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第五話 朗報と訃報

初稽古から2週間が経った。風魔術の後、他の魔術も少しずつ使えるようになり、今では全属性の初級が一つは使えるようになった。

火、水、氷、土の順で習ったが…なんか属性によって、なんて表現すればよくわからないが、魔力の流れ方?が少し違う気がする。

ダメ元で父さんに聞いてみた所、魔術を使う際、自分の魔力は使う魔術の属性に合わせて少し変化するらしい。…知ってた。聞いても大したことはわかんないんだろうなぁとは思ってたが…まぁ問題なく使えてるんだしよしとしよう。

魔術の稽古は結構楽しい。父さんの教え方はわかりやすく…はない。感覚派だからか「ここでドカーンって感じだ!」とか「魔力を込めたらビュン!って感じだ。わかったか?」みたいな感じで、擬音での説明が多い。母さんが「私は教えるの上手くないから父さんに稽古してもらったら?」的なこと言ってたけどこれ以下なんだろうか…?逆に教えてほしくなる。まぁそんな感じでわかりにくいが、楽しい。元々魔術に憧れてたってのもあるんだろうが、段々色んな魔術が使えるようになっていくのは楽しいものだ。前世で勉強楽しい!って言ってる奴らの気持ちは全然わからなかったがこんな気持ちだったのだろう。

兄さんも一緒の庭で稽古しているが、全然喋らない。なんか距離を置かれている気がするが気のせいだろうか…?誕生日の時もなんかそっけなかったし嫌われてるんだろうか…

魔術も剣術も父さんが俺と兄さんを行ったり来たりして教えている。習う内容も違うだろうし仕方ないのだろう。大変そうに見えるが意外と父さんも楽しそうだ。ちなみに剣術の方は未だに全然ダメだ。剣術には剣神が作り出した強い踏み込みで距離を詰め、一瞬で決着をつけることを主とする剣神流、カルミラさんという人が作り出した攻撃を受け流しカウンターに繋げることを主とするカルミラ流、搦め手等を交え、エダンという人が生み出した実戦的に使える戦法を重視するエダン流、の三種類の流派が主流で、それぞれの流派に魔術と同じように初級、中級、上級、神級があり、それぞれの級の中でいくつかの技がある。

前世でも名前が流派になっていることがあったが、それはこっちの世界でも変わらないようだ。剣神は名前じゃないけど…話を戻そう。どんな風にダメかというと、一ヶ月経っても未だに初級の型が使えない。それも全ての流派でだ。それ以前に、この前父さんに頼んで真剣を持たせてもらおうとしたが、重くて持てなかった。まだ四歳だし仕方ないよね…とか思っていたが父さんによると兄さんは三歳で既に剣神流初級ができていたらしい。その後しばらくサボっていたため他の初級の習得は五歳頃だったらしいが…兄さんが早いのか俺が遅いのか…どっちもだろう。まぁ魔術は結構できてるし、剣術はゆっくりやっていこう。



          ※※※※※※※※※※※※※※※※※※


今日はいつもより遅く起きた。いつもは母さんと父さんが起こしてくれるんだが、兄さんに聞いたところ朝から急いでどこかに出かけて行ったそうだ。ということで今日の稽古はお休みだ。なので久しぶりに読書に明け暮れようと思う。誕生日に貰った魔獣事典もあまり読めてなかったしな。

そう思い俺は部屋に篭りしばらく読書に明け暮れた。

この世界には魔獣と魔物がいるらしい。元からいた生物が濁った魔力を過度の浴びて魔獣化したのが魔獣、濁った魔力が集まって生まれるのが魔物らしいが…

うん。わからん。まず濁った魔力ってなんぞや。まぁそれは父さんとかに聞けばわかりそうだからいいとして…魔力が集まって生まれるってなんだよ…なんで魔力で生物が生まれるんだ…わけがわからないよ。…まぁ考えても仕方がない。そういうものなんだ。うん。気にしないことにしよう。

ここは置いといて続きを読むとしよう。


〜数時間後〜

暴狼アサルトウルフ・・・狼が魔獣化した姿。人間等の多種族だけでなく、同族も襲って喰らう。その為群れることはほぼない。土魔術を使ってくるが、その威力もあまり高くなく、先述の通り群れることはほぼない為、多少魔術か剣術を齧っていれば撃退できる。よって危険度は低い。

