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第四話 初めての魔術

稽古初日、俺は一階で父さんと向かい合っていた。隣には兄さんもいる。

「昨日ついにエルに魔力が発生した!ということで今日からエルも稽古に参加する!」

「ちょっと待ってよ父さん」

「稽古中は先生と呼べ」

「ちょっと待ってください先生」

兄さんが口を挟む。

「俺の稽古が始まったのは俺が魔術に目覚めてから二ヶ月くらい経った頃…なのにルシエルは目覚めて次の日には稽古開始だなんて…おかしくないですか?」

「エルは既に魔術教本をかなり読んでいて基礎知識は大体あるからな。お前は魔力が発生するまで教本を読んで無かったし…何より稽古なんてめんどくさいって嫌がってたじゃねえか。」

「…そうですね」

兄が悔しそうに表情を曇らせる。

大丈夫だ兄さん。普通四歳児までに教本読む奴はいない。俺が特殊なだけだ。

…あれ?そういえば…

「あの、父さん」

「先生と呼べ」

…めんどくさい。話が進まないから乗るけど

「先生って剣士じゃないんですか。」

「ああ、俺は魔剣士って奴だ。剣も魔法も使える。かっこいいだろう?」

魔剣士…剣術教本に書いてたな。どっちも使えるなら剣士と魔術士の上位互換っぽいが実はそういうわけでもないし、両方習得するのは大変だから数は少ない的なことが書いてあった。

「まぁそういうこった。じゃあとりあえず庭に出ようぜ。とりあえず基本の攻撃魔術を教えてやる。ユリィも復習だからって手を抜くなよ?」

「…庭でやるんですか?」


「たりめぇだろう。家の中で攻撃魔術なんか使えねえだろう。…まぁ料理に火使ったりはするんだったか…?とりあえず庭に出るぞ」

庭なら大丈夫だろう…けどなぁ…

とか考えてぐずっていると

「…早くこい」

兄さんに睨みながら言われたので覚悟を決めて庭に出た。

「さてとまず基本的なことを聞くとしよう。ユリィまず攻撃魔術の属性を全て言ってみろ」

「火、水、土、氷、風の四属性です。」

「その通りだ。で、エル、魔術は初級、中級、上級、神級で分けられてるのは知ってるよな?」

「もちろんです。」

「よし、じゃあ今から風の初級魔術の一つ、「風刃ウィンドカッター」を使ってみるとしよう。風属性の魔術の強みは何かわかるか?エル」

「相手に魔術が見えにくいことですよね。あと魔術の速度が他の魔術に比べて速いとか」

「そうだ。見えにくいとは言ってもちゃんと見てれば見える。速度は速いが威力もあまり高くない。

さてと、じゃあどんな使い方をすればいいか、ユリィわかるな?」

「他の魔術で注意を引いてるうちに被弾させ隙を作ったりができます」

「そうだな。その他にも不意打ちとして有効だ。じゃあ風魔術のいいところがわかったところで、練習に移ろう。まず俺が見本を見せてやる。」

そう言って父さんが庭の木の方に手を向ける。

その体制のまま少しすると父さんの足元の草が少し揺れ始めた。そして…

風刃ウィンドカッター

父さんが呟いた直後、ビュンと一瞬音が聞こえ…父さんの手の方向にあった枝が大量の葉と同時に地面に落ちた。

こ、これが魔法…!こいつはすげえや。

「どうだった?」

「す、すごかったです!」

「じゃ、実際にやってみるとしようぜ。」

「…あの」

「ん?何だ?」

「教本には使いたい属性をイメージして魔力を一点に集中させ技名を言うとしか書いてなかったんですが…もっと詳しいやり方ないんですか?」

「イメージ…?が何だかは知らんがそれ以上の説明なんてねえよ。風を想像して手に魔力を集中させてドカーンだよ。わかったな?」

…やっぱり詠唱作った方いいんじゃないか?

