表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
三千喜劇  作者: 笑千代
1/23

序章

 一面黒の空間。その空間に溶け込むように黒のローブが一つ。大きなフードを深く被っているので顔も見えない。誰かと会話している。


女 よし! 人間の世界に行こう。

声 あらあら、どうしたんですか?

女 ん? 何が?

声 いきなりなんで、、

女 行きたくなったからね。

声 黄泉の国に飽きてしまいましたか?

女 「飽きる」なんて感情は私にはないで、そういうのは時間がある人間のものやろ?

声 まあ、そうですが。 いや、なかなかの気まぐれ。 でも、あなたは人間的ですよ。

女 ?  そうなん?

声 ええ。

女 ふ〜ん。 ま、どうでもいいことかな、私はしたいことをするだけ。

声 それでどうするんです? 人間の生活を味わってみたいと?

女 そうそう。

声 ここに居ても何でもることができるし、実際そうしてきたじゃないですか?

女 そうやね。 でも、「百聞は一見に如かず」っていう言葉もあるし、そもそも実際に経験もしてへんし、はっきり言って何も知らんやん。 あなたも反対する気はないでしょ?

声 まあそうですが。 ありきたりなことを言うと、「こんなはずじゃない」と思うこともたくさん出てきますよ。

女 ハハハ、それこそ興味深いやん。 あなたがそう言うなら尚のこと価値ありやで。

声 なるほど。 で、どうするんです? あなたは女神ですよ?

女 分かってるやろ? 人間になって生活するわ。

声 ハハッ、そいつはファンキーですね。 共通点なんて見た目だけですよ、できますか〜? フフッ、人間らしく愛に溺れるとか?

女 それもいいんやない。 やけども言い方に悪意があるで。 いろいろなタイプの人間は居るけど、私の子孫であることに変わりないんやから、まあ、あんまりいじりなや。

声 これは失礼。

女 でもまあ、「愛」っていうのには興味あるな〜 いつの時代にもあるし、何度も同じことを繰り返してる。 およそ人間に共通するものでしょ?

声 私の感覚では、「自己愛」という言葉で表現したいですが。 愛だとあまりに広すぎです。

女 そこは愛にしときいや。 ここで的確な表現は欲しくないで。

声 OKです。 一つ気になることがあります。 少し話を戻しますが、あなたは女神ですよ。 そんな存在が人間の中に混じるというのは、それだけでも普通じゃないですからね。 人間にとってもあなた自身にとっても。

女 そうかもしれんけど、大したことなくない?

声 ま、、 う〜ん。

女 あれ、どないしたん? 珍しく言葉に切れがないやん。 不安なるからやめてーや。

声 いや、そうですね、やっぱいろんな影響が出そうです。

女 あらあら、困った困った。 ま、私が全人類をとりこにするとかかな。

声 それはどうですかね。

女 食い気味に否定すんなや。 フフ、あんたはそれぐらいがいいで。

声 そうですね。 私はあなたにずっと女神、、、 いや、ずっと変わらずに居てほしいという気持ちが、、、   あるようです。

女 他人事かよ。 まあいいわ、あなたも人間らしいところがあるということで。

声 そりゃそうでしょう、ずっと一緒に居るんですから。

女 ん?    ところで、

声 はい?

女 あなたって男なの?

声 それは瑣末さまつなことです。 実際、今まで考えたことなかったでしょ?

女    そうやけど。

声 あなたはイザナミとして、女性としてこの世に現れた。 そしてあなたが求めた相手が男性だった。 だから対話相手としてあなたが求めた形になっただけということです。

イザナミ つまり男ってこと?

声 あなたがそう思うならそうでしょう。 でも、私にはなんの意味もないことですよ。

イザナミ    そう、、、か。 やけど、「求めた」なんて言わんといてくれる。

声 これはこれは、とても人間らしい反応ですね。 ところで、いつかのご主人は人間界に居てるのでは?

イザナミ む、、、 分かってるよ。

声 そして御令息ごれいそくも。

イザナミ 背筋がさむなること言わんといてくれる、考えたくもない。

声 ハハハ、いいですね〜

イザナミ あんまいじらんといて。

声 それでこそ私の好きなイザナミ様ですよ。 そんな女神がこれからは変わってしまいますね。

イザナミ へぇ〜 意外すぎることばっかやわ。 あなたにとって私の行動や変化なんてそれこそ瑣末さまつなことでしょ?

声 いやいや、私はあなたとの毎日をいつも楽しんでいますよ。 そういうのは変えたくないものです。

イザナミ それは、、、 悪い気はしないわ。 ただね、私は女神かもしれないけど、体を持って生まれた時点で、、、 何て言うかちょっと格下?  なんよ。

声 そんなこと考えてたんですね。 でもまあ、あんまりそういうことは言わないで。 それに女神じゃなくてもイザナミ様には変わりないでしょう。

イザナミ    ありがと。  だからさ、どっちかと言うと人間に近いと思ってるし。

声 そんなものですかね?

イザナミ そう、そうやで。 あなたとも違いを感じるし。

声 私は神ではないですよ。

イザナミ 分かってるよ、あなたは黄泉の国。 大体なんでそんなんが私と話ししとるんや〜

声 ハハハ、今更ですか? おっと話がずれましたね。 でも、確かに見ものかもしれませんね、イザナミ様が人間界であたふたするのが。

イザナミ はぁ? 何言ってんの?

声 プライドもガタ崩れですよ。

イザナミ アホなこと言いな、そんなもんは最初からないで。

声 どうですかね? 人間として生活するんですよ? どれだけ抑えても女神としての力があることも知ってる。 アイデンティティがどえらいことになるんとちゃいますか?

イザナミ へぇ〜 そいつは逆におもしろいやん。それやったらあなたも滅茶苦茶になるってことやん。

声 は?

イザナミ 「は?」じゃないで。 あなたも一緒に行くんやから。

声 パートナーなんていくらでも作れるでしょう?

イザナミ へぇ〜 これも意外やわ。 あなたも気付かんことってあるんやね。 私はね、あなたと一緒に行きたいの。

声 えぇ〜

イザナミ お、さすがに物分りがいいやん。 ほな早速行くで。


 (イザナミが消え声だけが響く)


声 あぁ、これは考えてませんでした。

イザナミ ハハハ、お互い考えつかんかったことが起こるだけでも楽しいやん。    ところで、

声 何ですか?

イザナミ    あなたって、名前何なん?

声 必要なら付けてください。

イザナミ そうね、、、 せっかく人間界に行くんやから、彼らの言葉の中から取るかな。   ホムンクルスは?

声 ダッサイですね、雑魚感ざこかん強めやし。 そもそもあれは代名詞でしょ? もっと言えばなんで日本の言葉から取らないねんって感じです。

声 うっさいな〜 何でもええんちゃうの。 う〜ん、そやな、、、よし、あなたは無限むげん、無限や。 ハハハ、そして私の弟やで。

無限 え! これは不安しかない設定なんですけど、、、はぁ〜


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