さっきからアサルトが頭につく奴が多い気がする。しかもそいつらはここまで例外なく自分たちで食い合ってた。魔獣の世界は世知辛いなぁ…なんか使い方違う気がする。にしてもこの世界にも狼とかいるんだな。元の世界のもあまり知らないがこの世界の生態系とか進化の過程とかどうなってるんだろう。まぁいい。次行こう

暴兎アサルトラビット・・・兎が魔獣化した姿。獲物が多い場所では群れているが、獲物が足りないと喰らいあう。単体の戦と…

「ユリィ!エル!喜べ!」

下からドアが勢いよく開けられた音と父さんの少し興奮したような声が聞こえる。

何か手に入れてきたんだろうか。まぁ今は読書だ。続きを読もう。もええと…単体の戦闘力は…

「お前達に弟か妹ができるぞ!」

俺は詳しい話を聞くために魔獣辞典を置いて下に降りて行った。



        ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


どうやら父さんと母さんは医者のところに行っていたらしい。

母さんは一ヶ月くらい前から吐き気や倦怠感…いわゆる…えっと…なんだっけ…あっそうだ。つわりだ。いわゆるつわりの症状が出始めていたらしく、覚えのある感覚だったため、それを今朝父さんに言って、医者に行った結果、妊娠していると考えて間違いないと言われたらしい。

…いつの間に子供ができる行為をしていたんだろうか。全然気づかなかった。まぁそれはいいとしよう。

俺と兄さんは喜んだ。兄さんのこんな嬉しそうな顔初めて見たかもしれない。

その後色々と話した。部屋はどうしよう。服はお下がりでいいだろうか。そんな話がしばらく続いた。

「ユリィとエルは男の子と女の子どっちがいい?」

そう聞かれ、俺が前世で好きだったアニメの妹キャラを思い浮かべながら妹がいい理由について少々興奮しながら熱弁したら兄さんが少し引いていた。なんかこの感覚どこかで…ああ…あれだ。ニ年生が始まってすぐの頃、クラス替えがあったから前のクラスみたいにボッチにならないようにしようと誰かと話そうとしたら、好きなアニメの話してる人達がいたから混ざって推しについて語った時の感じだ。それからしばらくロリコンって言われてたっけ…言われなくなったのは学校行かなくなったからだけど。…まぁそんな話はやめよう。

父さんは結構同じ風に思っていたようで、「おお!エルもそう思うか!そうだよな!!」とか言っていた。この父さんにもあのキャラを見せてあげたいものである。

「よし!エルも妹にかっこいい姿見せたいだろう?じゃあ少し早いが明日から中級魔術を教えようと思う!」

おお!ついに中級か!ついにって程練習始めてから時間経ってないけど嬉しいことは嬉しい。

「よし…中級もマスターして妹にお兄ちゃんのかっこいいところを見せつけてやらねば…」

「そうだ!その意気だぞ!じゃあ明日から外で練習だからな!早く起きるぞ!」

妹に「お兄ちゃんすごーい!」とか言われるのが楽しみ…え?

「そ、外でやるの…?」

「当たり前だろう。」

「今までみたいに庭でやるわけにはいかないの…?」

「中級をやるにはちょっと狭いからな。」

「けど…兄さんは庭で…」

「兄さんも庭で中級は使ってねえよ。最近は初級の混合魔術とかをやってたからな。」

「…」

「おい?どうした?」

何故か足が震えていた。

「…やっぱりまだ中級はいいです。初級も一種類だけじゃなく何種類か覚えてからの方いいだろうし…混合魔術もやってみたいから…」

「おう?まぁ妹が産まれるまでには時間もあるしな、ゆっくりやるか。すまんな急かしちまって」

「大丈夫…」

何故か安心してしまった。…俺はいつまで外を怖がっているんだろう。この世界にはもう俺をいじめてた奴らはいないのに…俺って臆病だな…せっかく生まれ変わったのに、前世でいじめられてたこととか、トラックに轢かれて死んだこととか…未だに引きずって…外を怖がって…

外に行こうなんてこれまで言われなかったから、俺はずっと目を背けていた。

生まれ変わって五年も経つのに、まだ変われていない現状から、ずっと目を背けていた。

本当に…俺って駄目なやつだな…

そんなことを思いながら階段を登っていく俺を、兄がじっと見つめていた。





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