ、それより部屋紹介してくれる?

店員 はい。 ところで、失礼ですがお二人はカップルさんですか?

無限 違います、断じて。

博美 なんで即座に否定した上にかぶせるねん。

店員 あ、違うんですね。     お部屋はやっぱりゴージャスな感じがいいですか?

博美    いや、別に、、、

無限 と言うより賃貸物件で「ゴージャス」なんて表現するものなんですか?

店員 えっと、では貧相な感じで?

無限 言葉の使い方よ。

店員 それじゃあ普通な感じで?

無限 あ、ちょっとストップで。 そもそも「普通」っていう言葉は分かりにくいんやけど、今の流れだとヤバみしか感じないんで。

店員 言うよね〜

無限 ハ?

博美 あんた遊ばれてんちゃう?

無限 だとしたらある意味辻褄が合うな、、、  って、いやそんなことはええねん。 ちゃんと紹介してください。

店員 すいません。 そうですね、やっぱり駅から近いほうがいいですか?

博美 そんなことないよ。

店員 あ、あとコンビニとかスーパーが近いのも便利ですよね!

博美 そうなんかな? あんたどう?

無限 別にそこまでは。

店員 そうだ! 市役所が近いと最高ですね!

博美 一番どうでもいいかな、、

店員 ではこの物件で良いですよね? ね、ね?   えっ、何なんですか?   こんなに「Yes」を重ねてきたのに。

無限 「No」しか重ねてないわ。 あなたね、そろそろ営業テクの世界から抜けてもらえません? しかも毎回内情口に出してるし。

店員 す、す、す、す、、、すいませんでした〜

無限 いや、もう、そんな泣かんでも。 ちゃんと聞きますから。

博美 カスハラやめろや〜

無限 えっ、なんなん?

博美     私がスベってるみたいやないか!

無限 まさしくそうやし。 なんでこのタイミングでそれを出したんや、、、 ほらほら、この人放っといて話進め痛ぁ、、、              なんで何も言わへんねん?

店員 ああ、すいません。 そうだ、お二人はカップルでないならどういった?

博美 兄弟よ。 おぉ! ここで伏線回収した!

無限 よくこの流れで伏線回収って思えたな。

店員 そうだったんですね! あ、私、嬉田井うれたいと申しますが、失礼ですがお名前をお聞きしていいですか?

博美 博美よ、草薙博美。 こっちは弟の無限。

嬉田井 それでは草薙さん、

博美 名前で呼んでくれていいよ。

嬉田井 あ、 ありがとうございます。   お二人、なんかすごいですね?

博美 何が?

嬉田井 いや、その、、、めっちゃ美男美女で、、

博美 美女! フッ。

無限 恥ずい反応してますよ痛ぁ

博美 無限、弟、無限。

無限 あ! お姉ちゃんニヤつくな痛ぁ

嬉田井 仲良いんですね。

博美 まあね、で、どんな部屋があるの? できれば上の階がいいんやけど。

嬉田井 上の階ですか? 高いところが?

博美 それは考えてないけど、上の方ね。 で、やっぱまだ若いからお安めでね。

嬉田井 他に希望はありますか? 無限さんと二人で暮らすんですよね?

博美 そうそう。 まぁ、外の景色が素敵やといいかな。

嬉田井 おお、なるほど。 それならここはどうですか? 値段もそこそこで、 へへへ、かな〜りムーディですよ!

無限 ちょっとちょっと、なんか変な表情やな。 そもそもムーディなんてりませんよ。

博美 今紹介してくれてるんやからちょっと待ち。

嬉田井 博美さん、ありがとうございます。 ええ、ここはですね〜 夜景がイカしてるんですよ〜 赤、いやピンク、、、外を見れば欲望の街ってね。

無限 待て待て、それはつまり、、、

嬉田井 あ、横がラブホ街です。

無限 どこを紹介してんねん!

嬉田井 まさに「イカして」ますよね!

無限 下ネタやないか! 何をドヤ顔で言ってんねん。

博美 別にいいやん。 値段も悪ないし、住むところはラブホやないねんから。

嬉田井 ですよね、博美さん!

無限 オレが嫌やわ。 と言うか、なんでいきなりそんなパンチ効いた物件なん?

嬉田井 え? いや、私にはしっくりきたというか、、、美男美女の兄弟ですよ?

無限     それが何か?

嬉田井 禁忌きんきが許されるじゃないですか! 聞いてください、私、兄弟がエチエチな関係になる漫画が好きなんです。

無限     だから何?

嬉田井 ちなみにBLは趣味じゃないんですよね〜

無限 知らんがな。 また違う世界行ってますよ!

嬉田井 ああ〜 しまったー

博美 まあまあ、別にいいやん。

無限 おいおいマジかよ、 き出しやん、 顔に出まくりやん、 美女とか言われて気持ちよくなってるやん、 もっと威厳持てよ。

嬉田井 すいません、、 私、、  感覚がおかしいのかな、、

博美 ハハハ、気にしなや〜 自分に疑問が持てるなら大丈夫やで。 良くなりたいと思う限り良くなっていくよ。 まあ、私はこの部屋でもいいんやけど、無限がムラムラしてお姉さまに乗っかりたくなるって危惧きぐしてるみたいやから、もう少し低刺激なとこあるかな?

無限 言葉のチョイスもおかしいし、自信満々に言うのもどうかと思うぞ。          痛ぁ  なぜ間を置いた?

嬉田井 あの、やっぱり仲良いですね。

無限 そう見えます?

嬉田井 ええ、きっとそうです!

博美 フフ、 それじゃあもう一度、いいところ教えてよ!

嬉田井 はい、ちょっと駅から離れますが、ここはとっても良いと思います。 お二人の部屋も広々と取れますし、ここにキッチンテーブルを置けばお二人なら楽しく過ごせますよ! それとスーパーは近くなくてもって言われましたが、やっぱり近いほうが便利です。 ここは歩いて5分の場所にスーパーがあるんで、適度に離れてるから外がうるさくなることもないですし、住んでるうちに絶対良かったって感じてもらえますよ!

博美 ふ〜ん、 どう?

無限 なんでオレがお姉ちゃんの答えを代弁しなアカンねん。 いい物件やで。

嬉田井     あ、あの、博美さんはどうですか?

無限 大丈夫、気に入ってるよ。

嬉田井 分かるんですか?

無限 長い付き合いやからね。

嬉田井 あの、それとここは角部屋かどべやなんで、うるさくしていいってわけじゃないですけど、他よりは気楽にできると思います。 お二人なら明るい感じになりそうなんで、こういう部屋の方が絶対いいと思いますよ。          あの、ぜひとも決めて頂ければ、、

博美 あなたの初めてのお客さんやね。 まあ、でも、ちょっと気が早いんちゃう?

嬉田井 あ、、、

博美 部屋見に行きたいな。

無限 そうやね。

嬉田井 あ、それじゃあ、もうちょっとで先輩が帰ってくるんで、今からでもどうですか?

博美 OK いいよ。

嬉田井 ありがとうございます。 あ、そうだお茶。

博美 めっちゃ斬新なタイミングやん。

嬉田井 すいません、すぐに。

博美 いいよ、なんか話そうよ。

無限 あらあら、楽しそうにしてるやん。 いや〜 それにしてもなかなかパンチの効いた時間やったな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