「…わかりませんがわかりました。とりあえずやってみますね」

「的は…よし」

父さんが「石弾ストーンキャノン」と呟くの大きめのひし形の石が出てきた。

石弾ストーンキャノンは石弾を作り出し、それを飛ばして攻撃する土の初級魔術の一つと書いていたが飛ばさないこともできるんだな。

教本で見た時から思ってたが土魔術って便利そうだ。使いこなせるようになれば大きさとか形とか強度とか調整できるらしいし、時間が経つと形が崩れるって欠点はあるが便利なことに変わりはない。

「じゃあこれに手を向けてやってみてくれ」

いつの間にか作り出した土の椅子みたいな形のものにさっきのひし形の石を乗せている。

俺はそれに左手を向ける。風をイメージして魔力を一点に集めるんだったか。頭の中で、前世のニュースで見た台風、さっき見た父さんの魔術を思い浮かべる。そして手に意識を集中させて…すると体中を何かが駆け巡っているような不思議な感覚に襲われた。その何かが、全身から突き出した左手に集まってくる。そして俺は…

風刃ウィンドカッター

技名を呟いた。その直後、手の平に風を感じた。俺の手のすぐ前に風が渦巻いている。だが、その風は少しすると飛んで行かずに散らばってしまった。

「魔力を集めたら速さとか色々考えて最後に飛んでけ!って念じるんだ!気合い入れろ!」

父さんから的確なのか根性論なのかよくわからないアドバイスが飛んでくる。

もう一度石に左手を向ける。さっきの感覚を思い出して…さっきの感じを覚えることが教本に書いてたコツを覚えるってことなんじゃなかろうか。さっきと同じように何かが体を駆け巡る感覚に襲われる。そして呟く

風刃ウィンドカッター

速めで!小さくていいんで!速めに飛んでってください!お願いします!何でもしますから!

などと若干変なテンションで心の中で父さんに言われた通りしていたら…

一瞬ビュンと音がなり、次の瞬間小さな音と共にひし形の石にヒビが入った。

「や、やりましたよ!先生!」

気持ちが昂って思わず声が裏返る。

現代日本で魔術使っていじめっ子に復讐してる妄想をしていた俺が本当に魔術を使う日が来るとは…

なんか感慨深いな…いや深くはないが

「おお、流石俺の息子だ!」

父さんが嬉しそうに近づいてきて背中を叩きながら言う。

「一日で使えるようになるなんてすごいな!よーし、じゃあ今日の魔術はこれくらいにして剣術に行こうぜ!」

「もう魔術終わりですか…?」

もうちょっと撃ってみたいんだが…

「まぁ明日他の属性の初級も教えてやるから我慢しろよ。」

まぁ魔術を集めるだけなら魔術は発動しないし、部屋の中でもそれの練習はできる。

仮に発動しても俺の威力ならまださほど問題はないだろうし。初めての魔術をもうちょっと堪能したいとこだが言うことを聞いておこう。

「わかりました。」

「よーしじゃあお前の木剣を持ってきてやろう。おーい!ユリィ!剣術に移るから準備しろ!」

その言葉でそれまで黙って俺の初魔術稽古の様子を見ていた兄さんがもそもそと動き出す。

その時の兄さんの表情は見えなかった。


数分後、父さんが自分用と俺用の木剣を持ってきて、稽古を始めた。兄さんは最初から木剣を持ってきてたようだ。準備がいいね。…いやこの場合はやるのがわかっているのに持ってこない父さんと俺の準備が悪いのか。

ちなみに剣術の方はダメダメだった。…まだ四歳だしね。仕方ないね。




       ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


初稽古の日の夜

俺は今日の魔力の感覚を忘れないために魔力を集める練習をしていた。 

やはり魔術はいいな。俺も精神的には年頃の男の子だし使った時の高揚感がすごかった

そういえば異世界転生といえばよくチート能力で無双!みたいなのが多いけど俺にはそういうのないのだろうか…。まぁそんなあるかないかわからんものに縋らず地道に練習していこう…そんなことを思いつつ、明日の他属性の魔術に期待を寄せながら、俺は眠りについた。



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