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三千喜劇  作者: 笑千代
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降臨

 台風に見舞われ、猛烈な雨と風のある夏の日。場所は明石海峡大橋の主塔。そこに一羽の鳥が淡路島の方向から凄まじいスピードで飛来して降り立った。どうやらカラスのようだが不思議なことが二つ。一つは足が3本、そしてもう一つは、カラスの周りだけ雨が避けるように落ちていく。しばらくすると、カラスがモクモクと黒雲に変化し頭頂全体に広がった。そして雲が晴れると、そこには黒のローブをまとったイザナミが立っている。


イザナミ はぁ〜 すごいな〜 こんなん造れるんや〜。 私には想像すらできんかったな〜

無限 物事は積み重ねですからね。 イザナミ様が日本を生み出した時にこんなものは必要なかったでしょ?

イザナミ まぁ、そうかもしれんけど。 ん〜  でも、こんなん造れるとも思えんわ。

無限 そうですね、これは人間だから造れたんですよ。

イザナミ    人間と神の違い?

無限 そうそう、人には人の悩みが、神には神の悩みがってやつですよ。 でもまぁ、これから人の世界で生活するんですし、いろいろと実感するんじゃないですか?

イザナミ む、 ほんまやなぁ〜 ここに来ただけでビックリしてるし。 ところで、こんな強風やのにここはあんまり影響ないな?

無限 風が入らない仕組みになってますからね。 主塔の外に手を出すと分かりますよ。

イザナミ どれどれ、、、 おお〜 すごいな〜 風が「オラ〜」って上がってくるやん。   ん   フフフ。

無限 え? なんか嫌な予感が、、、 ドワワワワワー

イザナミ ハッハッハ〜 エエ反応するやん〜


 (イザナミの手元から黒い小さなものが出ると、一瞬で上空に吹き飛んだ。叫び声が聞こえなくなると、イザナミと同じローブを着た美男子が現れる)


イザナミ はじめまして〜 ム・ゲ・ン! いや〜ん、イイ男やん。

無限 あなたの趣味でしょ。 そんなことよりも、、なんちゅうことするんですか?

イザナミ 人間の凄さを実感してもらうために、あなたをドラゴンフライにしてあげたの♡

無限 どこで可愛く言ってんねん。 ほんまエエ迷惑ですわ。 しかもよりによってハグロトンボ(神様トンボ)にするなんて。 神としてよくチョイスできましたね?

イザナミ 斬新やろ?

無限 人間界に来て1日も経ってないのに斬新なんてありますかいな。 なんでも新しいでしょう、、、 いや、そこじゃないわ。

イザナミ なに独り相撲してんの?    プッ

無限 腹立つ〜 僕はね、神様トンボと呼ばれてるもので遊ぶなんて、「気分的にどうなん?」って聞いてるんです。

イザナミ どう? 人間になった気分は?

無限 スルーかよ! 最悪ですね。

イザナミ そうなん?

無限 この状況で「最高の気分です」なんて答えが出ますか?

イザナミ あんた一人称「僕」って言ってるやん。

無限 えええっ、、ヤバい人ですやん、、 また話変わってるし。 それを言うならイザナミ様も僕のこと「あんた」って言ってますよ。

イザナミ ハハハ〜 そこじゃねえだろ。

無限 痛っ エ?

イザナミ 「僕」についてコメントしろよ〜

無限 ウソでしょ??  はぁ、、、 そうですね、自然に出てきました。

イザナミ ボキャブラリーよ。

無限 一体、一人称ごときで他に何が出ると?

イザナミ ハハハ、楽しいね〜  ところでさ、ここからは淡路島が見えます。

無限 あなたがつくった島、最初の場所ですね。

イザナミ うんうん。 そして今、私たちが立っているところは人間が造ったすんごい構造物。

無限 はい。

イザナミ    で?

無限 「で?」って。

イザナミ    う〜ん。

無限 見切り発車ですか? まあまあな素材がそろってますよ。

イザナミ う〜ん、、そうなんよ、、、 なんだ〜  そうそう、二人の記念日やで。

無限 「記念日」って、こんな使い方するものなんですか? まぁでも、、そうですね。 何か二人でしてみたいんですか?

イザナミ そうそう、分かってるぅ!

無限 で、考えていることは?

イザナミ う〜ん、やっぱスペシャルな感じがイイなぁ〜

無限 わざわざ変なハードル立てなくても。 イザナミ様にとっての感動でいいんじゃないですか?

