第一話 そこは不思議の異世界でした
どうやら俺は赤ん坊に生まれ変わったらしい。
前世の記憶を持つ少年が自分を殺した男を…みたいな話を聞いた時はどうせ作り話だろうと鼻で笑っていたが…実際に転生したとなるとあの話は本当だったのかもしれない。
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一ヶ月の月日が流れた。
あの男女が俺の両親らしい
見た感じ両方二十代前半らへんだろうか。
あと俺が生まれた時はいなかったがこの家には俺以外にもう一人子供がいた。
その子供は兄らしい。兄じゃなかったらなんなんだと言うところだが。
見た感じ七〜八歳くらいだ。親と同じく茶髪に短髪で、目つきが悪い。
まだ小さいし、俺が生まれた時は深夜は深夜だった。寝ていたのだろう。
なんとなくはわかっていたがここは日本ではないらしい。
言語も違うし両親の顔立ちもヨーロッパ系だ。
家電用品とかも見当たらないし家具も大体木製…先進国では無さそうだ。
電気代わりにランプを使ったり水道も見当たらない。
もしかしたらこの家は電気代や水道代が払えない程貧乏という可能性もある。
電気代も払えない程貧乏な家に生まれたとすると…先が思いやられるなぁ…
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さらに半年の月日が流れた。
半年も会話を聞いていればここの言語もなんとなくわかってきた。
英語の成績はかなり悪かったが簡単に習得できた。
やはりまだ子供だから物覚えがいいのだろうか。にしてもかなり早い気がする。
この体の頭がいいのだろうか。
俺の名前はルシエルというらしい。父と母はエルと略して読んでくるが、兄はフルネームで呼んでくれるので覚えられた。
兄がユリウス、父がライル、母がフォレスというらしい。
家名はないようだ。平民は苗字がない世界なんだろう。
母さんと父さんはよく来て可愛がってくれる。兄さんは時々来て声をかけてくれた。
…前世の家族も俺が生まれた時はこんな感じだったのだろうか。
兄は最後まで面倒見てくれていたが、両親は最後の方飯は出してくれたが、顔も合わせなかったし、言葉すら交わさなかった。俺が話そうとしなかったってのもあるが、多分見捨てられてたんだろうな。辺な奴だったが兄は俺と違って優秀だったし、いくら言っても出てこない息子なんか見捨ててもう一人の息子に期待する方がいいもんな。
当然の事だと思うし、俺もあまり気にしていないから、とりあえずこの話は置いておこう。
ハイハイもできるようになった。
自分の力で移動できるって素晴らしいね。
移動できるようになったことでで色々なことがわかってきた。
まずこの家はニ階建てのようだ。二階には四つの部屋がある
一つ目は俺が寝させられている部屋だ。
狭いとも言えないし広いとも言えない絶妙な広さの部屋だ。
部屋の奥に窓があり、そのすぐ側にベッドが置いてある。
ベッドのすぐ側の壁には赤色の水晶がかかっている。それ以外は特に何もない。
あの水晶はなんなのだろうか。
部屋を出ると正面、斜め前、隣に扉がある。
斜め前が両親の寝室、隣が兄の部屋だ。
正面の部屋は何の部屋かわからない。
ドアを自分で開けれるようになったら言ってみるとするか。
家の周辺は田舎だ。
窓から見えるのはのどかな田園風景だ。家も一面の畑の中に3〜4件見える程度だ。
ドがつくほどの田舎だ。電線とかも見当たらない。
電気が通っていなかったのは家が貧乏だからじゃなかったらしい。
それにしても…毎日文明の利器に触れていた俺には少しきついかもしれない。
そんなことを思っていた日の昼頃のことだった。
いつもは母さんか父さんがニ階から下ろしてくれるのだが、今日は中々来てくれなかったため自分で降りてみることにした。猫とか犬だって四足歩行で階段降りれるしいけるだろう。
…そう思っていた時期が、私にもありました。
4足歩行で階段降りるのは思ってたよりきつい。世のペット達はすごいな。
これを毎日のようにやっているのだから。…と思っていたとき
俺は手を滑らせて階段を転げ落ちた。…階段で手を滑らせるって違和感すごいな。
幸い結構降りてきていたので怪我はしてない。痛いけど。
足音が聞こえてきた。めっちゃ急いでるな。
「エル!?大丈夫!?」
そういいながら走ってきた母が俺を抱き上げた。
「怪我はない?」
怪我はないけど痛いです。
「よかった…怪我はなさそうね…けど念のため痛いのが飛んでくおまじないしてあげる。」
そう言って母が俺の頭に手を乗せると…
「ヒーリング」
これがこの国の痛い痛い飛んでけなのだろうか。違う意味で痛くなりそうだ…と思っていた次の瞬間
俺を温かい緑の光が包み込んだ。そしてさっきまで感じていた痛みが一瞬で消え去った。
…え?何?何が起きたんだ?
「…よし、これで大丈夫ね。どう?これでもお母さん昔はそこそこ有名な冒険者だったのよ」
と母さんが自慢げにいってくる。
俺は混乱した。
「生まれた時から全然泣かなくて心配だったけど…こんなにやんちゃなら大丈夫そうね」
母さんが何か言っているが俺の頭には入ってこない
魔法、冒険者、そんな言葉が俺の頭に渦巻いている。
…そういえば父さんも兄さんも今家の中にいないな
そう思い、すぐ近くの窓から庭を見た。そこには…
「痛くなくなったからって急に動いちゃダメよ…あら?お父さん達が気になるの?
今お父さん達は剣の稽古してるのよ。お父さんもそこそこ有名な剣士だったのよ。
かっこいいでしょう?」
母の言う通り庭には木剣を持って稽古っぽいことをしている父さん達の姿があった。
…庭で剣振ってるところ見てもかっこいいとは思わないが。
魔法があり、剣士がいて、冒険者もいる。
まさかここは…いや、もう断定していいだろう。
ここは地球ではない異世界。
剣と魔法の世界だ。
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異世界か…外は前の世界以上に危険がいっぱいだろう。魔獣とか。
…俺はこの世界に来てもまだ引きこもりだ。といってもまだ半年ちょっとしか経ってないが。
前の世界でさえ怖がっていたのに…さらに危険なこの世界の外に出れるのだろうか。
…俺の引きこもり生活に終わりが来る日はいつになるのだろう。