イザナミ う〜ん

無限 アカンわ、聞いてへん。 でもまぁ、嬉しいんかな。

イザナミ    おお!  ねぇ?

無限 はい?

イザナミ 脱いでくれへん?

無限     はい?

イザナミ だから、裸になってよ。

無限          はい?  え?  何言ってるんですか?

イザナミ 考えてみて、ここで裸になる人って居てる?

無限 信じられないことに真剣な表情で言ってやがる。 何もかもがおかしい、、、   もちろん居ないですね。 もっと言ってやりますと今後も絶対にないし、そもそもこんな会話にすらなりませんわ。

イザナミ そこよ!

無限 そのしたり顔すら僕には理解できません。 これがずっと一緒に居た女神なんか? はぁ〜

イザナミ 残念な顔をしている時ではなくてよ! 誰も考えつかないこと、そしてあなたは全てを持つ黄泉なのだから。

無限 なんでこのタイミングで威厳を込めた話し方になるんやろうか?  しかも意味不明な文章。   あぁ、付いていけん。

イザナミ ねぇ聞いて、こんな斬新なことってないで! これこそがスペシャルや。

無限 さっきから「斬新」の使い方よ。 一体裸になって何するんですか?

イザナミ    私が見るんやで。

無限 ヤバ〜

イザナミ ねぇねぇ♡ いいやろ? 減るもんやないし。 ほらほら♡

無限 なんちゅう理不尽や。 嫌です。

イザナミ アホなこと言いな、神なんて元来理不尽なもんやで。 ね、ね♡

無限 誰がそんなことで納得するねん。

イザナミ ね、一生のお願い。 誰も思いつかんこと、そして最初で最後。 これこそオンリーワンやん。 見てみ、あそこには最初の場所、淡路島があるんやで!

無限 「最初」のスケール! こんなことでよく自分の偉業を引き合いに出せますね。

イザナミ ねぇ、ほらほら、こんなに頭下げてるんやから。

無限 下げてへんわ。 こら、    離せ。

イザナミ   おい、   こら  う〜ん、脱げ!

無限 嫌です、このバカ女。    ふぅ、やっと離れた。   なんです?

イザナミ   脱げよぅ。

無限 なに「待てよぅ」みたいに言ってんねん。 あ、 また、    この   しつこい   ちょっと、僕ら何やってるんですか?  こんな場所で、  二人きりで   ええかげんにして    はぁ〜

イザナミ   つまんな〜い。

無限 全く、とんだ一日です。    まぁ、アホみたいですが、インパクトのある記念日にはなったでしょ?

イザナミ 思い通りになってへんからアカンわ。

無限 口をつつしめよ。

イザナミ はぁぁ、、、 お! そうだ、 ちょっとこっちおいで。

無限 ェェ、、今度はなんですか?   ワ!

イザナミ ずっとあなたの中に居たしね、同じことしてみたかってん。

無限   そう、、ですか。  フフ。

イザナミ    何?

無限 いえ別に。   フード下ろしてもいいですか?

イザナミ アホ、セクハラやで。

無限 どの口が言ってるんですか、全く。

イザナミ ええの、今日は顔出さん。 だいたい、私の顔なんて知ってるやろ。

無限 フフフ、そうでもないですよ。

イザナミ    今日はあんたの色んな面を知ったわ。

無限 それはこちらのセリフですね。

イザナミ どう? 楽しくなりそうでしょ? ハハハ、あんたはどえらい姿を見せてくれそうやわ。

無限 何を言ってるんだか。 こっちは大変な目に合いそうですけどね。

イザナミ へぇ〜 まるで自分は何も動じないみたいやん。

無限 そう言ってますからね。

イザナミ 前フリ前フリ。 あんたがズッコケた姿晒すがたさらした時は、思いっきりいじったるわ。

無限 へいへい。

イザナミ さて、そろそろ行こっか。

無限 はい。


 (辺り一面が黒雲におおわれると、そこからカラスが東に向かってロケットのように飛び立つ)


無限 ところで、イザナミ様はなんていう名前にするんですか?

イザナミ ん〜  そうやね。   博美  うん  草薙博美くさなぎひろみにするわ。

無限 いい名前ですね〜 でも、それだと僕の名前が大層たいそうすぎません?

イザナミ そうでもないよ。 あなたという存在をそのまま言葉に当てはめて付けたし。 だからまんまやで。

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